
──今年の日本シリーズは、セ・リーグ、パ・リーグ両方ともリーグ優勝したチームの戦いになりましたよね。
でも、セ・リーグに関して言うと、阪神タイガース、圧倒的でしたね。強かったです。
ホークスに関して言うと、クライマックスシリーズで日本ハムファイターズと当たるんですけれども、レギュラーシーズンでもやっぱり互角の試合をやり続けていましたよね。勝率もそれほど変わらないというところでどうなるのかなと思ったんですけれども、ホークスが勝って、タイガースと日本シリーズで当たって。僕は解説者なので、「どちらが勝つか」「何勝何敗か」みたいなことを絶対に言わされるんですよ(笑)。
ホークスの強さについて、レギュラーシーズンを阪神タイガースと比べた時に、投打に安定しているし、打順も固定できている、先発、中継ぎ、抑えもしっかりしているというところでいうと阪神が若干上かなと思ったんです。でも、クライマックスの試合を観た時に、“これはホークスが強いな”と。なので、「予想してください」と言われた時に、最後の最後で「ホークスが4勝2敗で勝つ」と言ったんです。
その時の解説者で「ホークスが勝つ」と言った解説者はほとんどいなかったんですよ。4勝2敗で予想した解説者は、僕と元ダイエーホークスの井口(資仁)さんの2人でしたから。
それで、4勝2敗と言ったけれど、ホークスが4勝1敗で勝ったじゃないですか。何が違ったかという話になった時に、「やっぱり山川(穂高)だな」と。山川が覚醒したんです。レギュラーシーズンで苦しいシーズンだったんですけど、ホームランを打ちまくったんですよ。その結果ですよね。
──第1戦で阪神が村上(頌樹)投手で取って、これはやっぱり阪神が強いのかなと思いましたが、やっぱりソフトバンクの選手層の厚さ。
そうなんですよ。層が厚いということと、でも今年に関していうと、ホークスは打順を固定できなかった。というのも、怪我人が多かったんです。だから小久保監督も、序盤でプランが全部崩れてシーズンをどう乗り切るかとなった時に、1つ1つの試合を勝つためにその場その場で(打順を)組み替えてやっていってなんとかしのいだ。日本シリーズもそれは続くだろうと話していたんですけども、結果的に、打順をいろいろ組み替えながらやっていくうちに怪我人も戻ってきましたし、いろんなものがうまくかみ合った結果なのかなと思います。
──今シーズン、中継ぎとして阪神の石井(大智)投手が大活躍。全く打たれなかったじゃないですか。その石井投手が、第5戦で柳田(悠岐)選手に2ランを打たれてしまった。
決して状態は悪くはなかったんですけれども、野球ってこういうことがあるなということは…僕はピッチャー出身なので、中継ぎピッチャーが打たれるのはすごく苦しくは思います。
でも、柳田もすごく状態が上がっていました。あと、阪神のキーマンを佐藤輝明選手にする人が多かったんですよ。
──今シーズン、あれだけ覚醒した。元々素晴らしい選手と言われていましたけれども、本当に一皮むけましたよね。
むけましたね。開幕前にドジャースとの試合をやった時に、スネル投手からホームランを打ったんです。スタートからあんなスタートで、“ちょっと違うな佐藤輝”みたいな感じでみんなざわざわしていたら、レギュラーシーズンもずっと活躍し続けたので、これはもう本当に覚醒したというか。守備も安定していたし、バッティングもすごかったし、阪神の4番として固定されていましたから、良いシーズンだったと思います。

──そしてワールドシリーズ。これまた盛り上がりましたけれども、やっぱり、メジャーリーグ30球団ある中でワールドチャンピオンとして連覇することがいかに難しいかということを思いましたよね。
思いましたね。MLBでの連覇は、ヤンキースが1998、1999、2000年に3連覇して以来ですから。
ブルペンで言ったら、佐々木朗希投手が見事にハマったんですよね。もともと佐々木朗希投手は先発ピッチャーなんですが、怪我もあってシーズンの後半に戻ってきて中継ぎで2試合投げて、ポストシーズンに入ってから抑えに抜擢。1年目のルーキーがシーズン終わりから中継ぎをやって、いきなり大事な場面でクローザーを任されるってすごくないですか!?
