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22.02.03

北京オリンピック直前、台湾が一転開会式参加へ
nullネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。

今日は「BuzzFeed Japan News」副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。


北京オリンピック直前、台湾が一転開会式参加へ

吉田:台湾のオリンピック委員会は、北京オリンピックの開会式と閉会式について、新型コロナウイルス対策を理由に選手らが参加しないことを決めていましたが、今週に入って一転、参加を発表しました。その理由は、台湾の主張が認められ「中華台北」の名称で出場することを確認できたからだ、としています。


ユージ:台湾が当初、開会式と閉会式に出ないと言っていたのは選手団の呼び方の問題が背景にあったということですが、神庭さん、これは何があったんですか?


神庭さん:先月26日に中国の台湾政策担当者が、記者会見で台湾選手団のことを「中国台北」と呼んだんですね。過去の五輪では「中国台北」ではなく「中華台北」(英語で言うとチャイニーズ・タイペイ)と呼んでいたのに、この担当者は「中国台北」と言ったんですね。これは台湾を中国の一部とする中国側の主張に沿った呼称だとして、台湾が反発。開会式の選手入場のアナウンスなどでも「中国台北」と言ってくるんじゃないか?と警戒感が広がっていました。
台湾当局は当初、コロナの感染リスクなどを理由に開閉会式に参加しないと表明していました。建前上は感染対策を理由にしていますが、台湾メディアは中国の政治宣伝への懸念を報じていました。


ユージ:それが、一転して参加することになったわけですね。


神庭さん:台湾は1月31日に参加を表明しました。IOCから台湾側に対して参加要請があり、感染対策にしっかり取り組むと説明があったということです。この件に関して、読売新聞は《 IOCの要求の背景には、中国の働きかけがあったとみられる 》と書いています。それが事実であれば、台湾としてもひとまず開閉会式で「中国台北」と呼ばれるような心配はない、と判断したのかもしれません。
五輪はもともと開催国の威信をかけた政治的なイベントですから、「平和の祭典」という見方だけではナイーブすぎるとは思いますが、少なくとも開閉会式という、公式のハレの舞台を政治利用するような振る舞いは避けるべきだと、僕は思います。開会式に出る・出ないという、競技と全然関係のないところで神経をすり減らすことになってしまった台湾選手たちが気の毒ですよね。
ちなみに昨日、北京五輪の組織委員会のサイトを確認したところ、日本語だと「チャイニーズ・タイペイ」中国語でも「中華台北」と台湾の主張通りに表記されていました。


ユージ:北京オリンピックでの呼称問題は、一旦解決されたわけですね。では実際、感染対策はちゃんとなされているのでしょうか?


神庭さん:中国は、五輪前から徹底した「ゼロコロナ」政策をとっています。日本や欧米とは人権感覚も違いますから、ロックダウンや隔離も積極的に行いますし、五輪に関しても、選手が自由に買い物に出歩くことが出来てしまった日本のバブル方式を教訓に、より一層厳しい体制を敷いています。原則的にワクチン接種は義務となっていますし、東京五輪ではメディア関係者はバブル内外を出入りできましたが、北京五輪ではメディア関係者もバブルの中にいなければなりません。また、競技は無観客ではありませんが、会場には招待客だけしか入れず、チケットの一般販売は行われません。聖火リレーも規模を縮小して一般公開はしない、という形でやっているんですね。
ただ、それだけ鉄壁のガードを敷いていても、オミクロンの感染力の前にはやはり限界もあります。東京オリンピック・パラリンピックでは、期間中に261人が陽性になりましたが、北京ではすでに272人の陽性が確認されているということで、1月末にはスキージャンプの金メダル候補と言われていた、オーストリアの女性選手の感染が判明しました。この選手は、中国に向けて出発する前の検査でわかったということなので、ある意味感染対策が有効に機能していることの裏返しではありますが、今後も有力選手の感染が相次ぐと、大会としてはなかなか厳しいのかな、とも思いますね。


吉田:いよいよ明日開幕ですが、ほかに何か動きはありますか?


神庭さん:1日火曜日の衆院本会議で、新疆ウイグル自治区やチベット、香港などでの人権問題の懸念を示す決議が、与野党の賛成多数で採択されました。ただし、内容は骨抜きに近いもので、まず「中国」という名指しを避けたんですね。さらに「人権侵害」という言葉を「人権状況」に置き換え、「非難決議案」も「決議案」に変更されました。これについて、朝日新聞の《 批判トーン弱めた人権決議 公明に配慮、自民にも共産にも不満の声 》という記事では、「中国との関係が深い公明党に配慮した」と分析しています。
自民党内の対中強硬派による「なんのための決議なのか分からない」という疑問の声や、共産党側の「人権侵害に対する正面からの批判がない。大変不十分なものだ。『中国』とも書いていない」という批判を紹介しているんですが、表向きは賛成多数なのに、右も左も不満タラタラという、ちょっと奇妙な状況になっているんですね。
国会決議は全会一致が原則なんですが、調整に時間をかけすぎて、決議が五輪の開催後になってしまうと「気をつかって日和った」みたいな見え方になってしまうので、急いで決議を行ったのだと思いますが、結果、中国の名指しを避けてマイルドにしつつ、五輪直前の一番センシティブなタイミングで決議を出すというちぐはぐな対応になっているので、もう少し早く意思表示できなかったのかなぁ、とは思いますね。



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