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2025.11.22

“ために”だけではなく、“ともに”。スペシャルオリンピックスが掲げる「Be with all」の理念

今週の「SPORTS BEAT」は、柔道のオリンピック銀メダリスト、そして公益財団法人スペシャルオリンピックス日本の理事長、平岡拓晃さんのインタビューをお届けしました。
平岡拓晃さんは、1985年 広島県のご出身。
柔道家として数々の国際大会で実績を残し、オリンピックには男子60kg級で2008年の北京大会と2012年のロンドン大会に出場。ロンドンオリンピックでは銀メダルを獲得されています。
競技生活からの引退後、2023年にスペシャルオリンピックス日本の理事長に就任。
スポーツを通じて、誰もが輝ける社会の実現を目指して活動されています。



──「スペシャルオリンピックス」について改めて教えていただけますでしょうか?

スペシャルオリンピックスは、知的障害のある人たちに様々なスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を年間を通じ提供している国際的なスポーツ組織です。スペシャルオリンピックスの世界大会は、オリンピックやパラリンピックと同じく4年に1回、夏と冬に開催されています。

──このスペシャルオリンピックスにとって、スポーツはどんな価値を持っているんですか?

私が現役の頃は、どうしても勝ち負けばかり見ていて、“一生懸命夢を追うことで相手のことを思いやる”という(スポーツの)理念はわかってはいても、なかなか実践できない。ライバルであり、倒すべき相手であり、自分が上に行かなくちゃいけない存在だと思いながら、極限状態でオリンピックを目指していた時期もありました。
でも、このスペシャルオリンピックスに関わるようになって、当時の自分が悪かったのではなく、その時は自分も一生懸命だったんだと過去の自分を認められるようになりました。それはなぜかと言ったら、スペシャルオリンピックスの人たちとつながることができたからなんですよね。
“そもそもスポーツってこうあるべきだよね”という本来のスポーツのあり方を、スペシャルオリンピックスから教わった。“人と人とはつながれるし、そこから社会と社会もつながっていける”ということが、スポーツだからできたんだなと。改めてその思いが強くなりましたし、スペシャルオリンピックを通してスポーツの価値を改めて認識できたと思っています。

──そして僕たちは先月、女子バスケのWリーグ、トヨタアンテロープスの開幕第2戦をTOYOTA ARENA TOKYOで観戦してきました。そのハーフタイム中に、DJのやまだひさしさん、アンテロープスOGの三好南穂さん、そしてショートトラックのレジェンド寺尾悟さんがMCを務めて、東京や神奈川のSOアスリートとアンテロープのOGたちが一緒になって2メンパスリレーをしていましたが、それもスペシャルオリンピックスの活動の一環なんですか?

そうなんです。あれは「ユニファイドアクティビティ」や「ユニファイドスポーツ」といった、知的障害のある人たちの“ために”だけではなく、“ともに”スポーツを楽しむスペシャルオリンピックスの活動なんです。

──“ともに”楽しむ。

はい。今、世界がユニファイドスポーツにしていこうと(いう動きになってきている)。知的障害のある人たちだけのスポーツの場を提供するのではなく、みんながそこに入っていってつながっていきましょう、“助ける”のではなく、助け合う、支え合う、協力し合う、励まし合うということを目標にしているんです。それが何を目指しているのかというと、その先の共生社会はこうあるべきだよね、ということを、スポーツを通して学んでいきましょう、知っていきましょうという取り組みなんですね。

──スポーツの良さは、ルールがわりと単純じゃないですか。その中でみんなが競う、楽しむ。だから、そういう明確なルールをもとにコミュニケーションを取ることはその第一歩としては素晴らしいかもしれませんね。

そうですね。“相手のことを知ろう”とか、“自分の苦手な部分をフォローしてもらおう”とか、なかなか言葉だけじゃ伝わらない部分ってあるじゃないですか。でも、スポーツには独特のコミュニケーションが生まれる瞬間がありますし、相手のことを思いやろうという気持ちがとふと芽生えたり、失敗しても“ドンマイ”とフォローしてくれる人がいる。そうすると、自分が認められているような気持ちになりますし、ここにいていいんだ、頑張っていいんだ、という思いがどんどん広まっていく。そういう瞬間がスポーツにはあるんじゃないのかなと。そこを知ってもらえるきっかけになるのがユニファイドスポーツなのではないかなと思っています。

──どんな元アスリートの方が参加されているんですか?

日本では、このユニファイド形式で行われている競技としては、サッカーやバスケットボールが盛んに行われています。今年イタリアのトリノで行われた世界大会では、フロアボールという競技でユニファイド形式で参加しました。
海外でいうと、スポーツの枠を超えたところでユニファイドを探して取り入れている国が結構ありまして、ユニファイドハイキングやユニファイドウォーキング、ユニファイドコンサートなど、“あるべき社会、共生社会って何だろう”と考えさせてくれるものを、いろんなところでユニファイドを探して結びつけて1つの活動とする取り組みが行われています。

──究極に言えば、社会全体がユニファイドになるのが当たり前というか、そういうことですよね。

そうですね。共生社会という言葉はなかなか説明がしづらいぼやっとしたものなんですけれども、実際一緒にやっていくと“こういうことが共生社会なのかな”と思えるタイミングがよくあるんです。スペシャルオリンピックスはそういう回数を増やしていきたいと考えていて、今いろんなところでユニファイドを探しています。

