木村拓哉 Flow supported by Spotify - TOKYO FM 80.0MHz - 木村拓哉

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2025年11月23日Flow 第三百八十二回目「拓哉キャプテン × 倍賞千恵子」Part3

今月のマンスリーゲストは、11月21日に公開された映画「TOKYOタクシー」で共演させていただいた、倍賞千恵子さんです。
今週もどんなトークになるのか? お楽しみに!


木村:今回の「TOKYOタクシー」という作品で、山田洋次監督91作目の最新作になるんですけども。「パリタクシー」っていうフランス映画を山田監督がご覧になって、「もうこれを東京版としてやろう」っていうことになった、っていう。

倍賞:そうですよね。「パリタクシー」が、こういう東京の捉え方になってびっくりしたわね。

木村:自分も、リメイクをするよっていう情報を聞いた時に、まず「パリタクシー」を観てみようと思って拝見したんですけど、「これを東京で? どうやるんだろう?」って思ったんです。

倍賞:そう。それで、私の役の高野すみれさんが柴又に住んでいた、って言うんで、「あれ?」って言ったら、帝釈天の門前から撮影が始まってさ。私、あれもびっくりした。あそこから始まるっていうのが。

木村:自分もその現場にはいさせてもらったんですけど。

倍賞:そうだよね。門前の方でね、あそこが初めて一緒のシーンだったのね。

木村:今回、「TOKYOタクシー」における、ちょっと印象に残った山田監督の言葉とかありました?

倍賞:私より木村くんの方があるでしょう。ある?

木村:共演者の方が、それこそ倍賞さんもそうだったんですけど。「いや、もっとこうだろう!?」とか、「何でそうなるんだよ。違うよ!」とか、たまに監督の“山田洋次監督スイッチ”がポンッて入ったその瞬間っていうのがあるんですけど、自分はあんまりなかったんですよね。

倍賞:後で山田さんが言ってた。「いい俳優さんって、こっちから見てると、自分が思った通りに動いてくれてるんだ」って。「じゃあテストやってみましょうか。本番行きましょうか」って言った時に、何も言う前に、監督として自分の中にある思いが、…浩二なら浩二への思いがあると、ふっと通して動いてくれた時に、「浩二がちゃんと自分が思ったようにすっと動いてくれて、気持ちよかった」って言ってた。

木村:聞いてねーよ、それ!

倍賞:(笑)。

木村:東映のスタジオの、今このブースにあるテーブルぐらいの大きさで、周りがもっと真っ暗で、照明のつっちーさんが作ってくれたサービスライトだけの、もう取り調べ室みたいな中で、倍賞さんも以前ワンちゃんと一緒に生活してた、っていうお話をされて。「木村くんちにもいるんでしょう?」ってなって、「はい、います。今はこういうヤツがいます」って言ってスマホで見せたら、「うわー。今度会いたいわ」って言ってくれて。「いや、でもな、山田監督の現場だしな。これはちょっと厳しいかな」と思ったんですけど。

倍賞:あれは感動したな。

木村:ポスター撮影をするっていう日に映画の撮影もあったんですけど、ワンシーンだけだったんですよ。あとはポスターの撮影で。で、ロケで、スタジオは使わないし。「今日しかない!」と思って、それでうちの1人に付き合ってもらって、「倍賞さんに会いに行こうか」って言って。もう全然意味わかってないんですけど、すげえ「へっへっ」って、「あれ? 笑ってる?」みたいな感じ。「じゃあ、倍賞さんが隣の部屋にいるから、倍賞さんに会いに行こう」って言って…。

倍賞:私、会いに行ったんだもん。

木村:来てくれたんですよね。

倍賞:そうだよ。正直言って、まさか本当に実現してくれると思ってなかったんだよね。

木村:本当ですか?

