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画像
DISC
00:00:00
from
『everyday is a symphony』
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これは簡単に言うと "僕らの日常と音楽を結びつけるもの"。難しく言うと、この時代を "編集" という手法で生き抜いていくためのヒントが詰まった作品です。

僕は SCHOOL OF LOCK! というラジオと向き合うとき、いつも、生徒みんなの電話の声と音楽の間にある「境界線」みたいなものをどうやったら取り払えるか、と考えています (とは言っても、そんなものは僕の心の中だけに存在しているのですが) 。ピアノもドラムも歌声も、君の声もそう。音の世界では全てがおんなじで、イメージも現実も簡単に乗り降りできるから、何がほんとうで何がほんとうじゃないのか解らなくなる。つまりそれは、めんどくさい重力から開放されるってこと。

このアルバムに詰まってる世界は、誰かの会話や海の波、鳥のさえずり、温泉の熱湯、卒業式の校長先生が、いっけん雑に (実はとんでもなく丁寧に) 切り刻まれ、入れ換えられ、編集されていています。例えば「Tokyo」という曲では、駅のホームで流れるチャイムの音が、いつのまにかイントロのフレーズになって、閉まるドアがリズムを刻み出す。電車はそのまま発車して、音楽と並走しながら窓の景色をゆっくりと変えていく。外を見つめる顔が窓ガラスに映ったとき、ふと自分の気持ちに気づく───そんな作品です。

おすすめの聴き方は、君がいつも乗っている電車の中で「Tokyo」を聴いてみたり、雨の日に傘を差しながら「温泉」という曲で歩いてみたり。いつもの景色とこの音楽が混ざる感覚の面白さに、自分の毎日って意外とドラマチックかも!って思えたりします。そして何と言っても「00:00:00」という曲が、とにかくすごいです。117に電話するとずっと流れる時報 (=時間を音として確認できるもの) をもとに、メロディやことばが重なってきて、時代や世界を飛び回り、最後はすべてを繋ぐ壮大なラブストーリーになっていきます (ショート・バージョンがYouTubeで聞けます) 。

音楽や音っていうものが何なのかを考えるキッカケになるアルバムなので、ラジオの仕事に興味があるひとには、ぜひ聴いてもらいたいです。そして、これだけ勧めておいてなんですが、いつの日か音楽を持たずに、ヘッドホンを外して街に出てみてください。そのとき初めて、このアルバムのメッセージが聴こえてくるはずです。アーチスト名は□□□と書いて "くちろろ" と読みます。


COMIC
「さよならもいわずに」 上野顕太郎
ずしんとくる。ギャグ漫画家の上野顕太郎さんが奥さんを亡くされたことを留めた漫画作品。ひとりの男性が愛する女性を、ある日、突然、失ったことについてが描かれています。

なにか大切なものがあって、それを大切にしたくて日々を過ごし、そしていつの日か、それを誰かに伝えなければならないとしたら、僕はそのことを、どれだけ伝えることができるだろうか。

毎日を生きていることに、ひとつ意味を持たせるとしたら、愛するひとがいたことを、もしもそのひとがこの世界からいなくなってしまったとしても、一分一秒でも長く、伝えていくことなのかもしれない。それは直接的に誰かに伝える、ということではなくて、そのひとのことを想いながら生きていく、ということも含めて。

漫画家である作者の上野さんは、漫画家だからこそ、その業を注ぎ込んで、この作品を描いたのだと思います。表紙カバーのデザインの素晴らしさ含め、その表現の業のすべてに、そしてこの作品を描ききったという事実に、ものすごく励まされました。


BOOK
「わが星」 柴幸男
この本の作者は舞台の世界で活躍する、劇作家・演出家の柴幸男くん。彼はカラオケでもラップを歌うほどの大のHIP HOP好きで、ライブ会場で何回かいっしょになったことがありますが、作品には音楽的とも言える言葉遊びがちりばめられ、この「わが星」は "ブレイクビーツ・ミュージカル" とも評されました。