──「フィリーズが強敵だ」と言われている中、フィリーズ相手に3イニング完璧に抑えた。あの魂の3イニングがなかったら、もうフィリーズに負けていたんじゃないかと。
おっしゃる通りです。ワールドシリーズの前のディビジョンシリーズがあって、そこでフィリーズと対戦して、“あのフィリーズに勝った”というところもすごいんだけれど、そこを勝ち切るためにはやっぱり抑えがしっかりしていないと、というところで、佐々木投手が見事ハマりましたよね。
だから、ワールドシリーズで優勝したことはすごいけれども、その前にしっかり勝たないとそこには行けないわけで、佐々木投手がいなかったらワールドシリーズにも行けなかったのかなと僕は思っています。

──そして、先発陣のしっかりしているドジャースとブルージェイズの強力打線がどうなるかと思いましたが、ブルージェイズも強かったですよね。ドジャースの方が淡泊というか、結局、個々の選手頼みのような印象を受けました。最終戦も、言ってみればソロホームランが3つ出てくれたから良かったけれども、チームとしてブルージェイズを攻略しようというところがあまり見えなかったなと。
おっしゃる通り、ブルージェイズの方が、“どういった野球をやるか”いうところや、例えばバッティングに関しても明確だし、先発ピッチャー、中継ぎ、抑えまでの繋ぎ方もすごく良かったんですよ。ドジャースは、今おっしゃったように“選手任せ”というか、中継ぎがあまり強くないので、もう行けるところまで引っ張って、仕方がないから変える、ここまで行って無理なら変える、みたいな感じだったので、試合運び的には全然良くはなかったんです。
──変えるタイミングも、ちょっと遅れて、結局点を取られて…というところに繋がっていましたよね。
そうなんです。でも、勝ち切ったというのは、やっぱり“一発が打てる選手が揃っている”ということなんですよ。
──個々の力。
だから、良い野球とか繋ぐ野球は大事なんだけれど、やっぱり一発なのかなと思っちゃいますよね。やっぱり野球って一発が怖いし、一発が打てるバッターがいるチームが強いんだなと僕は感じました。
──でも、そのドジャースの最終戦、大谷翔平選手が中3日で先発して、しかも、フォアボールで塁に出て、その後走塁も結構走って頑張っていたじゃないですか。その影響もあってか、やっぱり制球が定まらず、なかなか苦しい展開でしたよね。
中3日ですから、疲れがある中だったということと、あとは、あの時の大谷選手が今までの登板と何が違うかと言ったら、あの試合は先発ピッチャーをブルペンに入れていたので、長いイニングを投げる必要がなかったんです。つまり、序盤から飛ばしていくピッチングスタイルで良かった。でも、疲れもあり、“飛ばしていこう”という気持ちとうまくかみ合っていなかった。そこでちょっと力みが生まれてしまい、ストライクボールがはっきりしてしまったんです。
あとは、スライダーやスイーパーもそうなんですが、やっぱり変化球が甘めに入ってしまうんです。“ストライクが取れない”となると、それを捉えられる、ホームランにされるというところがあったので、試合の流れやチーム状況によってピッチングスタイルは変わるんですけれども、そういったところが何かうまくいかなかったのかなと見ていて感じましたね。
──そんな中でも、ドジャースで大車輪の活躍をしたのは山本由伸投手。
すごかったですね。MVPになりましたが、山本投手が投げる試合は全部負けられない、負けちゃいけない試合だったんですよね。
──第2戦で投げた時も、敵地で第1戦を落として、これで2連敗してしまったら流れが悪くなる。
悪くなるし、チャンピオンになる可能性は一気に下がるんです。そこで完投ですよ。
──しかも2試合連続。その前のブルワーズ相手にも完投勝利。
(第3戦)延長18回に行った時に、(2日前に9回を投げていたにも関わらず、登板するために)肩を作っているんですよ。
──プルペンまで行ってね。カメラに抜かれていましたけど、その時の佐々木朗希投手の「マジ!?」というリアクション(笑)。
こっちも“マジ!?”と思いながらね(笑)。
