小谷真弥さんは1983年、大阪生まれ、埼玉県東松山市育ち。
明治大学付属明治高等学校、明治大学の野球部を経て、報知新聞社に入社。
2009年からプロ野球を担当するようになり、千葉ロッテ、横浜ベイスターズ、ジャイアンツなど歴任し、2015年から北海道日本ハムファイターズ、そして2017年からメジャーリーグを担当。
現在は、野球専門WebメディアFull-Countに所属し、大谷翔平選手らの最新情報を届けてくださっています。
──前回は2月にお越しいただきました。その時は大谷選手の結婚発表の裏側、去年のドジャースの優勝の裏側、そして大谷選手のカラオケの話など(笑)、いろいろ聞かせていただきましたが、今日は今シーズンのドジャースを振り返っていきたいなと思います。 今シーズンは昨シーズンと何か変わったところはありましたか?
正直、去年が出来すぎなシーズンだったので、今年何があるんだろうと思っていたら、それを余裕で超えてきましたね。何かもうすごかったですね。
──シーズン最後の方で、ブルペン陣がちょっと崩壊していましたよね。誰が出ても打たれまくって、せっかく先発が試合を作っても負けて、なかなか地区優勝を決められず、という感じでしたよね。
そうですね。本当に苦しい試合でした。“由伸投手がノーヒットノーランを達成するんじゃないか”と思うような好投を見せた試合もありましたし、それで由伸投手が下がった後に試合をひっくり返されたり、“今年のドジャース大丈夫かな”と心配になるような試合が9月は続いていました。
──それを言うなら、佐々木朗希投手が救世主となった。佐々木投手が帰ってきたことは大きかったんじゃないですか?
本当に素晴らしかったですね。ドジャースのウィークポイントを埋める活躍だったと思いますし、日本人の3選手がみんな頑張ったからこそドジャースが世界一に立てたと思います。
──大谷選手は、去年、リハビリをしながら“50-50”、つまり50本以上のホームラン、そして50個以上の盗塁を達成して「すごい」という話をしましたけれども、今シーズンは、ピッチャーとしてのリハビリがいろいろある中でやっていかなければいけない。本当のリハビリをしていたシーズンにあたるわけですよね。
そうですね。本当に手探り状態ではあったと思いますが、その中でもみごとに9月10月にピークを持っていって、本当に素晴らしい調整だったと思いますし、すごいなと改めて思います。
──メジャーリーガーは、特にトミー・ジョン手術をするピッチャーは増えてきていますが、大体、復活した年は球速も出なかったり、なかなか100%は戻ってこないことが多いですよね。だから大谷選手も今シーズンピッチャーとして成績を出すことは難しいんじゃないかなと思っていました。
そうですね。ただそれを超える自己最高の球速も出してきましたし、球種もさらに増えて、そして全部の球が勝負球になるという。スライダーでもスプリットでも空振りを取れるし、カーブでも空振りを取れる。バッターからしたら本当に嫌なピッチャーだろうなと思います。
──復活した時に、スピン量も含めてストレートの質が上がっていた。それは何か要因があったんですか?
投げ方も変わったんだと思いますし、大谷選手自身も、手術をする前に「今以上のプレーをしたいから手術をするんです」という話をしていました。より万全で、より大きなパフォーマンスを出すために手術をするんです、と。
──手術の術式は、普通のトミー・ジョンではなくハイブリッドなものと言われていますね。
そう言われていますね。なので、より強力になったという感じもあると思いますし、大谷選手自身も、“ピッチャーには靭帯の怪我はつきものだ”ということで、「次にもし手術することになったら今回のピッチャーが最後かもしれない」というような話もされていますから、“残り期間を楽しむ”という言い方は良くないかもしれませんが、我々もありがたく思いながら取材していこうと思っています。
──もちろん手術だけじゃなく、本人のより良いものにしたいという努力があってのことなんでしょうけれども、どれだけ高いところを目指しているのかと…。
我々では想像できないようなところはありますが、本当常に先々を見ている感じですね。
シャンパンファイトの時も、みんな“大谷選手もすごく喜ぶんだろうな”と思っていたら、シャンパンファイトが終わった瞬間にすぐシャワーを浴びて「お疲れ様でした」と帰っていってしまって(笑)。
──ワールドシリーズが終わった後は?
その時もそうでしたね。
ワールドシリーズ進出を決めた時も、選手のみなさんはグラウンドに出て家族と写真撮影をしたり各々喜んだりするんですが、大谷選手は本当に(撤収が)早いんです。ワールドシリーズで勝った時も、由伸投手はシャンパンファイトの後に会見があるので(先に切り上げて)会見に向けてシャワーを浴びに行ったりしていたんですが、大谷選手も一緒に、チームの一番最初のバスに乗って宿舎に帰っていくという(笑)。
──何をやってもニュースになっていた大谷選手ですけれども、取材する立場で驚いたことはありましたか?
