今週は、私たち日本人が、古くから生活に取り入れて来た森の恵み・・・「炭」のお話です。
今回は90年以上続く炭を扱うお店、京都市中京区「釜座通」にある「今井燃料」というお店に伺いました。
そもそも釜座通は、鋳物職人の工房がたくさんあった通りだと言われています。
そんな釜座通で、古くから燃料を扱っているのが「今井燃料」。
燃料、といっても灯油やガソリンではなく、「炭」を専門に扱っているお店です。
ご主人の今井健二さんにお話を伺いました。

◆今井燃料
大正七年に創業しているので、96〜97年になります。私の祖父が若いときに丹波にいたんですが、そこから商売しにこちらに出てきて、私は三代目です。いま扱っているのは主に薪ですね。炭ももちろんあります。
以前は、いまみたいにいろんなところの炭を仕入れていたわけではありません。昔は京都でもたくさん炭をつくっていたんですが、いまはほとんどつくっていません。需要もいまよりはるかに多かったですね。普段の暖房とか、もちろん煮炊きも全部薪でしたから、需要はたくさんありました。それから染屋さん。染料を沸かして色を付けるんですが、その燃料としての需要もありました。染屋さんはこのへんはかなり多かったので、たくさん売っていたと思いますね。
それがだんだんと石油やプロパンガスに替わっていって、薪や炭は一時は極端に減ってしまいました。それで炭の産地が大変だという認識があったので、役に立ちたいなという思いがあったのと、化石燃料をやめようと思ったんです。炭の専門店になったのは6〜7年前です。


炭は、元々森の中にあった木。木には、空気中のCO2が固められています。だから炭を燃やしても、化石燃料のように空気中のCO2を増やすことにならない「カーボンニュートラル」と言われる概念です。
環境問題に関心の強かった今井健二さんは、灯油などの販売をやめ、炭だけを扱うお店に ある意味「原点回帰」。化石燃料にはない、炭の魅力を知ってもらおうとご商売を続けています。

◆手間を楽しむ
炭は、たとえば暖房でしたら、手をかざすと手の平から血管を通って体が温まってくるわけです。急には温まったり、ものが簡単に焼けたりということはないんですが、そのプロセスを含めた時間のゆとりを提供したいというのがあります。火鉢で炭をじっと見ていても飽きないんですよね。そういう時って、頭のなかを空っぽにできて、リフレッシュできると思ってます。それに炭火は遠赤外線や近赤外線など、いろんなものが出るんですが、料理がおいしくなるというのはみなさんご承知のとおりなんです。
やはり邪魔臭いのは邪魔臭いんですよ、正直言って。たとえば炭に火が移るまでには20分くらいかかるんですよね。すぐには自分の思い通りにならないというのがあるんですが、それまでの間のプロセスを楽しむ。
この炭は黒炭といって、火力的には備長炭よりかなり弱いんですが、その分お餅はすごくおいしく焼けます。お正月ごろのお餅とか、たとえばじっと見ているわけですから、だんだん膨らんでくるのが見えますよね。で、ぶわっと膨らんでくる瞬間をじっと見ているわけですから、見ていても面白いですし、焦げ目の香ばしさが全然ちがうと思います。だからちょっと乾燥した香ばしさじゃなくて、パリっとした、よくおかきなんか焼きますが、それに近い感覚なんでしょうです。そういう香ばしいところが美味しいと思いますね。砂糖醤油をちょっとお湯でうすめたもので食べるんですが、それが僕はすごく好きで。正月に必ず食べ過ぎてしまうんでちょっと困ってるんですけど(笑)


炭を使った日本の古くからの暖房器具といえば、「火鉢」ですが、この火鉢には、体を温めるだけではない、別の効果もあると今井さんは話します。

◆火をみんなで囲む
やはり火があるとみんなが近くによってくるんですよ。それでみんなで手をかざして、周りを囲んでお餅を見てるとか、そういうコミュニケーションの場にもなれると思いますね。そういうときは普段しゃべらないこともしゃべったりするじゃないですか。僕らは小さい頃はそういう環境だったので、冬の間は火鉢に集まって、そういう団欒はありましたね。そこで僕の場合は、三世代同居でしたから、おじいさんから色んな面白い昔の話を聞いたりする場でもあったし、そういうコミュニケーションのツールとしてはすごくいいものだと思います。
いまは簡単にボタンを押したらすぐに料理ができてきて、すぐ食べられてありがたみがなかなかわかりませんが、長いことかかるんだなというのを実際にみて、待っている間にいろんな話をしたり、そういうコミュニケーションのいいツールにはなると思いますね。


