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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

21.08.04

トランスジェンダー選手の出場から考える“公平性”
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

BuzzFeed Japan News 副編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただくのはこちら!


『トランスジェンダー選手の出場から考える“公平性”』


吉田:オリンピック史上初のトランスジェンダーの女性選手として注目された、ニュージーランド代表、ローレル・ハバード選手。一昨日、重量挙げ・女子87キロ超級に出場し、バーベルを一気に頭上に挙げる前半の『スナッチ』を3回とも失敗し、記録なしで終わりました。ハバード選手は2013年、性別適合手術で男性から女性に性別を変更。手術を受けるまでは男子の種目に参加していたことなどから、「公平性が失われる」、「女子選手が不利になる」といった声があがっていました。ハバード選手は、もともと、男子の重量挙げの選手だったんですよね?


神庭さん:ハバード選手は現在43歳で10代から20代までは男子選手として活動していて、20歳の時にはですね、男子としてニュージーランド国内のジュニア記録も樹立しています。ただその後、3年後にですね、一度引退して競技団体の役員になっているんですね。ニューズウィークの記事によると「すごく男っぽいことに挑戦すれば、そうなれるのではないかという思いで重量挙げという競技を選んだ、だけれども、実際はそうはなれなかった」と。「プレッシャーが大きすぎて、耐えられなくなった」ということで引退の道を選んだということなんですよね。それが再び、35歳の時にトランスジェンダーであることを公表して、性別適合手術を受けて、今度は女子として大会に出始めて、2017年の世界選手権では銀メダルをとっています。今はですね、女子87キロ超級で世界ランキング7位で、オリンピックを終えてですね、引退表明をされて、「この大会に参加できることにしてくれた、あらゆる人に感謝したい」と、「特に、日本の人々や、日本政府は大きな犠牲を払ってくれた」と話したということです。


ユージ:これはつらかっただろうなぁ…。男性として生まれて、多分、自分の中では、何か違うっていう変化があって、でも、「男にならなきゃ!」、「男になりたいんだ!」って…。そういう気持ちで重量挙げをすれば“男っぽい”って思われるかなっていう葛藤の末、この競技を始めたっていうのが、ものすごくいろいろと考えさせられますね。


神庭さん:ちょっと切ないですよね。


吉田:オリンピックでは、男性から女性に性別を転換した、トランスジェンダーの選手が女子の種目に出場することが認められているということなんですけれども、どういった条件があるんですか?


神庭さん:国際オリンピック委員会(IOC)は、2004年に性別適合手術から2年経過しているということなどを条件にして、トランスジェンダー選手の五輪参加を認めたんですね。ただ、この条件というのは、その後、変わっていて、2015年にIOCのガイドラインが変わってですね、性別適合手術は不要になりました。じゃあ、どういうルールになったかというと、男性ホルモンの一種である『テストステロン』の血中濃度が1年にわたって基準値を下回れば、女子の競技に出場できることになったんですね。他にも性自認が女性であることを宣言して、それから4年間は変更してはダメですよというような条件があるんですね。ハバード選手も、こうした条件を満たしたうえで五輪に出場したということなんですね。


ユージ:中には、これでも、「ダメでしょ!」っていう人もいると思うんですけど、この条件を聞いていると、僕は、結構高いハードルをクリアして女子選手として出場しているなとは思うんですけどね。


神庭さん:そうですね、課された条件をハバード選手はクリアしているということなんですよね。


吉田:条件は満たしてはいるんですけれども、「公平性が失われる」といった声もあがっていたということですよね?


神庭さん:ベルギー代表として、東京五輪の同じ女子87キロ超級に出場したアンナ・ファンベリンヘン選手は「五輪出場やメダル獲得など人生を変えるチャンスを失う選手もいる」というふうに言っていて、アンフェアだと訴えているんですね。専門家の間でも、男性として思春期を過ごしたトランスジェンダーの選手が、骨とか筋肉の密度などの面で有利だと指摘する声もあります。一方でロイター通信によると、IOCの医療部門の責任者は「トランスジェンダーの選手が有利かどうかの判断はできない」と述べたということなんですね。今のところ、絶対的なルールとかエビデンスは確立されていない状況です。


ユージ:トランスジェンダーの選手の出場とそれに対する「公平性が失われる」という反発の声、神庭さんはどのようにご覧になっていますか?


神庭さん:これは非常に難しい問題で、申し訳ないんですけど、僕も明確な答えは持ち合わせていないです。ただ、誰かを迎え入れるということが、他の誰かを排除することに繋がらないようにですね、透明性と公平性の高いルールが必要だとは思っていて、『近代五輪の父』と呼ばれるピエール・ド・クーベルタン男爵は、実は女性のスポーツにすごく否定的で、「女性がボールを投げようとしている姿は見るも無残で拍手をしているほうが自然」、「女性の最大の功績は、自分のために記録を求めることよりも、彼女の息子たちが優秀であるように奨励することである」みたいな、今だったら絶対に炎上するようなことを言っていて、実は第1回のアテネ大会も女子禁制だったんですよね。


ユージ:そうだったんですね!?


神庭さん:そういう逆風の中から、女性アスリートたちが頑張って、少しずつ女性の競技が広がっていって、日本勢でいったら、陸上の人見絹枝選手とか、競泳の前畑秀子選手の活躍のうえに、今のオリンピックがあるんですよね。なので、性的少数者も含めて、「“完全な平等”を実現するには男女の枠をなくしちゃえばいいじゃない!」みたいな話もあるんですけど、あんまり軽々しくそういうことも言えないなと思っていて、トランスジェンダーの選手の権利も大事だし、一方で女性アスリートにとっての『納得感』とか、『公平性』も非常に大事ですので、そこは丁寧に議論してほしいと思いますね。


ユージ:そうですね、今はパッと答えは出ないですけど、まだまだ議論していく必要はあるかなと思いますね。



そして、今日の #ユジコメ はこちら。









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