それなりに健康や美容に気を遣っていても、失われてしまうものがある・・・。今日のコードは「透明感」です。
■今週のChordは“透明感”
散りてなお / 手嶌 葵
やはり素晴らしい声ですよね。倍音の響きが透き通った風のようで。
お送りしているのは、私が楽曲提供した、映画『みをつくし料理帖』の主題歌、手嶌葵さんで「散りてなお」。
そんな1曲でスタートした『Yuming Chord』。
残暑は続いても、朝晩は、ほんの少しだけ秋の気配・・・夏休みシーズンを終えたこの時期は、猛暑・酷暑疲れの自分にふと、気付きます。
それなりに健康や美容に気を遣っていても、失われてしまうものがある・・・と、いうわけで、今日のコードは「透明感」です。
「美白」や「ホワイトニング」はもちろん、今は「ブライトニング」の時代だといわれています。
肌本来の明るさやトーンを整えて、くすみや濁りのない「透明感」のある肌が、究極の理想。
そして!お肌だけでなく、たたずまいに「透明感」がある人も、憧れの的になりますよね。
実は、「透明感」というコードになったいきさつがありまして・・・。
今年の夏、人生初!となる入院と、盲腸をとる手術を体験してきた私です。ちなみに、全身麻酔というものも初めて受けました。そんなことも経て、一度何かをかいくぐった感はあるんですよね。
で、手術は無事成功して、少しのお休み期間を経て、ツアー第三期もスタートしているわけですが、復帰した後にこの番組スタッフに会って、「初入院・初手術を体験して、心境の変化はありました?」と、聞かれたことから、私の手術を担当してくれた先生を思い出して、その話になったんです。
その先生は、外科医なんですけれど、バリバリの現役医師で。私、医者と名の付く知人や友人は何人かいるんですけれど、思えば執刀医として、現役で手術を年に何度もこなす人に会うのは初めてだったんですよね。
術後にお会いしたときに、この先生に命を預けたんだ、という気持ちもあるのか、なんだかこの人、神々しい・・・!と思っちゃって。
私の基準からいくと、それが「透明感」なんですよ。
「先生、カッコイイです!」って、ご本人に言ったら照れてらっしゃいましたけど。そのたたずまいを表現するのにふさわしい言葉・・・「透明感」だったんですね。
命と向き合って「道」を究める人は、「透明感」をまとっている、ということでしょうか。
そのほか、アスリートや職人さんなども、「透明感」がありそうですね。
大昔に行っていたスポーツクラブで、ロッカールームに入ったときに、バーン!と、“良い感じの壁”というのかな、圧みたいなものが来て、あ、誰か来てる、と思ったんですよ。そうしたら、キングカズさんが見えていて。数十メートル離れているところでも・・・感じる私もすごいかなと。そのバイブスを察知する私もなかなか勘が鋭いぞ、と思ったんですけれど。
キングカズさんの話を出したあとで何なんですけれど、やっぱり、アスリート、特にオリンピアンとかは、現役の方の透明感はすごいですよ。
具体的なお名前を出して何ですけれど・・・ヤワラちゃん。現役のときに、何かの授賞式みたいなところでご一緒した際に、綺麗だなと思いました。
アスリートのそういうものは、動物の持っている野生の透明感に近いのかな。原始の世界に戻るとみんな透明だったのかもしれないですよね。だんだん社会の枠組みとかいろいろなものをまとうようになって、透明感がなくなっていくんだけれど、一部の、命に向き合ったり、人としての能力の限界に向き合ったり・・・そこで集中する瞳が透明、という気がします。
では、ここで1曲お送りしたいんですけれど、原曲もものすごく透明で、このカバーされているものを聴いたら改めてすごい曲だなと思いました。
Sailing / Rumer
映像としては、透明な夕景が広がっている感じがします。聴いていらっしゃる方のイメージを限定したらいけないけれど、私には、そんな透明な夕景のなかにたったひとつの帆がゆっくりすべっていくような感じがするんです。
バート・バカラックやエルトン・ジョンなどから大変な支持を受けるイギリスのシンガーソングライター、ルーマー。
こちらは、クリストファー・クロスの名曲をカバーした1曲です。ルーマーで「Sailing」でした。
今日のコードは「透明感」。
わかりやすいところで「透明感のある俳優」さんといえば誰・・・?と考えて思いついたんですけれど、たまたま近く生でお会いして、妻夫木聡さんは、やっぱり透明な人だな、と思いました。そこが彼の特徴。
そしてね、ジムで時々お会いする深津絵里さん。透明な人だなぁ。時々ジムで話しかけてくださったりして、ご挨拶いただいたりして。
そしてご縁なんですけれど、昨年、お話をいただき、今年、書評を書かせていただいたんですが、吉田修一さん。「国宝」で有名ですけれど、ライブにも来てくださって。何だか透明感のある作家さんだな、と。イケメンで。