倍賞:うん。でも、「ああ、約束ちゃんと守ってくれる人なんだ」って、その時にとっても感動したの。それで行ったのよ。でも、あんまりその話をしちゃいけないのか、ってずっと思ってたんです。あの時は本当に感動したの。どうもありがとう。

木村:いやいや。だから、実はポスターを撮ってくれている繰上さんの斜め後ろぐらいのところに、うちのアムっていうヤツが「まだ終わらないの?」みたいな感じでずーっと見てて。

倍賞:そうそう、「まだですか? もういいんじゃないですか?」って感じで(笑)、パタパタパタパタって。

木村:で、「以上です。ありがとうございました」って終わって。で、犬が来てくれたんで、自分が抱きかかえたやつを「倍賞さんとこ行く?」って言ったら、なんかしっぽブンブンだったんで、そのまま倍賞さんに「はい」って言って渡したら…。そのタイミングで、山田監督にバレたんですよ。

倍賞:そうだね(笑)。

木村:「どうしたんだい、このワンちゃんは? どこのワンちゃんだい?」みたいな感じになって。そしたら倍賞さんが「これね、木村くんちの『ハムちゃん』っていって…」、「いや、『ハム』じゃないですよ、倍賞さん。『アム』です。『アムール』です」って言ったら、「あ、『ハム』じゃないの? 私てっきり『ハム』だと思ってた」って言って。

倍賞:ごめんなさい(笑)。

木村:いや、全然いいですけど。そしたら倍賞さんが山田監督に、「監督、このアムちゃんのお尻がすごいんですよ」って説明をしたら、山田監督が「え?」って言ってお尻を触りに来て、触った瞬間に「おお〜〜」って言って(笑)。一瞬にして落ちてましたね(笑)。

倍賞:うん。可愛いよな〜(笑)。アムにまた会いたい。

木村:本当ですか? ぜひ、また会ってください。
今、スタッフの方から聞いてきましたけど、「倍賞さんが山田監督に怒られることってあったんですか?」って。“山田監督スイッチ”が入った時は、結構ロケ先でもエグかったですよね。

倍賞:うん。

木村:言問橋のふもととかでも、「えっ?」ていう。その間、「ずるいなぁ」と思ったんですけど、カメラマンの近森さんも、プロデューサーの皆も、松竹のスタッフも、「あ、今“監督スイッチ”入った」みたいな感じで、ちょっと違うとこ見てんの(笑)。皆、「早く収まんないかな〜」みたいな感じでいて。「違うよ! 本当にその時はもっと怖くて熱かったんだよ!」っていう感じで「そうじゃないよ! あのね、さくらはね…」、「いや、監督。さくらではなく、すみれです」って言うと、監督もばつが悪そうに「あ〜、だからそう、そうだよ」みたいな(笑)。

倍賞:ものすごく怒られたって記憶がある。

木村:でも、その時に倍賞さんが、「はい」って言って。パーソナルなお話をされる時は「監督」っていうふうには仰らず、普通にお話をされてた印象があったんですけど、お芝居上の、撮影現場での会話ってなった時は、「監督!」って倍賞さんも仰ってたし。で、「すみれさんね…」、「倍賞くんね、そこはね…」って監督が仰った時なんかは、「はい、わかりました」っていう感じで。
シートベルトをしちゃうと、なかなか運転席から出れないんで、運転席から、そのコミュニケーションをずっと耳にしてましたね。

倍賞:衣装合わせの時から、挑戦的な色とか、挑戦的なマニキュアとか、挑戦的な頭とか(笑)、っていう「挑戦的、挑戦的」ってずっと頭の中で自分に言い聞かせながらやってて。その「挑戦的」が、色とか何とかだったけども、でもそうでもない、っていうところにたどり着いたような気がするのね。

木村:でも、『高野すみれさん』っていう人の人生が、もうそのものですからね。

倍賞:それで、教会に行ったじゃん。あの時に、山田さんがアドリブで、「振り返りながら『なんまんだぶ』って言って」って(指示されて)、私、「そうですか?」って思わず吹いちゃってさ(笑)。それで「なるほどな。面白いな」と思って、「なんまんだぶ…、あ、 間違えちゃった」って(笑)。

