21.11.16
COP26、石炭火力が廃止から削減に後退した理由

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
BuzzFeed Japan News 副編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただくテーマはこちら!
『COP26、石炭火力が廃止から削減に後退した理由』
吉田:イギリスで開催されていた COP26は焦点だった石炭火力について、議長国のイギリスは「温室効果ガスの排出削減対策が講じられていない石炭火力の段階的廃止」との表現で合意を目指しましたが、会議の最終盤に「段階的に減らす」との表現に後退しました。
合意文書の表現が「後退した」と言われるのは、神庭さん、やはり、インド、中国の抵抗が相当激しかったからなんですか?
神庭さん:おっしゃる通りなんですね。当初の合意文章には石炭火力を「段階的に廃止する」と書かれていたんですけれども、石炭火力への依存度が高いインドとか中国が採択直前に異議を唱えて、土壇場で『廃止』から『削減』に文言が修正されたんです。英語で言うと、『段階的廃止』は『phase out』で『段階的削減』は『phase down』と、一語違うだけなんですけれども、議長国イギリスのジョンソン首相は「削減でも廃止でも大きな違いはない。進む方向はほぼ同じ」と述べたということなんですけれども、インドからすると、発電量の7割超が石炭が占めていて、中国も5割近くで、これらの国にとっては“大きな違い”ということですよね。
そして、日本もまったく他人事ではなくてですね、日本の一次エネルギーの供給構成を見ると、石炭がおよそ4分の1を占めています。石油とか液化天然ガスもあわせると、化石燃料への依存度は実に85.5%で、インドや中国が反対してくれたけれども、内心、日本政府関係者も、もしかしたら、胸を撫でおろしているかもしれないという状況なんですよね。
ユージ:日本も会合の時に、国際団体から『化石賞』というね、不名誉な賞をもらいましたけども、なかなか批判されているようですね。
神庭さん:そうですね、もちろんね、そういう意見もあると思うんですけれども、気候変動をめぐる外交というのは、「地球を大切にしようよ!」とか「みんなで頑張ろう!!」みたいな単純な世界でもないんですよね。例えば、議長国のイギリスは、石炭火力の廃止に非常に前のめりでしたけれども、イギリスの電源構成を見るとその理由がよくわかります。石炭はたったの1.8%なんですよね、だから、なくなっても痛くも痒くもない。その分、風力とか太陽光が28.4%、原子力が16.1%というかたちで多くを占めていて、ヨーロッパは風力発電向きのいい風がたくさん吹いているんですね。洋上風力発電と言って、海の上にたくさん風車を作って、それもうまくいっています。自然エネルギーはどうしても気候の影響を受けがちなんですけれども、ヨーロッパだと国境を越えて電力を融通し合える仕組みがあって、電力不足のリスクをヘッジできるんですね。そういう気象条件や地形の違いなどもあるので、日本がそのまままるっとマネできるという状況ではないんですね。
ユージ:そうなんですよね!どうしても台風がきたりとか、日本はそういう災害もあるので、自然エネルギーというのは難しいですよね。
神庭さん:イギリスとかヨーロッパ勢がすごく強気に出られるというのは、そういう“強み”があるからで、“地球のため”、“みんなのため”というのももちろん多少はあるとは思うんですけれども、気候変動という議論の枠組みを通じて、“自国の国益を最大化しよう”というシビアで冷徹な判断があるわけです。インドとか中国の行動は決して褒められたものではないんですけれども、そうした背景を理解しているからこそ、それぞれが自国の利益を追求した結果というふうにも言えると思います。
吉田:ほかのものに替えられるのが一番ですけれども、とにかく日本は、『エネルギーがない国』とも言われてますよね。今後、強化すべきことはなんでしょうか?
神庭さん:岸田総理は、COP26で途上国の気候変動対策への支援として、1.1 兆円の追加支援すると気前のいいことを言っていましたけれども、特に注目も集めることもなくて、お金だけ出して、全然感謝もされないという、ちょっと最悪な事態なんですよね。例えばですね、アンモニアは燃やしても温室効果ガスが出ないんです。このアンモニアを石炭火力に混ぜることで、CO2を減らすことができると言われていて、日本ではその研究が進んでいるんですね。もちろん、大量のアンモニアをどうやって確保するのか?とか、アンモニアをつくる過程で出るCO2はどうするんだ?とか、いろいろ課題はあるんですけれども、この技術が確立できれば、日本国内だけでなく世界的にもCO2削減に貢献できるかもしれない。なんですが、 せっかくの『夢の技術』もですね、見え方によっては「ただ単に石炭火力にしがみついてるだけでしょ!」とか、「石炭の延命策じゃないの?」みたいな感じで捉えられてしまうともったいないというか、元も子もないんですよね。そういう売り込みがちょっと下手だなと思います。各国の思惑が渦巻く世界で日本は、“不利益なルールを押し付けられてしぶしぶ従う側”になっちゃうんじゃなくて、“みんなでWin-Winになれるルールを作っていく側”にならないといけないわけですよね。先進国なんですけれども、石炭火力の依存度が高い日本は、先進国と途上国の橋渡し的な役割を担うことも本来ならできると思うので、お金だけ出して口は出さないみたいなことではなくて、ぜひ、口も出しながら議論をリードしていってほしいなと思いますね。
ユージ:そうですよね、だから今回でいうと、イギリスの「石炭に頼るのはやめよう!」みたいな結構強気な発言は、今の神庭さんの話によると、中身を見ていくと、実際は1.8%しか石炭にはそもそも頼っていなくて、他で賄えていると。そういう背景を聞いてしまうと、そりゃ強気にいけるよなぁ…とは思いましたね。
神庭さん:そうなんですね、“言える理由がある”と…。それだけ電源構成を変えることを進めてきたということもあると思うんですけどね。
ユージ:ただ、だからといって、やっぱり、こちらも新しい技術を探すっていうのをやめてはいけないなとも思いましたね。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 16, 2021
「COP26、石炭火力が廃止から削減に後退した理由」
番組内でもお話ししたように、イギリスで開催されていたCOP26
議長国のイギリスは
「温室効果ガスの排出削減対策が講じられていない石炭火力の段階的廃止」
との表現で合意を目指しましたが、#ワンモ
#ユジコメ ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 16, 2021
「段階的に減らす」との表現に変えたのです。
なぜかと言うと、インドや中国の抵抗が激しかったからではないかと言われてます。
日本も石炭火力がゼロになってしまうと今の段階では困る。
自然エネルギーはありますが、気候変動が激しく安定したエネルギーの供給が難しくなる。#ワンモ
#ユジコメ ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 16, 2021
日本もたくさんのエネルギーを使います。
これが安定して使えないとなると経済的ダメージも大きいと思います。
ただ、日本だけの問題ではないので、石炭火力を減らす方法を考えなくてはいけません。そういう意味では「段階的に減らす」僕も賛成かなと思います。#ワンモ