22.01.24
岸田政権が掲げる「賃上げ税制」

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
引き続きコメンテーターは、「BuzzFeed Japan News」副編集長の神庭亮介さんです。
今週はスペシャル企画でお送りします。
初日、月曜日のテーマはこちら!
岸田政権が掲げる「賃上げ税制」
ユージ:今週は月曜から木曜まで、7時台はスペシャル企画!最近よく耳にする、『賃上げから、メタ、EVまで。このニュース、本当に実現できる?』をテーマに「最近、よく耳にするニュースワードの“そもそも解説”」と「本当に実現するのか?その課題」をわかりやすく解説します!
吉田:初日、月曜日の「ニュースワード」は、岸田政権が掲げる「賃上げ税制」です。さっそくですが、神庭さん、この「賃上げ税制」の狙い、背景について教えてください。
神庭さん:これまでにも何度か説明してきましたが、日本の平均年収は440万円で、30年前からたったの4%しか上がっていません。この間にアメリカは48%、OECD平均でも33%増えていて、日本の低成長ぶりが際立っています。最近、「今の若者の間では年収400万円が高給取りだと認識されている」というツイートが話題になりました。この投稿に対して、「これが現実」「400万とか夢のまた夢」といった反響が広がりました。クレヨンしんちゃんのお父さんの野原ひろしは、アニメの中では「万年係長」「安月給」と言われていますが、手取りで30万円もらっています。額面はもっと多いし、ボーナスも合わせたら年収600万円を超えているんじゃないか?という説もあります。正社員で、持ち家もある。いまの時代だとむしろ羨まれる対象かもしれません。こういう状況を放置しておけないので、岸田総理は「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」を掲げ、自ら先頭に立って経団連や日本商工会議所などに対して賃上げを要望してきました。そのための武器のひとつが、従業員の給与を引き上げた企業を優遇して、法人税を減免する賃上げ税制です。
ユージ:改めて、どんな制度なのか、説明してもらえますか?
神庭さん:企業が納める法人税額から賃金アップ分を差し引く仕組み自体はもともとありました。大企業の場合だと、これまでの制度では法人税から差し引ける控除率は最大でも20%でした。これをMAX30%まで引き上げる、というのが今回の賃上げ税制です。前年度から継続して雇っている人の給与の総額で比較して、3%アップなら増加分の15%を法人税額から差し引きます。4%アップなら25%を差し引くといった形で、賃上げの度合いに応じて、優遇措置を大きくします。さらに社員の教育訓練などの支出を増やすことで、控除率が5%上乗せされるので、トータルで控除率は最大30%となります。中小企業の場合は継続して雇っている人だけでなく、新規で採用した人も含む全従業員の賃上げが対象です。これまでは控除率が最大25%でしたが、MAX40%まで引き上げます。
ユージ:神庭さんの見立てでは、これ、うまくいきそうですか?
神庭さん:日本の赤字法人率は65.4%。赤字の企業は法人税を払っていません。「賃上げしたら減税するよ」と言っても、赤字企業には関係ない話で、どこまで効果があるか不透明です。また、3%、4%も引き上げられるのは、一部の優良企業に限られるのでは?という指摘もあります。やらないよりはやった方がいいのかもしれませんが、税制だけで賃上げを実現するのは難しい、限界があるということも押さえておかないといけません。岸田総理は17日の施政方針演説で、最低賃金の全国平均をできるだけ早く1000円以上に引き上げると表明しました。一方で、最低賃金を急激に引き上げると、企業が耐え切れなくなって雇用を減らす恐れもあります。地域ごとの実情も踏まえた丁寧な議論が必要になると思います。
吉田:そもそも、なぜ給料が上がらないのでしょうか?
神庭さん:いくつかの要因があります。1つ目は、失われた30年の間に、アメリカのGAFAのような成長産業を生み出すことができなかったことです。パイ一切れあたりをいくら平等に分配ようとも、パイ自体が小さかったら意味がないです。2つ目は、企業がコストカットのために非正規社員を増やしたことです。非正規社員の割合は平成元年、1989年の時点で非正規の割合は19.1%でした。平成31年、2019では38.3%。結果として平均賃金も抑制されました。3つ目は、労働組合の組織率が下がっていることも大きいです。1960年代から70年代にかけては推定組織率が30%を超えていましたが、直近では17.1%にまで低下しています。非正規雇用の増加ともリンクしている話ですが、組織率が下がれば当然、会社側との交渉力もダウンします。ほかにも女性活躍と言いながら女性の賃金水準が低いとか、複合的な要因が絡まり合っています。
ユージ:去年から値上げが続いていて、今後もまだ続きそうですが物価ばっかり上がって給料が上がらないというのは、厳しいですよね?
神庭さん:このところ、食品から電気代からありとあらゆるものが値上げされています。私が愛する「うまい棒」も4月以降、10円から12円に引き上げられることになりました。物価が上がり、賃金も上がる「いいインフレ」なら大歓迎ですが、賃金が上がらず、物価だけが上がり続ける「悪いインフレ」、スタグフレーションも懸念されます。春にはインフレ率が2%に達するとみられています。給料がせっかく3%上がっても、物価が2%上がったら、実質的にはプラス1%にしかならないです。賃上げ税制がどれほど効果を発揮するのか、4月以降の動向を見守りたいです。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) January 24, 2022
テーマは、
賃上げ税制について
日本の平均年収は440万円。
この30年でたった4%しか上がっていません。
30年で48%増えているアメリカと比べると、
日本の低成長ぶりが際立ちます。
この状況を打開するために岸田政権が掲げたのが、
賃上げ税制です。
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) January 24, 2022
賃金を上げることで法人税が減免されるという部分だけ
見るとメリットに感じる賃上げ税制ですが、
企業によっては賃上げをしたため利益が下がり、
減免されても結局の利益が減ってしまう場合があります。
赤字法人に至っては法人税を払っていないので、
賃上げ税制は関係ありません。
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) January 24, 2022
賃上げ税制が本当に効果があるかどうか確かめるためには、この制度が1つの企業だけでなく、
日本全体の企業でどこまで機能して、
どこまで効果があったのかを総合的に見ていく必要があるので、ここから先が要注目です。