今井さんも子どもの頃は火鉢で暖まっていたそう。火鉢をまたいでオマタを温める「また火鉢」という悪ふざけをして、親に怒られたと笑って話してました。
当時は、ご飯を炊くのは薪、焼きものは七輪。こたつは炭の熱を使ったもの。生活に必要なエネルギーはほとんど、薪や炭だったと言います。
そして現在。かつての炭のある暮らしに魅力を感じる若い世代が、増えているんです。

◆スローライフとしての炭
火鉢を使う若い人がすごく増えましたね。お年寄りの方は昔を懐かしんで使われる方もいらっしゃいますが、やっぱり邪魔臭いというイメージを持ってる方が多いんです。若い方は、メインが30〜40代くらいですが、知らなかったけれどもやってみたいという方がたくさんいらっしゃいますね。火鉢に関してはここ3〜4年位で急に増えたように思います。
まあスローライフですよね。その入門編として、火鉢が注目されているのかなと思ってます。それと単純に炭で焼いたらおいしいので、備長炭なんかはそれこそ若い方のほうが多いですね。ほとんどそうです。
また、京都には京町家がたくさんあるので、それに合わせて炭を使いたいという方もたくさんいらっしゃると思います。



今井燃料のご主人、今井健二さんのお話、いかがだったでしょうか。
若い世代で炭のある生活を楽しむ人が増えている、というお話もありましたが、炭を扱うお店は減っています。かつて京都には400軒ちかい燃料店があったのですが、今では70店程度。
炭専門のお店は今井さんのお店も含め数軒にとどまるということです。

今井燃料では、炭の情報発信、ウェブでの販売も行っています。ぜひチェックしてみてください。
http://www.i-sumi.com/

来週も、今井燃料 今井さんのお話をお届けします。

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Yellow / Coldplay
・Happy Pills / Norah Jones
今週は、先週に引き続き、アスファルトの割れ目、電柱の根本、ブロック塀の穴、石垣など、色んな「スキマ」から生えている植物たちをめぐるお話です。
町を歩く時、ちょっと下を向いて歩くだけで目に留まる、スキマの植物たち。実際、どんなところに、どのくらい存在するものなのか。というわけで、東京大学大学院教授で、植物学者の塚谷裕一さんに職場である、文京区本郷の東京大学の周りを案内していただきました。

◆東京の街の中にもたくさんのスキマの植物が
これはセイヨウタンポポです。冬越しのために縮まっていますね。ヒメジョオンとハルジオンと両方あるみたいですし、4種類はこの一角にありますね。ほかにもオニタビラコがいて、オランダミミナグサがいて、これは和名がちゃんとついていないのですが、イヌノフグリっていうのかな、帰化植物です。で、カタバミがあって、ここにもうひとつシダ植物のイノモトソウが生えていますね。これはホトケノザ、ツルソバはスキマをこじ開けて無理やりもぐりこんでいますね。

これはイヌビワ、さっきあったのはこれがこれが寒くていじけてたやつですかね。
やっぱりちょっとした距離で顔ぶれが変わりますね。向こうとだいぶ違うでしょ?一見、外から見るとわかりませんが、たとえばこの石垣、この部分が湿っていますよね。そういうのにもよるんじゃないですかね。


塚谷先生と一緒に、たった50mくらい歩くだけで、様々なスキマの植物が見つかりました。
石垣のスキマをよーくみると、日が当たりやすい場所、雨水がたまりやすく湿った場所、風が当たりやすそうな場所などがあります。スキマの植物が生えている所には、それ相応の理由があることがあるんですね。

ところで、スキマの植物を私たちは「雑草」と考えがちですが、これを「雑草」と呼ぶのは、どうもスキマの植物たちに失礼にあたるようです。

◆スキマの植物は雑草ではない
僕は理学系なので、気楽に雑草と言ってしまうんですが、農学系の方々に聞いてみると、「雑草」というのは、本来はそういう使い方をするのは間違いだそうです。雑草は農作物の植物と競争して害をもたらすものが雑草といいます。そういう意味では、スキマの植物はそういうことをしていないので、雑草にはあたらないですね。あと街でよくみるスキマの植物には、家庭で育てている園芸植物が逃げ出したケースも結構あるので、その両方の意味で、雑草というのは本当は間違い。本当に古来から日本でその辺に生えていたのもいるので、まあひとことで言うのは難しい。そういう意味でスキマの植物とひっくるめるしかないんです。