木村:教会で、ですよ。一緒にいる方がヒヤヒヤするわ、っていうことを「ちょっとやってくれないか?」みたいな感じで、急に言い出すんですよ。

倍賞:そう(笑)。そういうアドリブが2〜3ヶ所あって、やってるうちにとってもそれが面白いなって思えて。私の中で、すみれさんがまた違った角度に調整されてきちゃってね(笑)。
観た方が、「そこに寅さんを見ました」っていう人がいて、面白い見方をするなって。で、「そういうセリフを言ったらどうなんだろう?」ってもう1回自分で見直してみて、「なるほどな。『寅さんいるような』って、そう言うよな」って(笑)。もっと意識してたら、今度はああいうのはやりすぎちゃうよねって。
(映画のシーンの)嘘をつくところで、「面白いっていうことは、自分たちが一生懸命やったことが面白いんだ」って(山田監督に)言われたじゃない。

木村:はい、言われましたね。
「あなた、今踏切の一時停止を無視したよね?」って警察官に止められるシーンがあるんですけど、今からそれを取り繕うシーンを撮影する、ってなった時に、ちょっと僕と倍賞さんの間で、「こうやったらどうですかね?」みたいな感じで勝手に作戦会議をして。
で、僕がやらせてもらった浩二は、何にも対応できなくて、「やっちまった。ゴールド免許これで終わりだ」みたいな感じだったんですけど、すみれさんが急遽助け舟を出してくれて、そこを難なく回避する、っていうシーンを撮るっていう前に、「俺が変なふりしちゃって、バリバリの方言で言ったりとかしたら、どうなるんですかね?」って。そしたら倍賞さん、すぐにそこでできちゃうから、「それやってみっか?」みたいな感じで。

倍賞:そう。「やっぱり2人でやったらまずいべ。やっぱし監督さ聞いて見ねえと」って、それで聞きにいったのね。

木村:そしたら監督が、斜め下を見たままずーっと黙ってて、「あ、これ駄目だな」と思ったら、直後に、「人っていうのはね。一生懸命やるから、それが伝わって面白いんだよね。そういう方がいいと思うんだな」って言われて、俺も倍賞さんも、2人でチーン…ってなって(笑)。

倍賞:そうそう(笑)。

木村:「なかったことにしましょう」みたいな感じで、そのままセットに入っていって。

倍賞:一生懸命やったの。あれ、もうちょっとやってもよかったのかな、なんて。「へ?」って聞いちゃったよ、私(笑)。

木村:監督が言ってたんですか?

倍賞:そう。だから「抑えて抑えて」って言うから、一生懸命「私は心臓が悪いがら、ここんとこさ、ステントが入ってんのよ!」って言ったのよ(笑)。

木村:で、「浩ちゃん!」っていうのも、本当に田舎っぽく…(笑)。「音が全然違うパターンでやってみませんか?」みたいな。
いや、でもあれは監督に怒られましたね。

倍賞:でも、一生懸命やりました。
あそこはやってて楽しかったけども。山田さんの基本の人の見方とか、表現したいものとか、そういうものが、やっぱりそういうことなんだよね、と思った。

木村:本当にカメラも何にも回ってない、カメラマンの近森さんが覗いてもいないような時に、「ご飯食べた?」とか、「何食べたの?」、「いや、俺は店屋物をとらせていただいて、それ食べました」とか、倍賞さんと普通のお話をして、「美味しかった?」、「うまかったですね」っていう、本当に普通のテンションでいる時の2人を、車の外から監督が見てて、「今のね、今のがいいね」って言って、「よ〜い…、よ〜い…」って、急にもう始まるんですか? っていう(笑)。

倍賞:そうそう(笑)。

木村:そういうのが多かったですもんね。いっぱいありました。どういう作品になっているかは、ぜひぜひ、皆さん受け取ってほしいと思います。

[OA曲]
なし

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