元木大介さんは1971年、大阪府のご出身。
上宮高校で甲子園には3回出場。
プロ野球選手として、1991年から巨人一筋15年、“クセ者”といわれる堅実な攻守で活躍!2005年のシーズン終了後に引退されました。
引退後は野球解説やタレント、俳優などの活動をしながら、2018年には指導者として、U12世界少年野球大会の日本代表監督に就任。2019年から巨人のコーチに就任し、様々な担当を歴任しながら2023年のシーズンまで務められてきました。
──元木さんはプロ野球選手を引退して今年で20年ということで、今週は、解説者、そしてコーチとして様々な選手を見てきた眼力で、海を渡った日本人選手についてお伺いしていきます。今シーズン、日本人選手の活躍は凄まじいですよね。
ランキングで上位に何人も入ってくるなんて、考えたこともなかったです。
──今まで、もちろん野茂さんやイチローさんなどタイトル争いに絡んでいた選手はいますけれども、今シーズンは打つ方でいうと、大谷翔平選手がホームランを争う。そして鈴木誠也選手は打点を争う。防御率では、千賀投手、山本由伸投手。そして今ちょっと怪我で出ていないんですけれども、今永昇太投手。日本人選手は“メジャーで通用するかどうか”みたいなところが今までの議論だったのに、今はメジャーでタイトル争い。
いや、すごいですよ。
──大谷選手は毎年6月から大爆発して、アメリカでは“ジューンタニ”なんて言われていますけれども、今年は5月から絶好調。“メイタニ”になって、5月いっぱい、6月に入るまでに60得点。これはメジャー史上初の記録。打点の方は、ドジャースの下位打線があまり出塁しないこともあって稼げていないんですけれども、得点の方はものすごいハイペースで進んでいます。でも、この後ピッチャーとしての復活があると、ちょっと打席数は減ってくるんでしょうか。
減ると思います。やっぱりホームランのペースや得点のペースもちょっと落ちるんじゃないですかね。落ちてしまうのはしょうがないですね。二刀流ですし。
──そして、その大谷選手と比較されるのがアーロン・ジャッジ選手。毎年どちらがすごいのかと常に言われ続けていますけれども。
この間のヤンキース戦もすごかったですよね。
──ドジャース対ヤンキースで、ワールドシリーズ以来の対決がありましたけれども。
ジャッジがホームランを打ったら初回先頭打者で大谷選手ホームランを打つ。
──さらにもう1本2本重ねたら…でも次の試合でジャッジ選手が2本ホームラン。
すごいですよね(笑)。あの2人はやっぱりちょっと群を抜いていますね。
──ジャッジ選手は5月いっぱい、6月までに86安打を打っているんですけど、これがメジャー史上1位タイの記録なんです。もう1人の1位はイチロー選手なんですよ。だから、打率でイチロー選手に迫って、ホームランでは大谷選手に迫っている。大谷選手とイチロー選手を掛け合わせた…これ、ジャッジ最強なんじゃないかという言い方も…。
間違いないでしょう。
──この打率がどこまで続くかわからないんですけれども、昨シーズンも率は残していたじゃないですか。だからやっぱり何か開眼したんじゃないかなと。
何かちょっと自分で変化があったんでしょうね。そのジャッジ選手を教えていた、アドバイスしたのが松井選手ですからね。
3Aとかメジャーに上がる前に「すごいのがいるよ」という話も聞いていたので、それがジャッジだったんですよね。
──でもそこまで順調に伸び続ける。これもすごいことですよね。
普通は1年2年やってちょっと人が変わってしまう選手は多いんですけど、ジャッジは本当にマスコミ受けも素晴らしいですね。
──人柄も素晴らしい。
それはやっぱりヤンキースというチームじゃないですかね。だから僕らの時代だと、当時のヤンキースだとジーターとかじゃないですか。ジーターとかも毎試合早く来てインタビューを受けているんです。「疲れないのか」と誰かが質問したら、「マスコミと話をするのも俺たちの義務だ」「ファンも大事にしなきゃいけないし、マスコミも大事にしなきゃいけない」と。やっぱり松井選手もそういうことをやっていたんだなということがわかりますよね。
──でもそれで言うならば、日本のプロ野球で言えば巨人軍がそれに当たるわけじゃないですか。元木さんもやっぱり、巨人軍の一員として心がけていたことがあるんでしょうか?
