キャンパス内を一日中吹きすさんでいた冷たい風が、今、止まった。
1月の夕凪 (ゆうなぎ) が、そっと "その時" を告げているー


別れの時が、迫っていた。

「また今回も… 失敗でしたな」

"未来" の研究をしているという、"ミスターカワカミの友人" に会いに来たはずの林さんは結局、その人物にも会えず、更には、大学で "不審者" 扱いされ…

一人、キャンパスを去ろうとしていた。

勝手に大学内に入ってきて、モデルガン片手にうろちょろしている、自称 "カリスマスパイ" のオッサン。本来、こういった明らかな不審者など、つまみ出されて当然だ。


それでも、別れは切ない。


心優しい恵里さんは、林さんを、バス停まで見送りに来てくれていた。

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「まさか、"不審者" の正体が自分とは…。カリスマ・スパイも、落ちぶれたものです。でもね…」

「でも…?」

いつになく真剣な表情の林さん。
そしてそれは、恵里さんも。

「困っている人を救いたかったのは、本当なんです」

「そんなの、分かってますよ」

恵里さんは、少し笑った。

「林さんは、おっちょこちょいなだけ」


二人の間に、小さな笑い声。
しかしそれは、すぐに止んだ。

短くて、長い沈黙。


それをそっと破ったのは、林さんだった。

「一つだけ、わがままを言っていいですかな。…これを、預かってはくれませんか」

そう言って、林さんが出したのは、愛用している『H&K USP』。

「そ、そんな… 大事なものなんでしょう? これを預かるなんて、私には…」

「いいんです」

林さんは黒い銃身を、恵里さんの白い手に、優しくゆだねた。

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「あなたと再び会うまで、私は、人を傷つけません。これはその、約束の証。それに」

バスがやって来た。

「"未来を創る学校"。ここには、素晴らしい研究者がたくさんいました。あなたはこの学校に、必要な人です。しかし、強さ無き勇気は、特に、悲劇を生む……」

そこまで言って、林さんはふいに、バスに乗り込んだ。

「ちょ、ちょっと!」

バスのドアが閉まった。
そして。

時間にして、ほんの数秒。
二人は、バスの窓越しに、しばし見つめ合った。


さよなら…


林さんの唇は確かにそう動いたように、恵里さんには見えた。

そしてバスは二人の余韻を断ち切るかのように、発車した。

「ちょっと! 林さーん!」

届かなかった声。


「"悲劇を生む"… か」

バス車内の席に腰を落ち着けた林さんは、頭をかきむしり、つぶやいた。




「なーんて。本当は、あなたにもう一度会いたい。それだけです」


バスはあっという間にキャンパスの外に出て、見えなくなった。

先ほど2人がいたバス亭には、『H&K USP』を胸に抱いた一人の少女が立っていた。


ふいに、冷たい風が彼女のほほを撫でた。
しかし彼女はしばらくの間、その場に立ち尽くし続けていた。

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…てな感じで、カッコよく終わる訳にはいかないんですよ、今回も。

またしてもこちらは、SCHOOL OF LOCK!の職員室。

「いや、一度ならず2度までも… ウチの林が… いえいえ、本当に本当に申し訳ございません…」

声の主は、林さんが何らかの動きを見せるたびに、誰かに謝らなければいけない回数が増えている海賊先生。

今回も、悪い予感は的中。
自分の学校のセールスマンたる林さんが、またしても、他校にモデルガン片手に乱入し、問題を起こしていた。

「…ホントにホントに申し訳ありません。しかし、こんなお電話で恐縮なのですが、ミスターカワカミから、先生のお話はいろいろ伺っておりまして… もしよろしければぜひ一度、我が校にいらしていただけないでしょうか? もちろん、お詫びとお礼という意味もあるのですが、わが校の生徒に、先生の研究のお話をぜひしていただきたくて」

電話の相手は…?