──それで、ブルペンで本格的に肩を作り始めたところで、フリーマン選手が、「いや、由伸をマウンドに行かせるわけにはいかない」と言ってホームランを打って決まりましたけど、“いやいや、ブルペン行かせるわけにはいかないって、その前にホームランを打ってくれ”って思いました(笑)。
確かに(笑)。でも、そこで自ら「行きます」と言ったという。なかなかああいうシチュエーションで「僕やります」なんて言えないですよね。もうエースです。エースの自覚です。

──そして、負けられない第6戦でも先発して、ここでも試合を作って、素晴らしかった。
第6戦も6回を投げ切ったわけじゃないですか。そこで勝って、最後、第7戦。
──これも、監督の継投策が“それでいいのか”という(笑)。そこまでランナーをためたところで、“いや、ここで変えるのか”と。そしていきなりデッドボールじゃないですか。押し出しでもうおしまい、という状況ですよね。
そうです。そこで抑え切るというところなんですけどね。
──そういった意味では、ドジャースの守備もファインプレーというか、よく守り切ったなと。
そうですね。結局、最後は山本投手が、ワンアウト3塁1塁で1塁ランナーが帰ってしまったらサヨナラ負けという場面で、最後ダブルプレー。
──山本由伸投手がインタビューの中でも触れていましたけれども、“トレーナーの矢田修さんにプロに入る時からずっと見てもらっていて、その時は1回投げたら10日間ぐらい投げられなかったのが、今はこんなに連投できるようになった、誇りに思う”ということを言っていて、“そんなに人って変われるんだ”と。
矢田さんの話になったから言いますけれども、第6戦が終わった後に、会見では(山本投手が)「明日は(登板せず)応援したいです」と言って笑いをとっていたじゃないですか。でも、その後の治療で、矢田さんが、「一応明日は投げられるような体にはしておきましょう」と言ったんです。矢田さん発信なんですよ。 だから、“矢田さんがそういう発想をしてなかったら、もしかしたら(最終戦で)投げなかったのかな”と思ったりしました。
結局、次の日に、山本投手が動いたら“行ける”という感覚があったので「行きます」と話をしてブルペンに入ったらしいです。
だから、細かい歯車がちょっとでもずれていたらこういう結果にはなっていなかったのかなということは、今回のワールドシリーズ通して感じましたね。
──そういった意味では、やっぱり山本由伸投手の自己犠牲の献身性というのは、ドジャースにすごく良い影響を与えたんじゃないかなと。
そうですね。
──日本人の選手が戦力になりましたけど、それ以外に行動として貢献しているんだなと。
それは大谷選手もそうですよね。これだけ長い間アメリカで活躍しているけれど、どこか日本人らしさはありますし、日本の野球の良さも良い形で持っているなということは感じますよね。
──この番組では毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。亮太さんの心の支えになっている曲を教えてください。
ZARDの「マイフレンド」。
今日、来る時に聴いてきたということと、心地よさ。僕が小学校の頃から中学生ぐらいの時に聴いていたんですが、ZARDの坂井泉水さんが好きで。歌もいいし、見た目も好きだし…という、あの頃の淡い思い出を思い出しながら車に乗ってきたんです。“この曲にしよう”と思って心を高めてね(笑)。本当に、何も考えないでただ野球をやって鼻水垂らしながら楽しんでいた頃でしたね。

今回お話を伺った五十嵐亮太さんのサイン色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。
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さらに、今日お送りしたインタビューのディレクターズカット版は、「TOKYO FMポッドキャスト」として、radikoなどの各種ポッドキャストサービスでお楽しみいただけます。
聴き方など詳しくはTOKYO FMのトップページをチェックして、そちらも是非、お聴きください!