ファンサービスというのは、やっぱり大事にしていましたね。ただ、僕がテレビに出たりインタビューを受けると、ちょっとバラエティチックなってしまう(笑)。だから、マスコミの人は野球の話をする時は松井とか由伸としていましたね(笑)。
──そして大谷選手以外で言うと、今シーズン、鈴木誠也選手が大活躍しています。
やっぱり慣れてきたんでしょうね。いろいろ自分で工夫しているということは言っていたので。彼もすごく練習する選手なんですよね。一昨年ですか、「オフシーズンもずっと練習していたらシーズン途中にバテてきたのでちょっと変えました」と言っていたので、「何を変えたの?」と聞いたら、10日間ぐらい野球を何もしなかったらしいです。もう体を休めようと。でも10日間ぐらいなんですよね。でも「それだけでも違いました」ということで、昨年ちょっと打つようになってきたので、またそれを続けているんでしょうね。
だから、今ちょっといい感じになってきたのが、メジャーの環境に慣れたからじゃないかなと思っています。
──大谷選手の体つきが変わったところに目が奪われてしまいますけれども、鈴木誠也選手もコツコツと体を作ってきて、今立派な体格ですよね。
カープの時も、下半身は岡本和真級だったんですよ。ただ、膝から下が岡本和真と違って鈴木誠也選手が細いんです。だから走れるんですよね。スピードがあるんですよ。それでなおかつ今、上半身もすごい体になってますから、メジャーはやっぱりパワーが必要なんだなと感じましたね。技術もそうですけど、やっぱりスピードとパワーの2つを持っていないとメジャーで通用しないんだろうなと。
──ホームランの数も飛躍的に増えているので、30本、もしくは40本。
40本、120打点ぐらい打ってほしいですね。100打点というのはやっぱりメジャーですごく評価されるので、120ぐらいいってもらって、「大谷だけじゃない、鈴木誠也もいるぜ」というぐらい頑張ってほしいなと思います。
──一方ピッチャーですけれども、ピッチャーもこれまた皆さん大活躍ですごいですね。
山本由伸投手は当然やってくれるだろうという感じだったんですけれども。
──ドジャースは、先発陣というかブルペンも含めて故障している人が多いですから。防御率も結構打たれている先発が多い中、ドジャースを支えていると言っても過言ではないですよね。一方、ドジャースといえば、佐々木朗希投手が今シーズンから新たな仲間に加わりましたけれども、若干、このメジャーのマウンドにアジャストしきれていない、制球が定まらないという部分も多かった。
よく言う「ボールの違い」とかね。ただ、僕は佐々木朗希投手は1つ1つを取れば一流ですけど、日本でも1年を通しての経験がほとんどないので、その中で違う環境でやるというのはちょっと大変じゃないかなとは思ったんです。でも、いずれローテーションを守ってエースになるピッチャーだと思います。
──そして、メッツの千賀投手なんですけれども。
すごいですね。“お化けフォーク”ね。
──日本にいる時はやっぱりストレートとフォークというイメージがあるんですけれども、アメリカに行って、他の球種、カーブだったりチェンジアップだったり今シーズンからはシンカーも投げているということで、多彩な変化球のイメージになっていますよね。
やっぱり、フォークは素晴らしいものがあるんですけど、真っ直ぐとフォークで、フォークが入らなかった時に真っ直ぐだけでは勝負できないと感じたんじゃないですか。だから、いろんな変化球を投げないと打ち取れないなと。日本だと強気でいけるんですけど、(メジャーでは)それ以上に投げるピッチャーもたくさんいる。3Aとかで言ったら160キロ投げるピッチャーがいっぱいいますから。その辺を千賀投手も感じ取って、いろんな球種を増やして、打ち取る…三振を取るんじゃなくて、“打たせて取る”ということを覚えてきたんじゃないかなと思います。
──そして“ここぞ”という時に“お化けフォーク”があるというのは、今の大活躍が納得ですよね。
納得できます。日本にいる時から、あのフォークをベンチから見たくなかったですからね(笑)。横から見ても“よく落ちてるなぁ”という感じでしたね(笑)。
──一方で、ちょっと今怪我で離脱しているんですけれども、今永投手。昨シーズンデビューしてから、ひたすら打たれない。びっくりする衝撃のデビューでしたよね。
そうですね。スピード感はそんな速くないんです。145キロぐらいなんですけど、キレがやっぱり違いますね。
──スピンの回転軸と回転量が素晴らしい。
バッターが打ってベースを通る時に、スピードが落ちないんですよ。だからすごく速く感じるんです。それが武器だったんだろうなと思います。だから、真っ直ぐでも通用するんだろうなと。コントロールもいいですしね。
僕がコーチをしていた時、“早くメジャーに行ってくれないかな”と思っていたピッチャーです(笑)。
──やっぱり、相手の先発が今永だと打てない?
