21.12.13
北京オリンピックの外交的ボイコット
今日は「BuzzFeed Japan News」副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。
北京オリンピックの外交的ボイコット
吉田:先週、アメリカに次いでオーストラリア、イギリス、カナダも外交的ボイコットを決めたとの報道がありました。そこで今回は、日本政府の対応やオリンピックへの政治介入について、神庭さんに解説していただきますが、本題に入る前に「外交的ボイコット」とはどういう意味なのか、改めて教えてください。
神庭さん:はい。「外交ボイコット」とか「外交的ボイコット」と呼ばれていて、明確な定義はないんですが、アメリカ政府は、北京五輪に選手団を派遣しつつ、政府関係者など外交使節団の派遣は拒否する、という対応を指してこの言葉を使っています。
中国の新疆ウイグル自治区での人権弾圧に抗議した措置で、アメリカのほか、オーストラリア、イギリス、カナダが外交的ボイコットを表明していて、今後さらに同調する国が増える可能性もあります。一方で、2024年にパリ五輪を控えるフランスや、地政学的に中国と距離が近い韓国は、外交的ボイコットに消極的な姿勢を示している、ということです。
ユージ:これを受けて、中国側の反応はどうですか?
神庭さん:時事通信によると、各国が外交的ボイコットを表明したことに対して、中国外務省の報道官は「強烈な不満と断固とした反対を表明する」「冬季五輪は政治的パフォーマンスの舞台ではない」「誤った行為に代償を払うことになるだろう」などと強い言葉で警告し、イギリスに対しては「まだ招待していない」という言い方もしている、ということです。
「政治利用するな」ということですが、オリンピックは世界で一番と言っていいぐらい政治的なイベントなんですよね。過去にはナチスドイツがプロパガンダのために五輪を利用したり、新興国が五輪を開催することで国威発揚を促したり…といった例は、枚挙にいとまがないです。
そもそもが政治的なイベントであるところに、世界各国の政治家たちが集結して首脳会談を繰り広げるとなれば、ますます政治的な色彩を帯びてしまうので、むしろ政治家の出席者を減らす方が、五輪と政治を切り離すことにつながるのではないか、と僕は思います。
吉田:過去にもボイコットはあったんですよね?
神庭さん:東西冷戦下で開催された1980年のモスクワ五輪で、アメリカはソ連のアフガン侵攻に抗議してボイコットを呼びかけまして、参加国80カ国のうち日本や西ドイツなど60カ国以上が不参加となり、かなり大規模なボイコットとなりました。しかもこのときは、外交使節だけでなく選手も派遣しない、という厳しい対応を取りました。中には参加を選手個人に委ねた国もありましたが、それすら許されず、涙を飲んだ選手も多かったんです。
そしてこのモスクワ五輪の報復として、1984年のロサンゼルス五輪では、ソ連や東ドイツなど東欧の国々が大会をボイコットしました。こういった対応で、五輪のために必死で努力してきた選手たちまで巻き込むのはとても気の毒なので、その意味でも今回取りざたされている「外交的ボイコット」というのは、選択肢としてまだ穏当なのかな、と思いますね。
ユージ:ここで気になってくるのは、日本の対応なんですが…。
神庭さん:ここが難しいですよね。すでに外交的ボイコットを決めた欧米諸国も、中国とは少なからず輸出入の取引があるんですが、日本は貿易面での中国への依存度は高く、2019年のデータですと中国は日本の輸入先のトップで、2位のアメリカの倍以上の23.5%に達しています。また、中国は輸出先としても第2位、アメリカに次ぐ19.1%を占めています。2010年に尖閣問題が起きた際に、中国が日本へのレアアースの輸出を止めたことは記憶に新しいですね。今回も中国は報復をチラつかせていて、その規模によっては日本も無傷では済まされないかもしれません。岸田総理は「五輪や、わが国の外交にとっての意義などを総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい」と、奥歯にものが挟まったような言い方をしていますが、背景にはこうした事情がある、ということなんです。
ユージ:そう考えると、なかなか対応が難しいですね。
神庭さん:そうなんですけれど、ウイグルの人々の人権が脅かされている状況を黙認する訳にはいかないですから、日本としても何らかの行動を検討するべきだと思います。経済面の影響に配慮するのであれば、アメリカのように「外交ボイコット」とわざわざ言わなくても良いのではないかと僕は思っていて、少しずるいんですが、例えば「オミクロン型の流行が危惧されるので、大事をとって今回は…」とか。理屈は何でもいいと思うんですけれどね。ANNの報道によると、中国外務省は「中国が東京オリンピックを全力で支持したのだから、今度は日本が信義を示す番だ」と主張しているそうなんです。しかし、東京五輪の際に中国が派遣したのは閣僚級の国家体育総局長で、過去の五輪に国家主席や副首相が出席してきたのに比べると、明らかに「格下」だったので、そうした点も考え合わせると、少なくとも岸田総理は出席しなくて良いのでは…?と思いますね。
中国はメンツにかけて何としても北京五輪を成功させたいわけで、逆に言えば今このタイミングで何かアクションを起こせば、すごく効果が期待できると思うんですよ。テニスの彭帥選手が失踪した件も、報道やネットで騒がれて国際的な批判が高まったことで、(本当に元気でいるかどうかは別にして)、一応は動画や写真で彭帥さんの姿を確認することができましたよね。なので、外交ボイコットに関しても、このタイミングで、各国が協調して行動することに意味があるのではないかと思いますね。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 13, 2021
本来オリンピックへの政治的な介入は
してはならないとされています。
オリンピック憲章にもこのことは記されています。
しかし、今回のボイコットは明らかな政治的介入と
取られても仕方のない行為です。
#ユジコメ④
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 13, 2021
今回の外交的ボイコットで1つ救いなのは、
選手に対する圧力は今のところないということです。
ボイコット運動が悪化して、罪のない大会や選手に影響を及ぼしてしまうのだけは避けたいところです。
無事に大会が開催され、選手たちのトップを決められる場になるといいなと思っています。