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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

22.05.11

資産所得倍増プラン
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師、塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


『資産所得倍増プラン』



吉田:岸田総理は今月5日、ロンドンの金融街シティーで講演し、自身が掲げる経済政策『新しい資本主義』の具体策として、日本の個人金融資産およそ2000兆円を“貯蓄”から“投資”へと誘導する『資産所得倍増プラン』を始めると表明しました。
塚越さん、この『資産所得倍増プラン』とは何なのか、教えてください。


塚越さん:これは、岸田総理の『新しい資本主義』の中身のひとつになっております。総理によりますと、“日本人の金融資産は2000兆円”といわれているんですが、その半分以上が預金や現金で保有されているということなんですね。この国民の預貯金を資産運用に誘導する新しい仕組みということで、『NISA(少額投資非課税制度)』の拡充などを挙げていますが、具体的にはこれからというところです。この『資産所得』という言葉なんですけれども、働いて稼いだ、いわゆる、“給料”でなくて、株式の売買や配当など、いわゆる、“資本を使って儲けたお金”ということなんですね。したがって、預金や現金を投資などにまわして、配当などで所得を増やしましょうという話になっています。実際に日本は欧米に比べて預金などが多くてですね、資産所得が増えていないということで、これは岸田総理が去年の自民党総裁選で掲げた『令和版所得倍増』を実現するための手段としてここで提示したという感じですね。


吉田:『給与所得』の倍増ではなく、『資産所得』の倍増へと、考えを変えたということになるんですか?


塚越さん:そうなんですね。『令和版所得倍増』は当初、『資産所得』ではなくて『給与所得』を想定していたんですね。いわゆる、『新しい資本主義』は“分配”を考えていたはずで、当初は『金融所得課税』の引き上げも考えていました。つまり、金融で儲けた部分に課税をして、それを低・中所得層へ分配するといった内容なんですね。なので、分配を思考していたんですけれども、金融界などからの批判も多くて、今回も課税引き上げについては講演でも言及がありませんでした。なので、『分配をする資本主義』ではなくて、『投資によって経済成長』しましょうという方向で、岸田総理は「やるぞ!」というアピールする狙いがあったと思いますね。


吉田:このプラン、塚越さんはどのようにご覧になっていますか?


塚越さん:経済成長できるなら、それはそれで歓迎できると思うんですけれども、「その成長は誰にとっての成長なんだろうか?」という点は重要ですよね。例えば、投資に手が回せるというのは、比較的、裕福であったりする層、あるいは、いろいろ手続きも大変なので、余裕がある層がするものなので、元々の格差の是正だったり、中間所得層の底上げになるかどうかはちょっと不透明だということも考えられるかなと思います。日本の生産性の低下は、ずっと問題になっていますよね。そうなってるときに、投資によって資産が増えても、根本的な解決策にはなってないのかなと思いますし、多くの一般の方にとっては、『給与所得』が注目点なので、この点を抜きにして、『所得倍増』という“引きのある大きな言葉”が出ている点には注意が必要なのかなと思います。本来なら生産性を上げるために国力の底上げをする中長期的な目線も必要かなと思いますね。


ユージ:岸田総理はロンドンの金融街シティーでの講演で、『賃上げ』についても触れてて、「リスキリングに力を入れる」と話しているんですけど、この『リスキリング』について、塚越さんはどんな印象を持たれてますか?


塚越さん:先ほど述べた、生産性向上という観点から言えば、リスキリングは歓迎できるかなと思うんですが、しかし、ただでさえ忙しいので、この忙しい中で新しい仕組みを作るというのはなかなか難しいかなと思うので、そこの仕組みをどう作るか?が問われると思います。様々なスキルを学び直して、取得していって、専門性が変化していくということですよね。柔軟な社会に対応するということなんですけれども、リスキリングが増えれば社内の配置換えだけではなくて、結果的に転職するといったようなこともあります。そうなると、スキルに対する我々の意識の変化も重要かなと思います。実際、去年の調査だと、企業の半分近くがリスキリングを実施することも検討も全然していないということになっています。これは、ビジネスとして重要だということに気付いてないということもありますが、我々自身がある種、「職業というものは一回決めたらずっとやるものだ!」みたいな固定観念があると思いますので、そういった文化的な習慣的な面も構造的に変えられるといいかなと思うんですよね。


ユージ:資産所得じゃなく給与所得を増やしたいわけですよね、そうなると『リスキリング』は賃上げに繋がると思われますか?


塚越さん:そうですね、繋がる部分もあると思うんですけれども、非常に短期的な「今、こういう課題があるからやりましょう!」みたいなかたちで、新しいスキル身に付けましょうだけやってしまうとですね、短期的には給料が上がっても、最終的に労働者の使い捨てになってしまう。次に繋がらないということになると本末転倒ですよね。そういう意味では、最初に申しあげたとおりに中長期的な、数十年先も対応できるような、そういうメンタリティを育てていくような仕組みになるよう、そこまで考えてほしいと思います。



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