一度観たことはあったんですが、「悪人」という映画。吉田修一さん原作で、妻夫木聡さんと深津絵里さんが主演。それをもう一度観てみたくなって。三者、生で会っているから。いや~、透明感のある映画だったわぁ。特に、深津絵里さんが灯台の方から、朝焼けかな、それを見てとても感極まった表情をされるのが・・・深津さんの顔を見ているだけで、自分もその風景を一緒に見ているかのような・・・脳に伝わってきました。
だから役者さんって、すごくゾーンに入っているときは透明になるんですね。そして、原作で言いたかったこと、監督が表現したかったことを通すフィルターのようなものになるのが最高の演技なのかもしれないですね。
それから、映画もそうですけれど、「透明感」のあるものにふれることで、心が洗われることもありますよね。
私、なぜ印象派がとりわけ好きかと思ったら、やっぱり印象派って透明感があるからでしょうね。
それまでの、屋内で描いていた絵の世界から・・・そしてアカデミズムに縛られていた題材から解き放たれて、戸外で描ける絵具も発明され、みんな外に出て光を描くようになった。それが表れていますね。
フランスがすごいのは、その印象派の時期に、音楽も印象派。ラヴェルやドビュッシー、サティとか。家で、印象派の好きな画集を観ながら音楽をかけているときがあるんですよ。そうすると、ドビュッシーとか、すごく頭のなかで透明な像を結ぶときがあります。
モネの「睡蓮」。オランジュリー美術館で・・・撮影だったものですから、人払いができて贅沢だったんですよ。睡蓮に囲まれている状態。もう泣けてしまいました。これは日本画だ!と思ったり。絵具の使い方、実際に顔彩も使っているのかもしれませんね。濁った池なのに透明というか、魚影が動いているように見える。立っている位置をちょっと変えるだけで、ゆらぎが全部伝わってくるんですね。
印象派の画の話をしているとキリがないんですけれど、そういうものに、本物にふれると自分も洗われるような気がします。
さて、私は歌をつくっているわけですけれど、「歌だけが詠み人知らずとして残っていくこと」が理想というのは、ずっと変わりません。さっきの俳優さんの話もだけれど、自分の実体がなくなって透明になって・・・それは死によってなのかわからないけれど、生きている間でもそうかもしれないけれど、その透明な空間を歌だけが流れていって、聴いてくれている人の心に届いて、その人のなかでさらに透明に旅をしていけたらいいな、と思っています。
それでは、今日のコード「透明感」から自分で選んだ自分の曲を。この季節の歌です。
残暑 / 松任谷 由実
この歌は、だいぶ昔にツアーで夏の季節に有明海を見ているとき、電車から湾が見えるんですけれど、日傘をさした影が堤防のところにポツンと見えたような・・・そのイメージでつくったんですね。でも、つくりながら、自転車とかも出てくるし・・・“ペダルをこいで”というところ。何か、蘇州とか、中国の、ハッとするような、透明な人がいるときがあるじゃないですか。文明に毒されていないような、ただ三つ編みをしているような女性。そういうイメージも重なりましたね。
お送りしたのは、1990年リリースのオリジナルアルバム、『天国のドア』から「残暑」でした。
今日は、「透明感」というコードでお話してきました。
結論としては、「透明感」がある人は、まず何よりも心身ともに健康で、今日話をしていて思ったんですけれど、何か物事に集中できる力がある、その集中した先に透明な世界があるんじゃないかなと思いました。
地味な小さな積み重ねが、見た目や美容だけじゃなくて、健康にもつながるし、コツコツがんばっていけば、年齢を重ねるほどに「透明感」のある人になれるかもしれませんね。
そして、私もステージに立つために、日々、コツコツと・・・。
『THE WORMHOLE TOUR』第三期は、今年の12月24日まで続きます。
全72公演のこのツアーが無事、コンプリートできるように、しっかり体調を整えますね。
また、デビュー55周年を迎える2027年に向けてとスタートした企画、「ユーミンと私のプレイリスト」も、現在、進行中です。
さまざまなジャンルで活躍されている方々に、自由なテーマで選んでいただいたプレイリストは、特設サイトに掲載されています。この番組のリスナーのみなさんの選曲によるプレイリスト、“『Yuming Chord』とリスナーと。”・・・も、ただいま鋭意、最終選考中!どうぞお楽しみに。
そのほか、私の最新情報や近況は、松任谷由実公式ホームページ、XやInstagram、TikTokなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。