それは、大変失礼いたしましたという感じ?
これからは、道端の植物たちを雑草と呼ばず、「スキマの植物」と呼んであげましょう。とはいえ、アスファルトを突き破ったりする、スキマの植物の力強さを「雑草魂」なんていって、ちょっと尊敬しているんですけどね。。。
で、その、スキマの植物たちの、アスファルトを突き破る力。これは人間と違う、植物ならではの特徴が関係しているんだそうです。

◆アスファルトを押しのけるスキマの植物
コンクリートとアスファルトだと植物はアスファルトのほうが得意です。コンクリートのほうは、すでにヒビが入っているところを押しのけることはできますが、なにもないところに亀裂をつくるのはさすがに無理です。コンクリートに比べてアスファルトは非常に硬い飴みたいなものです。道路を舗装したてで、まだ熱いときはドロドロの状態で、冷えると硬くなるわけです。ああいったネバりっこいものを壊すときには、ドリルなどの強い力をいきなりかけてもなかなか壊れない。そのかわり、弱い力でもじっくりかけていくと、ゆっくり押されただけ動く。人間はそんなに辛抱強く待っていられないので、人間にとっては機械で壊すしかないですが、植物は元々ゆっくりしか動かないので、動いた分ちゃんとアスファルトが動いてくれる。ですからよく駐車場にアスファルトをひいてしばらくすると草だらけになるというのはそれですね。



今回、塚谷さんと一緒に散策した、東京大学周辺の石垣には、いわゆる「スミレ」もありました。取材したのはまだ1月下旬ということで、もちろん花はつけていませんでしたが、このスミレって、すごく気まぐれなスキマ植物だということを教えてもらいました。

◆気まぐれなスミレ
スミレは割りとスキマが好きみたいで、駐車場のアスファルトの割れ目などでよくみかけます。あんな過酷な条件で生えているんだから、大事に鉢に植えたら喜ぶだろうと思ったらそうでもなかったりします。日本にスミレってすごくたくさんいるんです。世界的にもスミレの種類が多い国で、園芸価値のあるものもたくさんあるんですが、その割に園芸化されていません。なぜかというと、生えているのをとってきて植えると、植えた年は咲くんですが、次からだんだんいやがって、どこかへ行ってしまうことが多いんですよ。野草を育てるのが好きな人達のあいだでよく言われるのが、スミレを育てたかったら、一鉢、庭の真ん中あたりに置いておく。そうして種が飛んだり、アリが種を運んでいったいりして、自分が好きなところで生えたのを、そこで育てるのがいいといいます。なにか選り好みがあるんですけど、なにが好きなのかよくわからない。だから勝手に生えてくるのを待つほうがいいんです。


なるほど。なんだか人間にはわからない好みがあるんですね。
植物学者の塚谷さん、なにか植物をみていて感じることを聞いてみました。

◆スキマの植物は結構幸せに暮らしている
僕は元々植物が専門なんで、植物の側を基準に考えると、人間のほうがむしろ変わった生き方をしているなと思っています(笑)。植物は光を感じることはできますが、人間のように焦点を合わせるということができるわけじゃないので、自分にあたっている光しかわからない。ですからとても不便な生き物です。そう考えると人間は自由なのになにをしているんだろうなと思ったりします。
スキマの植物は人間からみると閉じ込められてるみたいに見えますが、植物の側からみると回りには邪魔者もいませんし、気楽に生きています。周りに仲間がいっぱいいるところをみると繁殖にも不自由してないみたいですしね。



塚谷裕一さんのお話しいかがだったでしょうか。
ちなみに、こうしたスキマの賞物たち、今の時期はまだ花がなく葉っぱしかありません。花が咲かないとその正体は分かりにくいので、普段の通勤・通学路で気になる植物を見つけたら、そこを気にして毎日チェックしてみると良いそうです。
スキマの植物たちは、桜が咲くころは一斉に色んな花が咲くとのこと。春になると、あーここにこんな植物が!と気づくことになるそうです。

