26.09.08
年金の保険料、中高生の半数超が「払いたくない」不公平感の背景

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。
神庭さんが注目した話題はこちら
「年金の保険料、中高生の半数超が『払いたくない』 不公平感の背景」
吉田:明治大学 専門職大学院の大山典宏研究室とNPO法人「Social Change Agency」の調査で、6割近い中高生が「年金のために負担するお金を払いたくない」と回答しました。今朝は、若者の社会保障不信への背景や求められる対策について、神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:神庭さん、まず詳しい調査結果を教えてください。
神庭さん:大山教授の研究室とSocial Change Agencyが実施した『中高生の社会保障に関する意識調査』で、全国の中1から高3までの504人が、昨年末から今年の初めにかけてネットで回答しました。それによると、全体の56.5%が「将来は年金をもらえないかもしれないので、年金のために負担するお金を払いたくない」と答えました。さらに62.9%が、社会保障について「若い人と高齢の人との間で不公平がある」と回答しています。
ユージ:結構、不信感が根強いんですね。
神庭さん:ネットのニュースとか、もしかしたら、お父さん、お母さんの言葉に影響を受けているのかもしれません。一方で、社会保障について学校で習ったことがある層とない層で、受け止めに違いも出ました。20歳になったら公的年金に加入することについて「納得できる」と回答した割合は、社会保障の学習経験がある人は73.6%、学習していない人が57.5%で、学んだ人の方が約16ポイント高かったです。調査は、学習者ほど社会保障に対する否定的なイメージが弱いとしており、社会保障教育のなかで「自分自身の生活とどのように関係しているのか」を理解できる内容を扱うことの重要性を指摘しています。また、「給付と負担や世代間の公平性について一方向に説明するのではなく、異なる立場や考え方を知り、自ら考える機会を設けることも求められる」とまとめられているんですね。
吉田:社会保障というものについて、改めてまとめていただけますか。
神庭さん:病気・老後・失業・貧困など、生活上の様々なリスクを社会全体で支え合う仕組みのことです。日本であれば、公的医療保険や年金、失業保険、生活保護、子育て支援などのセーフティネットがあります。「社会保障」と聞くと、なんとなく難しいイメージを抱く人も多いかもしれませんが、誰しも何かしらの社会保障のお世話になっているし、将来お世話になる可能性があります。
吉田:まずは知ることが大切ということですね。
神庭さん:その通りなのですが、少し補足もあります。社会保障について知らないゆえの誤解があって、勉強したことでその誤解がとけるパターンももちろんありますが、勉強したうえで「やっぱり不公平じゃん、おかしいよ!」となる可能性もあります。たとえば、先ほどの調査でも「若い人と高齢の人との間で不公平がある」と答えた中高生が6割を超えていましたが、これ自体は事実です。難しい制度について知らなくても、本能的に肌で感じている。子どもの感覚というのは侮れないな、と思います。
ユージ:実際に若者と高齢者の世代間格差はどの程度あるのでしょうか?
神庭さん:大きな格差があります。『孫は祖父より1億円損をする』の著者で、関東学院大教授の島澤諭さんは、個人が生まれてから死ぬまでに「国へ支払うお金」と「国から受け取るお金やサービス」の世代ごとの違いをWedge ONLINEの記事で試算しています。それによれば、2023年時点で90歳の世代は、国から受け取る受益が負担を2,400万円以上、上回っています。75歳でも371万円多い。ところがその下の世代となると負担の方が受益よりも多くなってしまいます。60歳で1,000万円超の負担超過。50歳で800万円超、40歳で2,100万円超、30歳で3,600万円弱、20歳で4,800万円超、負担が受益を上回っています。冒頭で紹介した調査で対象になった15歳であれば、5,600万円超の負担超過です。90歳と比べたら実に8,000万円の違いがあることになります。
吉田:それはちょっと差がありすぎますね。
神庭さん:そうですね。2023年段階でまだ生まれていない将来世代は1億5,000万円弱の負担超過ですから、とんでもない負担を背負って生まれてくることになります。島澤さんは「日本の財政・社会保障制度においては、負担が勤労期に集中し、引退期に受益が集中する構造となっている」と指摘しています。
ユージ:僕らも含めてかもしれませんが、下の世代には不公平感が強いと思いますけれど、どうしたらいいのでしょうか?
神庭さん:厚生労働省は年金を社会全体で高齢者らを支える助け合いの制度というふうに説明していますが、現役世代からは助け合いではなく奪い合いに見えてしまっているということがあるのかなと。それが社会保障不信の根っこにあるのではという気がします。そのうえで、誰でもいつかは年をとりますし、社会保障のお世話になるという視点も忘れてはいけません。世代間の分断を過度に煽るのではなく、将来世代にツケを残さないための冷静な議論が必要になってくると思います。例えばですけれども、公的医療保険の全世代3割負担は進めつつも、保険の根幹である高額療養費制度はしっかり守っていく。また、平均寿命の伸びに合わせて年金の受給開始年齢を遅らせて、その分、社会保険料を現役世代のうちに抑えるとか、やるべきことはまだまだたくさんあると思いますので、タブーなく世代を超えて、罵り合うんじゃなくて、持続可能な社会保障を維持して良くしていくためにどうしたらいいかっていうことを、冷静に話し合えるといいんじゃないかなという気がします。