さきほどの「切り替えが早い」という話に繋がるんですが、10月17日の1試合3本塁打10奪三振した伝説の試合後、MVPを受賞した選手の会見があったんですけれども、その時も12分間全く笑顔がなかったのがすごく印象的でしたね。逆に質問する側のこちらもどういうテンションで質問したらいいのか迷うような(笑)。
──あの試合は二刀流ならではというか、投打においてメジャーリーグで超一流じゃないと。レギュラーシーズンで達成しても、もちろんそれはそれですごいことなんですが、あれがポストシーズンで…。
世界一を争うような舞台で。
──勝ち上がってきた強いチーム相手にあれができてしまう。
アメリカの記者もよく「リトルリーグをメジャーの舞台でやるのが大谷だ」みたいな話をするんですが、まさにそういう感じですね。“エースで4番”というか、本当にそういう試合だったと思います。
──ドジャースの日本人選手といえば、最初にも少しお話がありましたけれども、大谷選手以外にも、佐々木朗希投手や山本由伸投手と、日本人選手大活躍のシーズンとなりました。 ただ、佐々木朗希投手は、当初レギュラーシーズンは先発として回っていく予定が、途中でインピンジメント、肩が痛いということでマイナーに行ったりしましたよね。
そうですね。やっぱり本人的には悔しいシーズンだったのかなとは思いますし、本人もそういう話をしていたことはありました。ただそれでも、佐々木朗希投手がいなければドジャースは世界一になれなかったと思いますし、本当に貴重な戦力になったという印象ですね。
──“日本にいた時からある程度の痛みがあったのではないか”という話も出ていましたが、それが良くなったから復活できたということですか?
そうですね。投球フォームもちゃんと見直して、怪我をしている間に、肩の痛みを抜くと同時に元のフォームに戻したということは本人も話していました。
──マイナーで数試合投げて、今までやったことのないブルペン、中継ぎで戻ってくる。本人はどのような感じだったんでしょうか。
やっぱり“チームの勝利に貢献したい”ということでやってはいたんですけれども、最初の方はやっぱり…佐々木投手も初めてのことだったので、ブルペンでの様子がちょっと落ち着きがないというか、慣れていないのかなという感じはありました。でも、ポストシーズンで日を追うごとに慣れていったと思います。
──フィリーズ戦で、あの魂の3イニングがなかったらドジャースは勝ち抜けていないだろうなと。
おっしゃる通りですね。“救世主”という言葉がそのまま当てはまる活躍だったと思います。
──ドジャースはもともと先発陣は今シーズン充実していましたよね。ブルペンが弱かったところを補ったことで、あのポストシーズン、ワールドチャンピオンまで行けたということなのかなと。それで言うと、佐々木朗希投手本人はやっぱり納得のいかない、悔しいことも多いシーズンだったと思いますが、ドジャースにとっては本当に獲得して良かったなと(笑)。
本当に欠かせない戦力ですし、しかもマイナー契約だったので(契約金が)安い。ドジャースにとっては本当に美味しい補強になったなと思います。
──一方高い補強となった山本由伸投手。まだメジャーで1球も投げていないのにピッチャーとしてメジャー史上最高額での契約ということで疑問視する声もありましたが、もちろん1年目で既に素晴らしいピッチングをしていましたけれども、今シーズン、特にポストシーズンの活躍はとんでもなかったですね。
最後はもう、投げれば抑える。そして“いつも準備している”という感じで、ワールドシリーズ7戦観ていても、由伸投手がマウンドに上がったら点は取らせないだろうなという変な安心感が記者席にもありましたね。
──このシーズン中、記事には出せなかったけれども印象的だったエピソードなどございますか?
わりと何でもニュースにしてしまうんですけど(笑)、ドジャースが一番苦しかった9月上旬、チームが5連敗した時の話なんですが、ボルチモア・オリオールズ戦で、連敗を止めるために、コーチが打者のグループLINEで「もう全員(ゴルフでいう)パーでいいんだ」「イーグルとかバーディーを狙わなくていいんだ、パー精神で行こう」という話をしたんだそうです。その試合で大谷選手が2本塁打3四球というまたとんでもない活躍をしたんです。“大谷選手はパーで2本塁打なんだ”と思ったら笑ってしまって。
大谷選手も茶目っ気たっぷりで、ダイヤモンドを1周回る時にパターを打つ振りをしていて、こういうところにも大谷選手らしさが見えて面白かったですね。
──さあ、この番組では毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。
Afrojack vs. THIRTY SECONDS TO MARSの「Do or Die」です。
これは大谷選手の投手の時の登場曲なんですが、日本ハムファイターズ時代から札幌ドームで投げる時に流していましたし、エンゼルスでも2018年から20年まで使っていました。
今年2年ぶりの投手復帰でしたが、その2戦目からこの曲になったということで、ドジャース・スタジアムで最初にこの曲が流れた瞬間は身震いするような感動がありましたし、ファンの方も「おお〜!」みたいな感じで盛り上がっていたので、この曲を選びました。
来週も小谷真弥さんにお話を伺っていきます。 お楽しみに! 今回お話を伺った小谷真弥さんからいただいた、大谷翔平選手の投手としてのボブルヘッドとキーホルダーのセットを1名の方にプレゼントします。 ご希望の方は、番組公式X をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。 さらに、今日お送りしたインタビューのディレクターズカット版は、「TOKYO FMポッドキャスト 」として、radikoなどの各種ポッドキャストサービスでお楽しみいただけます。 聴き方など詳しくはTOKYO FMのトップページ をチェックして、そちらも是非、お聴きください!