そんなスキマの植物たちの楽しさがわかる本、塚谷教授「スキマの植物図鑑」は中公新書から出ています。


今回のお話しはポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください。


【今週の番組内でのオンエア曲】
・The A Team / Ed Sheeran
・明日天気になれ / ハナレグミ
今週は、私たちが普段 歩いていてあまり気に留めることのない、街中のちょっとしたところに存在する、小さな小さな森のお話です。
その名も、スキマ植物。
なんとなく、あ、あれのことか・・・と感じた方もいるのではないでしょうか。
今日はこの「スキマ植物」を追いかけ続ける植物学者の方のインタビュー、お届けします。
お話を伺ったのは、東京大学 大学院 教授で 植物学者の塚谷裕一さん。
塚谷さんは先日、こんな本を出されています。
タイトルが『スキマの植物図鑑』。

この本は、アスファルトの割れ目、電柱の根本、ブロック塀の穴、石垣など、街中にある色んな「スキマ」から生えている植物だけを紹介した写真図鑑なんです。
あまりジャンルにこだわらず、植物学全般、興味のあるものを研究しているという塚谷さん。なぜまた、「スキマの植物」に目をつけたのでしょう。

◆スキマに生えている植物
小さい時から植物を見て歩くのが好きだったんですけども、テーマとして狙うことにしたのは、だいぶ前に「ど根性大根」というのが話題になったときがきっかけですね。
あれは大根だと確かに珍しいけれども、その後「ど根性」シリーズってなんでもかんでも出てきたんですが、多分みんなが感違いしています。ああいうとこに生えている植物は、「逆境に耐えて我慢と根性で〜」というトーンで語られているんですが、寧ろ隙間にいると植物にとってはかえって良いことがいっぱいあるんです。
そういうところを好んでるやつもいっぱいいるし、いろんな植物が隙間に入りたがっているんです。だからそれを写真でこんなにいますよっていうのを見せると、みんなの見方変わるんじゃないかなって思ったのが、ひとつの狙いですね。
もちろん、やむを得ずスキマに生えているのもいますが、人間が普通に思うほどには困ったところではない。かえって「めっけもの」としてそこにいる。
人間の場合はある程度周りに仲間がいないと暮らしていくのは難しいわけですけども、植物は多くの場合、仲間がいるとかえって窮屈なわけです。というのは、食べ物にしてるのは自分で光合成で作ってる糖分なので、光が当たらないと何も始まらないわけです。
人間の場合近くに誰かがいたからって食べ物の取り分が減るかって言うと、まあ少しは減りますけど、そんなに影響しない。だけど植物の場合は隣に誰かいるとその分自分が影になってしまう可能性が強いわけです。だからその分植物って独り身でいた方がよっぽど生活は楽なわけですよね。
そうすると隙間って場所が狭いので、横に余計な人がくることはあまりない。そういう意味ではとっても楽なはずなわけです。


つまり、私たちが勝手に、「あんな狭いところから芽を出して、すごいな〜。たくましいなー」なんて思っている、あのスキマ植物は、 実は好んであの場所を選んでいるということなんですね。
そんな、アスファルトの割れ目やブロック塀から芽を出す「スキマの植物」は、本当に多種多様なんだそう。例えば、どんなものがあるのでしょう。
そして彼らはいったい、どこからどうやってスキマに入り込んだのでしょうか。

◆都会のまんなかのスキマにも
街中でどこ行っても見られるっていうのだと、ひとつはオニタビラコですね。小さな黄色い花が咲きます。花のサイズが小さいんで、子どもだと目線が低いので、小さくても割とそれなりに存在感を認めると思うんですけど、大人になってくると背が高くなることもあって、あんまり興味を持たなくなるかもしれませんね。
花が咲くとすぐ綿毛を作って種を飛ばすのでその種でいろんなところに散らばっています。他にはツメクサですとか、意外に都会の真ん中でもあるのはスミレの仲間。
都心になればなるほど、あまり珍しいものがないかというと、そんなことなくて、例えば銀座の有楽町の辺りなんかでも、こんなものが生えてるのかっていう珍しいものが生えてることがよくあります。思いもかけないものが隙間に生えてることがよくあります。
ケースバイケースですけども、オニタビラコみたいに風で種が飛んできて、たまたま隙間に着地したっていうのがあります。それから種が細かいやつですと、雨が降った時にどこかから流れてきて、ちょうど隙間に来たものもあります。スミレだとかの仲間は、種に餌がついていて、それを蟻が自分の巣の前まで持ってきて、種と餌のところ切り離して、種はいらないから捨てます。そうすると、ちょうど蟻の巣がある隙間に芽が生えるっていうのもあります。
また、街中でときどきあるのは、宅地を作ったり道路を作っていくうちにだんだん狭くなっていって、最後に隙間に取り残されたってやつもたまにありますね。
あとはアスファルトで固められちゃっても根が生きてれば割と植物がアスファルトぐらいだったら割ってしまうので自分で隙間を作ってって出来たっていうケースもあります。


