金村義明さんは、1963年生まれ、兵庫県のご出身で、1981年、報徳学園高等学校在学中に春夏で甲子園連続出場。
エースで4番として、春は初戦で槙原寛己さん擁する大府に敗れましたが、夏の甲子園では、荒木大輔さん擁する早実、工藤公康さん擁する名古屋電気(現在の愛工大名電)などを下し優勝。
高校卒業後は、近鉄バファローズに入団し「いてまえ打線」の中軸として活躍。
中日、西武を経て1999年に現役から退かれ、現在は野球評論を中心に、幅広い分野で活躍なさっています。
──9月に入って、プロ野球選手、そしてメジャーリーガーにとってもポストシーズンに向けて大切な時期に入りました。ドジャースに行った大谷翔平選手は、エンゼルス時代、ポストシーズンに進めなくて悔しい思いをしていましたよね。
去年までは、ニュースを見ると「大谷翔平、打った、打った!」。でも、「なお、この試合は9対6で負けました」とか、(チーム自体は)負けてばかりだったじゃないですか。大谷1人で投げて、1人で打って、また負けて…みたいな。それが今年は、間違いなく最後まで行くんじゃないですか。
──ポストシーズン、勝ち進めそうですか?
彼はやるんじゃないですか? 打つ方にはベッツも帰ってきましたしね。
あとは、ピッチャーがどれだけ頑張るかで面白くなるんじゃないでしょうか。
──ロバーツ監督が、ひょっとしたら大谷選手に外野を守らせるか、守らせないか…なんて話をしていましたけれども。
あるんじゃないですか。あったところでサッとやりこなすのが大谷翔平でしょう。
──ピッチャーのリハビリをしているのに、いざ守ったら思いきり投げてしまいそうで、それは大丈夫なんでしょうか?
現在、もう屋外でキャッチャーを座らせて投げたりしているのを見ますと、全然大丈夫そうな感じですよね。
──外野の守備はどうでしょうか?
彼なら普通にイージーにこなすと思いますよ。
投げるのも、周りは「あいつ、絶対に危ない! 思いきり投げてる!」と思っても、「いや、僕の中では7割ぐらいですけど」とか言うんじゃないでしょうか。
──今までDHでMVPを獲った選手はいないですけれども。
もちろん最有力候補でしょう。でも、彼はチームを勝たせるために考えて野球をやっていますから、自分の記録なんて全然考えていないと思います。
──今年は11月に(WBSC)プレミア12も控えていますが、こちらのメンバーは若手中心になるんでしょうか?
間違いなくそうなると思いますね。
侍ジャパンもそうなっていかなきゃいけないですよね。メジャーリーガーの招集はないと思いますけれども。
──(大谷選手に対して)おとなしそうなイメージを勝手に持っていましたけれども、年齢的にもそうなってきたのかもしれませんが、(日本代表の)チームの中心として喜怒哀楽をものすごく表現するようになったなと。
去年のWBCでも、やっぱり大谷ありきでしたからね。もし大谷がいなければ1位にはなっていないと思いますし。
それは実力以外のことでもです。
日本ハム時代も、日本一になって「次の年もこんなんじゃまた勝つことはできない」という発言をしたと聞きましたし、“とにかく勝ちたいんだ”という気持ちが一番強い人間なんじゃないかな。
僕もずっと見ているわけではないですが、侍(ジャパン)のメンバーとか、僕とも一緒に仕事をする人とかにいろいろリサーチをするんですけれども、誰よりも早くジャージを着て、誰よりも早くホテルでも食事して、(日常生活を)全て野球に置き換えてやっていると。
日本ハム時代も外出禁止でしたからね。栗山さんのOKがなければ、遠征先でも。だから、アメリカに行っても、あのニューヨークで4年間どこにも出かけたことがないと。
だから僕、大谷翔平の新真実が出るたびに、ずっと反省をしているんですよ。
プロに入って、俺はなんて(大谷選手とは)真逆なことを(やっていたんだ)! だから俺はアカンかったんや!(笑)
──大谷翔平選手みたいにストイックにやり続けていたら、残した数字も違った?