──そして、スペシャルオリンピックスならではなんでしょうか、「ディビジョニング」とか、「マキシマムエフォート」というものがあるんですよね。

そうなんです。スペシャルオリンピックスは、自分の競技能力と同等の人たちと一緒に競い合っていくというクラス分けが行われていて、その1つが「ディビジョンニング」です。
予選で一度アスリートたちがどの程度の競技能力を持っているのかを見極めて、次の決勝に進んだ時に、(競技能力が)同程度のグループが作られて、その中で順位を決めていかなくてはいけないので、結構ハードなんです。

──シビアといえばシビアですよよね。同レベルの人たちが競い合わなければいけない。ただ、一般的な予選とは違って、全員が決勝に進めると。

そうなんです。(予選での)敗退はないんです。私たちは、対戦相手を見ると計算をするじゃないですか。“このぐらいの力で勝てるだろう”とか、“体力を次のために温存しておこう”とか。でも、(ディビジョニングによって)それをさせない、最初から自分の限界を出さないと勝てないグループ構成にされるので、最初から本気でいかなくちゃいけないという中でみんな競い合っています。

──そこでマキシマムエフォートというものがあって、ディビジョニングと決勝とで、あまりにも能力というか、スコアが違うと…。

失格になってしまいます。メダル欲しさに予選で自分の能力を低く見せて(能力の低い組に振り分けられ)決勝に進んだ時、例えばタイムが明らかに(予選と)違った場合は、予選の時に本気を出していなかったということで、マキシマムエフォートによって失格ということになってしまいます。


──ディビジョニングの時からみんな全力で楽しんで競技に向かうということですよね。
そして、サッカーもユニファイドが盛んということで、来月6日、愛知県の豊田スタジアムで行われる名古屋グランパス対アビスパ福岡戦の試合の前に、ユニファイドサッカーデモンストレーションが実施されるんですよね。また、トヨタもスペシャルオリンピックス啓発ブースを出展するということですが、トヨタにはどんな印象をお持ちでしょうか?

トヨタさんとは、単なるスポンサーというよりも、一緒に動いていく仲間、一緒に活動していく仲間という印象を持っています。社員のみなさまがボランティアとして参加してくださり、アスリートと交流したり、我々のスローガンでもあります「Be with all」の理念をともに実践してくださっていて、とても心強い存在です。

──さらには、来年の6月に、4年に一度の全国夏季大会、「スペシャルオリンピックス2026東京」が開催されるんですよね。

そうなんです。大体約20年ぶりでしょうか、東京で4年に一度の全国大会、ナショナルゲームの夏季大会がここ東京で行われます。6月と9月にかけて、2回に分けて行います。実はこれは初めてなんですけれども、より多くの人たちにこの大会を知ってほしいですし、参加してほしい、観に来てほしいという思いでこのようにプログラムを分けました。

──開会式が6月5日にTOYOTA ARENA TOKYOで行われると。とても素敵な施設なので、この場所から多くの笑顔が生まれることを今から楽しみにしています。
さあ、この番組は毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。平岡さんの心の支えになっている曲を教えてください。

GLAYさんとMISIAさんが歌われている曲になるんですけれども、「YOUR SONG feat.MISIA」という曲です。
スペシャルオリンピックスの応援歌でもあるんですが、お二方がスペシャルオリンピックスのことをすごく好きでいてくださって、歌で応援したい、支えたいということで作ってくださった曲になります。

──作詞作曲されたTERUさんが、サッカーの中田英寿さんと話をしている中でスペシャルオリンピックスのことを知って、それがきっかけで書かれたそうですね。

そうなんです。ヒデさんもスペシャルオリンピックスをすごく応援、サポートしてくださっていて、その繋がりもあってこの歌が出来上がったという背景があります。

──「昨日の自分を超えて行け 未来を切り開け!」という力強いメッセージを持った歌ですよね。

常に挑戦を続ける人たちを後押し、背中を押してくれるような歌でもあると思っています。
また、頑張っていく途中では孤独な瞬間が絶対に訪れるんですけれども、これを聴いていると、1人じゃないんだな、自分は頑張っていけるんだと思わせてくれる曲です。

──ますますスペシャルオリンピックスのことを多くの人に知ってもらいたいですね。

本当にそうなんです。もっと感じてほしいですし、今こうやって自分がスペシャルオリンピックス、そして自分の人生のことを語れるようになったのも、スペシャルオリンピックスに触れることができたからなんです。ぜひみなさんにもスペシャルオリンピックスに触れていただいて、声を聞かせていただきたいなと思っています。


今回お話を伺った平岡拓晃さんのサイン入りポロシャツを1名の方に、スペシャルオリンピックスのタオルを3名の方にプレゼントします。
ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

さらに、今日お送りしたインタビューのディレクターズカット版は、「TOKYO FMポッドキャスト」として、radikoなどの各種ポッドキャストサービスでお楽しみいただけます。
聴き方など詳しくはTOKYO FMのトップページをチェックして、そちらも是非、お聴きください!
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