植物ってアスファルトを割ることができるんですね!
また、いつのまにか道端のスキマに植物が芽を出す理由は、その「種」が持つ、すごい能力が関係しています。

◆チャンスが来るまでじっと待つ
大概の植物は隙間に入るときは種でやってくるんですけど辿りつけなかった種は死んでしまうのもありますし、寿命がすごい長くてチャンスが来るまでどっかでじっとしてるってケースもあります。
例えば洪水などがあったときに上手く流れて隙間まで辿り着くとか、道路は補修のため、よく工事をしますよね。植物によっては光が当たらないと芽が出せないっていう植物がいて、種は生きてるんだけど上がアスファルトで真っ暗になってると芽が出ないってやつも、掘り返してくれれば芽が出るってやつもあるので、そういった工事にチャンスを得るやつもいますよね。
朝顔なんかは、よく小学校の時種蒔きますが、蒔きそびれて2〜3年たってから蒔いても全然平気でしょう。ああいう数年大丈夫なやつもいますし、よく街路樹に植えてある、柳の種みたいに数時間しか寿命がないやつもあります。


以前、東京白金台の森を取材した時に、そんな話に触れましたが、「シードバンク」というんですよね。森の木の種は、土に落ちたあと、実は何十年も芽を出さず生きていられる。ある日、隣の大きな木が枯れて倒れると、そこから光が差し込んで、その光を浴びた種は、何十年越しに芽を出すことができる・・・。
まさに、スキマ植物の中にも、同じような形で芽を出したものがいるというわけなんですね。
さて、今回取材したのは、塚谷先生の職場、東京大学本郷キャンパス。歴史的な建物なので、石畳や石垣もたくさん残っています。
というわけで、東大の周りにある、スキマの植物たちを案内して頂きました!

◆踏まれにくいところから芽を出す
石畳の隙間のところにチドメグサというセリ科の植物ですけど、ツルになって狭いところを這うのが得意な植物です。それがここに生えてますね。

元々ここら辺全部繋がってたのがだんだん独立してきてるんでしょうね。春から秋の間の暖かいときに、わーってこの辺りを、この3倍くらいの大きさの葉っぱになってこの隙間をはみ出してくると思いますね。
ちょうどここが出っ張っているので、そんなにひどく踏まれなくて済みますよね。
もちろん、スキマの植物も踏まれるのはあんまり好きじゃないです。踏まれるのに弱いのと強いのはいます。オオバコなんかは踏まれてもあんまり強いダメージは受けないですけども、やわらかい植物だとやっぱり踏まれた途端潰れちゃうのでそういうのは踏まれないような隙間の方にしか出てこないですよね。


塚谷さんのお話いかがだったでしょうか。
来週も引き続き、スキマの植物のお話をお届けします。

【今週の番組内でのオンエア曲】
・タイム・トラベル / スピッツ
・Peruna / Akeboshi

今週は、ドキュメンタリー映画「うみやまあひだ」の宮澤正明監督のインタビュー最終回です。
伊勢神宮の式年遷宮をきっかけに日本人と鎮守の森、森と人との共存について描いたこの映画では、日本の森・自然を語るうえで欠かせないキーパーソンがたくさん登場しています。
例えば、長年、森を守る活動を続け、国連から「フォレストヒーローズ」として表彰された、この方も、映画のインタビューに答えているんです。

