手紙文化研究家の中川越さんと「愛の手紙」のお話
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- 2021/02/14
手紙文化研究家の中川越さんをお迎えして

小山「コレクションというか、自分で書いたラブレターの下書きをノートに書き留めていたんです(笑)」
宇賀「愛の手紙、ラブレターは歴史が深いということで、今日は先人たちの愛の手紙についてうかがっていきたいと思います」
バレンタインデーにお届けするSUNDAY’S POST、テーマは「ラブレター」です。ゲストに手紙文化研究家の中川越さんをお迎えしました。

中川「もともと生活手紙文を中心にいろいろ勉強をしていて、その延長線上に文豪の手紙があったんです。それが一つの文化として形成されていることについて、深く勉強してみたいなということで、こういう名前をつけさせていただきました」
宇賀「もともとは雑誌や書籍の編集者をされていたんですよね」
小山「手紙に興味を持つきっかけがあったんですか?」

宇賀「『書翰文大観』という本ですね」


宇賀「“新年を祝う文”、“新春宴会に友を招く文”とかいろいろありますね」

中川「樋口一葉もお金がない時に、仕事としてこういう例文集も出しているんです。それはそれですごく素晴らしい、単なる文例集を超えたものであるんです」
小山「昔からニーズがあったんですね」
宇賀「中川さんの著書『愛の手紙の決めゼリフ 文豪はこうして心をつかんだ』からお話をうかがいたいのですが、どうして愛の手紙について書こうと思われたんですか?」

小山「それは伝わりそうですね」
中川「関係性も欄外なわけですね。人生の欄外に置くべき『コイシイ』が、象徴的に出ている手紙として、非常に素晴らしいという評価を得ていますね」
小山「その一文、一言だけで最高峰に上り詰めた感じですね」

小山「これはメールだとできないですもんね」
宇賀「片仮名の『コイシイ』なんですよね」
小山「それ、使わせてほしいですね(笑)」
宇賀「今日はバレンタインデーですし、お手紙にも使えますね」

中川「徳富蘆花が、奥さんの入院中に書いた手紙というのがありまして。お互い、毎日のように手紙を書いていたんですね。ある退院する間近の手紙の最後にですね、追伸のように『キスを五つ送る。唇に、額に、二つの目に、顎の下に』と書いたんですね。これは非常に洒落ていてきれいだなと思います。どこまでも届く投げキスみたいな印象があって、面白いなと思いますね」
小山「ドリカムの歌詞に出てきそう(笑)。追伸がやっぱりポイントですね。愛の手紙に、いちばん必要な要素って何でしょうか?」

小山「なるほど」
中川「第一次南極越冬隊員の妻が、非常に通信事情が悪い時に、命がけの越冬を続けているご主人にそれぞれ電信を送ったんですね。その中に、みんなが震え上がるような一言があったと。それはたった三文字『アナタ』と一言あったんです。万感の想いをそこに集約したんです。手紙というのは、それぞれ相手との関係の磁場の中に日常を置いた時、ものすごい輝きを発揮するんだなと思いましたね。どういう言葉を選ぶか、というのも大事だけど、相手と自分の関係がどうあるのか、と。夫が生きて還れる保証はない中、いろんなことを言いたいはずなのに、『アナタ』と言ったというのは一つの大きな愛ですよね。それから日本人らしいですよね」
小山「愛しているとは言わずに、愛していると伝えるんですね」

中川「相手によってテンションが上がったり、想像力が湧いたりするものだから、一人で書くものではないんじゃないかな、と思います」
小山「中川さんのラブレター、読んでみたいですね」
中川「僕も高校時代は、好きな人に膨大なラブレターを書いていたんですよ。でもね、重過ぎたんでしょうね、上手くいかなくて(笑)。それぞれの語彙とか、構成力とか才能とかはあると思うんですけど、手紙は書きたい、書いていて面白いと思うことが私が30年以上研究をしていていちばん重要なことだと思います。処理をしなくちゃと思った途端に、ちっともいい手紙にはならないんですよね」

中川さんの新刊『文豪通信』も是非お手に取ってみてください。
『文豪通信』

#手紙にしよう

この寒い時期にも凛々しく花を咲かせるふきのとうと福寿草を描いたポストカードも更新しています。
番組やSNSでもご紹介していくので、お楽しみに。
#手紙にしよう
今週の後クレ

「私が小学生の時の話なのですが、当時片思いをしていた女の子に対して、ラブレターを幼いながら一生懸命書いて、かばんの中に準備をして持っていったのですが、渡す前に他の友達に手紙を開けられてしまい、その女の子に渡されてしまったという思い出があります。苦い思い出でしたけれど、当時そういう経験をしたことは本当に良かったなと、今振り返ると思います。当時、文字で言葉を伝えるということが私の中で真っ先に浮かんだことだったので、手紙を書こうと思いました。」
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