この作品を紹介するにあたって忘れてはならないのが、僕がおすすめする音楽として紹介させてもらった、□□□ (クチロロ) のアルバム『everyday is a symphony』に収録されている「00:00:00」という楽曲です。もともと「わが星」は、2009年の秋に上演された "舞台作品" で、そのとき全編にわたって使われていた音楽が「00:00:00」でした。柴幸男くんは「わが星は、この曲の部品を借り受けて、総動員して作った作品です。」と言うほど作品に影響を受け、「わが星」と「00:00:00」は、まるで "双子" のような深い関係にあります。

そして、その舞台「わが星」の、いわば台本のようなものが、この本です。文字のレイアウトも独特です。わが星の特設サイトでは、パソコンで冒頭部分を読むことができます。しかも舞台公演の音声&音楽付き!
http://www.wagahoshi.com/text-mode/

ひとつの星が生まれ、輝きを放ち、ともだちの星と出会って、じぶんの知らない場所に光が届き、そして最後はその輝きが消滅する── そんな星の一生が、団地に住む家族に重ねて描かれています。

僕たちはずっと生きていられるわけではなくて、あのひとだってずっと生きていられるわけではないから、だとしたら、あのひとにまだ伝えられてないことがあって、それは、一生、伝えられないままになってしまうのか。そんなことの答えは、ほんとはずっと前から知っていたけど、でも真剣に考えたことがなくて、いままで僕は僕を、過去の記憶に、何度か置き去りにしてしまった。この作品と出会って、そんなことを考えました。

ちなみに、舞台の『わが星』は、再演が決まっていて、2011年4月から全国 TOURがあります。東京のほか、三重県や名古屋などでも上演されるそうです。一生ものの作品なので、絶対に観ておいた方がいいですよ (っていう、最後は舞台の宣伝・笑) 。
http://www.wagahoshi.com/


MOVIE
(500)日のサマー
この映画は「好きなあの子と付き合いたい!」って毎日考えてるひとや、「人と出会うことってなんだろう?」そんなことを思ったことがあるひと、そして、いつも話しかけるタイミングを逃しがちな君が、きっと勇気をもらえる映画です。

"運命的な恋" を待ってる。そんな青年トムと、"彼氏なんて必要ない" 女の子、サマー。職場で出会ったふたりは次第に仲良くなっていくんだけど、好きになった相手に「わたしは恋人は作らない主義だから!」なんてことを言われてしまうと、これは、気合いが入るわけです。「いままでどんなタイプとつき合ってきたのかは知らないけど、そんなの僕が変えてみせる!」── だって想像してみてください、好きなひとに気に入られようといろんなアプローチをして、気持ちが届いて、そのひとにとっての "特別" な存在になれたなら・・・そんなの最高です!友達が、街が、世界中が、僕を祝福してくれるはず。僕は外見だってあの映画スターそっくりだし、勉強も仕事もできる、ケンカだって絶対に負けない、なぜなら、あのひとの恋人は僕なんだから!!

やっぱり僕たちは、なにかと出会って生きていくんですね。あなたが僕たちを見つけてくれたように、あなたに会いたいひとがこの世界のどこかにいると思うんです。それを、ひたすら待っていることも美しいですが、出会うために歩き出してみるというのも素敵なことだと思います。勇気がいりますけどね。

それから、この映画のなかで流れてくる音楽がほんとに良いです。さすがはミュージックビデオ出身の監督、マーク・ウェブ。抜群のタイミング&選曲なんですけど、映画を観終わったあとも、それぞれのシーンで流れていた曲を聴くと、一瞬で心を持っていかれます。Regina Spektor とか The Temper Trap とかね、全部サウンドトラックに入ってるので、そちらもおすすめです。

ちなみに物語の冒頭でいきなり「これはボーイ・ミーツ・ガールの物語で、ラブストーリーではない」って言われますけど、まったく気にする必要はありませんので。



スクール・オブ・ロック!職員オススメ