21.08.16
フェミサイド

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan News」副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
【フェミサイド】
吉田:先日、小田急線車内で女子大学生が面識の無い男性から突然、刃物で刺され重傷を負うなど、10人が負傷するという凄惨な事件が起こりました。産経新聞によると、対馬悠介容疑者は「人生がうまくいかない。数年前から勝ち組の女や幸せそうなカップルを見ると殺したくなるようになった」「短期のアルバイトで女にあごで使われ、腹が立った」「大学時代のサークルで女性にばかにされた」など、女性に対して恨みを抱いているという趣旨の供述をしているということです。詳細な動機の解明を待たないと断定的なことは言えませんが、ネット上では「フェミサイド」との関連を指摘する声が上がっています。
神庭さん、そもそも、この「フェミサイド」とは何なのか説明していただけますか?
神庭さん:「女性であることを理由にした殺人」のことを指していいます。ハフポストで「フェミサイドとは?」というポイント解説記事を出しているので、ぜひ読んでいただきたいです。WHOの2012年の報告書によると、フェミサイドは多くの場合、パートナーや元パートナーら男性による犯行で、家庭内の虐待・脅迫・性暴力などが関わる、とされています。要するにDVのことなの? と思うかもしれないんですが、それだけではなくて、配偶者や元交際相手など関係性に基づくものもあれば、そうした関係性を伴わないものもあるんです。他方で、名誉殺人といって、婚前交渉や婚外交渉をした女性が「名誉を汚した」として、男性や女性の家族に殺されてしまうケースも海外ではあります。これは宗教や地域の風習が絡んでいて、中東やアフリカ、南アジアなどで行われています。かなり幅広く、いろんなことがフェミサイドに含まれているということなんです。
ユージ:フェミサイドのフェミはフィーメイル(女性)のフェミで、ホミサイド(殺人)という言葉を合わせた造語でフェミサイド、という言葉なんですけど、このフェミサイドは、世界的に問題になっているんですよね?
神庭さん:非自発的な禁欲主義者-平たくいうと“非モテ男性”を意味する「インセル」という言葉があって、女性と交際できないことで女性嫌悪に陥り、犯罪に至るケースが欧米を中心に散発的に起きているんです。今月12日、イギリスの住宅地で22歳の男が5人を射殺する乱射事件が起きました。男は事件前に投稿したSNSに投稿した動画で「インセル」という言葉を繰り返し使っていたということです。2016年に韓国で起きた殺人事件では、犯人が女子トイレで面識のない女性を待ち構えて襲ったんですが、文春オンラインの記事によると、犯人が「日ごろから女性に見下されていた」と語っていたそうで、SNS上では女性たちが「#偶然生き残った」というハッシュタグを使って、ひょっとしたら自分の身に降り掛かっていたかもしれない事件に心を寄せたということもありました。
吉田:日本でも、これまでに、こういった事件は起きているんですか?
神庭さん:DVなどの事案を含めれば無数にありますが、いくつか例を挙げると、昨年8月、福岡の商業施設で起きた女性の刺殺事件では、当時15歳の少年が面識のない20代の女性を刺し、その後、母親に連れられた6歳の女の子に馬乗りになったところを取り押さえられています。この時もネット上では「フェミサイド」という声があがりました。今年6月、東京・立川のホテルで派遣型風俗店の女性が殺害された事件でも、逮捕された19歳の少年は「風俗業をやっている人間はいなくていい」と供述したとされ、フェミサイドではないかと報じられています。
ユージ:こういった事件、どうやって防げばいいんでしょうか?
神庭さん:「フェミサイド」という言葉が与えられることで、見えやすくなるものと、逆に見えにくくなるものがあるかなと思っています。女性に対する差別など、社会の側が抱える課題を認識しやすくなるのは一つのメリットとしてあると思います。
一方で「フェミサイド」は非常に広い概念で、女性や少女が殺害された、ありとあらゆるケースが含まれるという考え方もあります。DVなのか、インセルによる通り魔なのか、名誉殺人なのか。一口にフェミサイドといっても、犯罪の態様によって、その中身も処方箋も全然違ってくると思っています。たとえばDVなら、コロナ禍で増加傾向にあるから相談窓口や避難できるシェルターを充実させよう、という話になると思います。歪んだ女性蔑視思想の背景に親子関係があれば家庭の問題になるでしょうし、犯人が精神的な問題を抱えていれば、そうしたアプローチが必要になります。仮に経済格差が原因なら、格差を縮小するための再分配の政策が求められると思うんです。
「フェミサイド」というラベリングで、なんとなくわかった気になってそこで思考を止めてしまうのではなく、その背景にどんな問題が潜んでいるのか、丁寧に腑分けして、対応策を考えていくことが大事なのかなと思います。今回の小田急の事件でいえば、まだ断片的な供述が報じられている段階で、わかっていないことも多いです。そこは慎重に見ていかないといけないかなと思っています。
ユージ:フィーメイル+ホミサイドの造語でフェミサイド、女性殺人というすごく怖い言葉なんですけど、これはあくまで大枠であって、この枠の中の細かい部分まで見て、神庭さんの仰ったように慎重に見極めていく必要がある、ということですね。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ💪 #ワンモ
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 16, 2021
今日は、先日の小田急線車内での切り付け事件を巡り話題になった「フェミサイド」について取り上げました。
言葉としては新しいですが、その歴史を振り返ると、かなり長い間こういうことが起きています。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 16, 2021
その為、こうして言葉が生まれることによって、全てがこの言葉に片づけられてしまうことが怖いと感じました。
それぞれの事象自体に細かな解決策があるのに、その方法を見つけるのに時間がかかったり、解決が難しくなったりしてしまうのではないでしょうか。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 16, 2021
大きな「フェミサイド」というジャンルの中に、小さな問題がいくつも内包されているということに、これからは意識を向けていかなくてはならないと思います。
※今日神庭さんがお話しされていた、#フェミサイド の解説記事はこちら👇https://t.co/SWznkuIpP8