それはもう、ちょっとは成績が伸びているはずですよ。
僕はもう遊ぶことを第一に考えていた。「眠らない街、東京へ行ける!」「この遠征先は朝まで開いてる店ばっかりや!」とか、そんなことばかり思いながら(笑)。
──当時は豪快な選手も多くて、朝、お酒の匂いがするような?(笑)
もちろん! その方がかっこいいと思っていましたね。
あれは俺は馬鹿だったと、大谷を見ながら常に反省の日々ですよ。
──大谷選手は数字もすごいですが、あそこまでストイックに野球に打ち込まなきゃいけないんだ、ということを、少年野球の子供たちに見せてくれましたよね。
だから今、練習方法とかも真似をしているアマチュアの子が多いと聞きます。
逆に、あまりアメリカナイズされてほしくないなということも…日本の良いところを取り入れながらの方がね。
大谷翔平はブロッコリーを塩だけで(食べる)、とか言いますけれども、この歳になって、俺が真似をしてブロッコリーを食べれるようになりましたもん(笑)。あまり化学調味料を入れないで食べられるように。
だから今、アマチュアで、食育もすごいらしいです。
甲子園を観ていてもわかるように、筋肉がすごいでしょう? 僕らの時は細い選手がいっぱいいましたけど、(食事も含めて)今はものすごいトレーニングをしている。
特に、コロナ禍で、アマチュアでアピールできなかった選手はYouTubeを観て(練習している)。コーチの言うことよりYouTubeで情報がたくさん入ってくるんですよ。練習方法とか食事もそうです。
何か、情報が多過ぎてね。
──逆に情報が多過ぎると、その中から正しいものを選ぶ目を養うというのも難しいですよね。
それはもう、自己責任でしかなくなっていくでしょうね。
僕らの時は、「あの人が言ったから」と、人のせいにばかりしていましたから。
──やはりWBCというのはかなり大きい存在ですよね。
ものすごく大きいです。
──さらに、第1回大会で日本が勝ったということが大きかったですよね。
ただ、あの時のWBCというと、“日本が勝手にやっている”みたいな…アメリカはそんなにしゃかりきになっていなくて、メジャーリーグのすごい選手は出さない、みたいな(空気があった)。
あの時は僕もたっぷり取材させていただいて、イチローのバッティングピッチャーもさせていただきました。30分投げて命がけで勝負しましたよ。
──イチローさんはすごかったですか?
懸ける想いがすごかったですね。
忘れもしませんが、キャンプ回りで、「WBCに選ばれて“楽しみたい”というヤツがメンバーにいたら、僕は辞退します」というぐらい、気合が入っていましたね。「絶対、メジャーリーガーに日本の野球は負けない」と、彼は自負しながら言っていたけれど、キャンプでロッテに行くと、里崎(智也)やら西岡(剛)が、みんな「楽しみたい」って言うんですよ。
これはイチローに伝えたらヤバいなと思いながら…。(インタビュースペースに)来る人間みんな「楽しみたい」とか「ジータにサインもらおう」とか。
──そういう意味では、イチロー選手の想いと大谷選手の「憧れるのをやめましょう」という発言の想いは同じですよね。
そうです。ニュアンスは違いますけど、全くイチローと同じような想いですよね。
──この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。金村義明さんの心の支えになっている曲を教えてください。
松山千春さんの「大空と大地の中で」です。
僕は18年プロ野球でプレーさせていただいて、引退というのは名ばかりで、実質クビ寸前で自分から辞めたような感じだったんですが、その時に、本当に仕事がなくて息子3人抱えながら路頭に迷って、どうしようか…と思っていた時に、しょっちゅう聴きながら、歌いながら、涙しながら頑張ったのが、この大好きな松山千春さんの「大空と大地の中で」だったんです。
(松山さんは)もともと大好きでしたし、よくかわいがっていただきました。野球もものすごく詳しいですし、会った時にはお小遣いをくれますしね。「うまいもんでも食え」と(笑)。
今回お話を伺った金村義明さんのサイン入り色紙を抽選で1名の方にプレゼントします。ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!