打てない。「今日のベイスターズ戦、(先発は)誰?」と聞くと「頭、今永ですよ」と言うので、「また!?毎回じゃない」って(笑)。
──相手はどうしても巨人に対してエースをぶつけてくる。それが巨人たる宿命ですけれども、そういう時って、バッターに対してどういう指示を出すんですか?
「お前たち、もうわかってるだろう?」と。指示というよりも、選手はもう感じ取っているわけです。「いいものはいいし、それを感じ取って、自分たちで工夫してどうやって打とうかということを考えてやってくれ」と。俺たちは打席に立てないから感じ取れない。あそこに入ってボールを見た人にしかわからないので、その辺は自分たちでどうにかしてくれ、と。
──やっぱりデータだけじゃなく、その距離で対峙しているからこそ汲み取れる情報で何とかしてくれと。
もうそれだけですよ。コーチは祈るだけですから。
──そして、巨人から菅野投手がメジャーに行きましたね。35歳にしての挑戦になりましたけれども。
オールドルーキーで桑田さんみたいな感じだったんですね。桑田さんもそのくらいの年齢から行ったはずなので。“どうなんだろうな”と思ったんですけど、想像以上でした。
──素晴らしい結果を残していますよね。
やっぱりコントロールでしょうね。彼もアメリカではスピードはそんなに速い方じゃないけれども、ストレートを速く見せる技術と、“勝負するのか、ボール球で使うのか”というコントロールも持っている。そこで、変化球のキレも、スライダー、フォークもいいので、勝負できる。だから、ピッチャーってコントロールとキレなんだなと思いますね。
──170キロ出すようなピッチャーがいる中でも、結局はコントロールって大事なんですね。
大事ですね。やっぱり(球速が)速くてもコントロールが悪いとフォアボールで自滅しますからね。
だから本当に想像以上の活躍ですね。嬉しいですね。
──ただ、メジャーって、下位打線でもちょっと球が甘く入ると簡単にスタンドインするじゃないですか。“投げる方もすごいけれど、打つ方もパワーがめちゃくちゃあるな”と思いますよね。
パワーだけだったら、全体を見るとやっぱりメジャーの方がありますよね。ただ、細かいところでは日本人の方がコントロールもいいし、バットに当てる技術も高いと思います。
──だからこそ、WBCで日本は優勝できているわけですよね。さあ、この番組は毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。今週も元木大介さんの心の支えになっている曲を教えてください。
松山千春さんの「生命」。
長男が生まれた時にこの曲を聴いたんですけど、もともと、僕は千春さんと仲が良くて。
──前から松山さんとは面識があった?
現役の時からあって、千春さんの曲をよく聴いていたんです。それで車の中で(松山さんの曲を)聴いていたら(この曲が流れて)、子供が生まれたのが初めてだったので、すごく嬉しくて、この歌を聴いた時に、車の中で涙が出ちゃって。
──やっぱり今まで自分が子供だったわけじゃないですか。そこが立場が本当に180度変わる瞬間。
何か、僕の親父のことを思い出します。俺のことをこう思ってくれていたんだ、と。
──自分が親になった時に親のことがわかるというか、こんな思いだったんだと。
そうですよね。“あれだけ厳しく言われたけど、こういうことだったんだ”ということもわかってくるし、いろんな親父のことを思い出しながら、長男を見た時に、この曲を聴いた時に、本当に1人で車で泣いちゃったんです。いい歌だなと思って。
──それまでもこの曲を聴いたことはあったんですか?
ありました。でも、こんなに感動はなかったんですよね。実際に自分の子供が生まれて、自分のDNAが…と思うと、やっぱり聴こえ方が全然違ってくるんですよね。
今回お話を伺った元木大介さんのサイン入り色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!