「ぜひぜひ。私が仕掛けた "暗号" を解けた生徒さんも、たくさんいたみたいですしね。SCHOOL OF LOCK!には優秀な学生さんが多いみたいで、私も楽しみです」

「暗号…?」

「せっかく私の名前を伝えようとしているのに、林さんは全く気付いてくれなくて… いや、こっちの話です。…そうですね、じゃあ、ミスターカワカミもおみやげを持ってお邪魔したみたいですし、私も手ぶらでお伺いする訳にはいかないですね。"未来" につながる研究をしているので、『太陽電池で充電することのできる "未来の充電器"』なんていかがでしょう?」

「いえいえ! 本当にお気遣いなく… 申し訳ないです、ホントに。…じゃあ、来週の水曜日なんてどうでしょうか?」

「了解しました。2月2日の水曜日ですね」

「では、来週。楽しみにしてますよ… ドクターアキヤマ」





SCHOOL OF LOCK! × 東海大学工学部 presents 「東の海より愛をこめて2 〜私を愛したカリスマスパイ〜」


出演
(出演順)

カリスマスパイ林さん : 林さん

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小平恵里さん : 小平 恵里 (東海大学文学部3年次生)

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高橋 達 (a.k.a. "優しいセンセイ") :  高橋 達 准教授 (工学部・建築学科)

葛巻センセイ (a.k.a. "ミスターダンディ") :  葛巻 徹 准教授 (工学部・材料科学科)
葛巻研究室の皆さん

大山 龍一郎教授 : 大山 龍一郎 教授 (工学部・電気電子工学科)

槌谷センセイ : 槌谷 和義 准教授 (工学部・精密工学科)
槌谷研究室の皆さん

押野谷教授 : 押野谷 康雄 教授 (工学部・動力機械工学科)
押野谷・長谷川研究室の皆さん

林さんに疑われた "出入り業者" サラリーマン : 森岡 洋一郎

高木センセイ (a.k.a. "メガネ男子") : 高木 直行 教授 (工学部・原子力工学科)
高木研究室の皆さん

プリチーな女性研究員 (a.k.a. "ドクター・プリチー") : 石射 明日香 (工学部・応用化学科4年次生)


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取材協力

林レポート1 (未来の家) / 高橋 達 准教授
林レポート2 (未来の素材) / 葛巻 徹 准教授
林レポート3 (未来のキッチン) / 大山 龍一郎 教授
林レポート4 (未来の注射) / 槌谷 和義 准教授
林レポート5 (未来のクルマ) / 押野谷 康雄 教授
林レポート6 (未来のエネルギー) / 高木 直行 教授
林レポート7 (未来の太陽発電) / 功刀 義人 准教授



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監修・アドバイス

ドクターアキヤマ



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Special Thanks to

葛巻研究室の皆さん
大山研究室の皆さん
槌谷研究室の皆さん
押野谷・長谷川研究室の皆さん
高木研究室の皆さん
功刀研究室の皆さん

『高度物性評価施設』スタッフの皆さん


小栗 寿夫 (東海大学広報部)



All produced by SCHOOL OF LOCK!
Supported by
東海大学工学部



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『ドクターアキヤマ』 Coming on 2.2(Wed)!!!


あの "海マスター"、『ミスターカワカミ』の友人!
"未来" の研究者『ドクター・アキヤマ』の緊急来校が決定!

ってコトで!
ドクター・アキヤマに聞きたいことを大募集するぞっ!

今回の授業テーマは『近未来の生活』

近い未来、家電に電源をつながなくてもよくなるってホント?
車はどれくらい進化するの?
ひょっとして、もうすぐ "宇宙エレベーター" なんかも実現したり?
あと、何十年たっても、やっぱり、お茶碗は変わらないのかなあ…

〜などなど、
宇宙の話から、身近な生活品の話題まで、
生徒のミンナから、『近未来の生活』にまつわる
質問・疑問をドバドバっと受付!

"未来博士"、『ドクター・アキヤマ』がスラスラ答えてくれるぞ!

質問をくれたミンナの中から抽選で10人に、
『太陽電池で充電することのできる
"未来の充電器" iCharge』をプレゼント!




当選者
東京都 15歳 ★ハルフ★
群馬県 16歳 DAnde LiOn
栃木県 14歳 徒結びと残像
大阪府 17歳 閃光の灯火
千葉県 18歳 チョーベー
香川県 16歳 パーフェクト生産機
宮崎県 15歳 がさがさ
福島県 17歳 ペンサ
愛知県 12歳 まとる
北海道 17歳 てぃあも(北海道枠)