◆森は海の恋人
畠山重篤さんは気仙沼の牡蠣の養殖の漁師の方なんですけども、この方はすごく有名な方です。畠山さんは漁師ですが植林をします。上流で植林をすることで、森が再生されて、さらに牡蠣の養殖を再生させたという方なんです。
30年くらい前に、ダムを作ったことにより森が荒れ、海も荒れたらしいんですよね。それで、これはどうしたらいいんだろうってことで、フランスのリアス式海岸があるとこまでわざわざ勉強しに行ったり、海洋生物の研究をまずされて、「だからこそ森が大切なんだ。」と気づいたそうです。畠山さんの言葉で心に残ったのは、「海の中にも森があるんだ」っていうこと。そういう考え方を持てば、近隣の人たちはもっと森を大切にするだろうということなんですね。
伊勢神宮もそうですけど、やっぱりきれいな山があって美しい森があったら、きれいな栄養分を持った川が流れて田畑を作り、そのミネラル豊富な水が川を流れていけばすごく豊かな漁場が生まれる。
そういう循環再生というのを実践されている方です。陰陽のように山の森と海の森っていうのはいつも表裏一体なんだよってことを東北でやっていらっしゃったんですよね。
だからそういう部分が日本人のDNAにあるんだなっていうのが、すごく嬉しかったし驚きましたよね。
漁師の方が大漁旗を山の上に立てて植林をするんですよ。そういうことを24年も積み重ね、それをまた全国に広げる運動をされているので、すごい立派だなって思いますね。
畠山さんがおっしゃったように、日本って新幹線とか道路で横の繋がりはできても、山や川を通じた縦の繋がりは寸断されちゃってるんで、そういうものを見つめ直す日本の社会がこれから大切なんじゃないかなっていうことをおっしゃってましたね。


NPO法人「森は海の恋人」の理事長・畠山重篤さんが、映画で語った言葉、「海にも、鎮守の海がある」。とても印象的ですね。
そして映画では、建築家・隈健吾さんと並んで、世界で活躍する、この方も森について語っています。

◆北野武さん
北野武さんは、元々伊勢神宮にはすごい精通されていて、他の方々とはまた違う捉え方をしています。伊勢神宮をもうちょっと宇宙的な感覚とか概念という部分で、例えば伊勢神宮はなんであそこの場所にあるんだと考えたときに、あの森がもう既に伊勢神宮が鎮座するようにデザインされてたっておっしゃってるんですよ。人と自然と神と宇宙みたいな話をされてたのですごく楽しかったですね。量子力学と神って意外と近いんじゃないかとかね。北野さん独特の考え方とか感じ方があったんですけども、それは非常に興味がありましたね。


北野武さんって、量子力学とか、物理学とか、宇宙論もすごく勉強している方です。「我々は宇宙の一部であって、もし死んでしまっても、意識はどこかに残るかも知れないし、波動で残るのかもわかんない」なんて独特の宇宙観・生命観のお話をしていました。

宮澤正明さん、本業はカメラマンです。この映画を撮影する前は、伊勢神宮の式年遷宮を写真に収め奉納する、奉納写真家として活動していました。
もちろん、普段は人が立ち入れない、伊勢神宮の深い森の中にも、何度も足を踏み入れています。
そんな宮澤さんに、写真家として、伊勢の鎮守の森で見た忘れられない景色を教えていただきました。

◆生命を育む森からのメッセージ
伊勢の森の奥、一番頂上に剣岳っていう峠がありまして、そこから見る森と朝日の関係がものすごいきれいですね。深い森の中、東の方から太陽が昇ってくるときがすごいきれいでしたね。剣岳って剣みたいな岩場があるんですよ。そこに登って撮るんですけれども、伊勢の森の全貌が見えるんです。
朝、こぼれるように森から太陽がバーッと来ます。光が溢れるっていう感じですね。ミスト状態みたいな感じです。
やっぱり伊勢神宮があれだけ広い森を後ろに持っているっていうのは、そこに森とか自然、太陽が出てくる位置なんかもすごくバランスよくデザインされていて、その導かれたっていうのかな、そういう感じはすごくしますよね。人間と自然と森とが生きていくというバランスと、自然に共存してるっていうんですかね、伊勢はね。
ひとつひとつがものすごく時間がかかることではあるけれども、でもその一瞬一瞬をきちんと大切にしなきゃいけない。
伊勢神宮で何を僕はこの10年感じたのかなっていうのをよく最近考えてるんですけども、写真の上では10年間、今でも変わらない現代に生きる神話っていうのをテーマに撮ってきたんですけども、それだけではない、なにか森からのメッセージというんですかね、生命を育む森からのメッセージというものを何か表現したかったのかな。
写真では表現しきれなった思いが表現できたことが非常にありがたかったし、恵まれてたなっていうふうに思いますね。


3回にわたってお届けした宮澤正明さんのお話いかがだったでしょうか。
映画『うみやまあひだ』は1月31日より、三重県明和109シネマズを皮切りに、全国劇場公開がスタートです。
詳しくは『うみやまあひだ』の公式ホームページをご覧ください。
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