21.06.09
立川の男女殺傷事件、被害者は“実名”、加害者は“匿名”に批判の声
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。BuzzFeed Japan News 副編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!
『立川の男女殺傷事件、被害者は“実名”、加害者は“匿名”に批判の声』
吉田:東京都立川市のホテルで、男女が刃物で刺されて、女性が死亡し、男性が負傷した事件で、先週水曜、19歳の少年が逮捕されました。この事件をめぐって、一部のメディアが、派遣型風俗店に勤務していた被害者の“実名”を報道したことに対し、批判の声があがっています。一方で、逮捕された19歳少年は未成年であることを理由に名前が伏せられています。被害者は“実名”、被疑者は“匿名”という構図での報道に批判の声が上がり、ツイッターでは一時、『実名報道』がトレンド入りしました。
被害者の“実名”報道を受けて、性風俗で働く人を支援する団体『SWASH』は、要望書を発表したようですね?
神庭さん:はい、そうなんです。SWASHは要望書で「性風俗で働くほとんどの人々は、性風俗の仕事に従事していることを家族や友人などに内緒にしている」というふうに指摘しているんですね。過去にも風俗店が関係する事件や火災で、氏名や顔写真とかが特定されるなど、報道によるプライバシー侵害とか、それに起因した誹謗中傷、人権侵害が起こってきたというふうに指摘してるんですね。そうした経緯を踏まえて、「今回の殺人事件においても、被害者を特定するような報道やネットでのプライバシー侵害が懸念されます」ということで、警察やマスコミ各社に対して、プライバシー保護を徹底するよう求めているんですね。
吉田:性風俗で働く方が、事件の被害者となった場合の実名報道ですが、神庭さんご自身はどのようにご覧になっていますか?
神庭さん:今回のケースで言えば、やはり名前を出すべきではなかったというふうに思います。それを言うと、「夜職の人たちへの差別ではないか!?」とか、「隠しておきたい仕事だというのか!」という意見が出てくるかもしれないんですけど、現に根深い差別がある状況で、親バレや彼氏バレしたくないという方もいらっしゃるので、“亡くなったからプライバシーは関係ないんだ!”と言わんばかりの報道はちょっと乱暴かなと思いますし、あと今回の問題はですね、報道機関によって、“住所・氏名・職業など全部出す”というところとか、“名前は出すけど職業は伏せる”というところとか、逆に“職業は出すけど名前を伏せる”とか、みんなバラバラな対応をとったんですね。その結果、それらの情報をつぎはぎして、被害者のものとみられるSNSを特定して、拡散する人が現れてしまったんですね。検索からの流入を狙った『トレンドブログ』と呼ばれるサイトなんですけれども、事件が起きるたびに「〇〇の真相は?」「実名は?」みたいなことを報じる煽り見出しをつけてアクセスを稼いでいるんですが、そういうところに情報が出てしまったと…。だから、メディアは“自分の会社がどう報じるか”だけではなくて、一人歩きした情報が、情報を拡散させたい第三者にとっての『ヒント』とか、『材料』となって、結果としてプライバシー侵害とかになってしまう『悪意のパズル』が完成してしまうという、そういう可能性も念頭に置いておく必要があるのではないかなと思います。
ユージ:やっぱり、個人情報を出すというのはね、すごく…、ね?どうなのかな?と僕も正直、思うんですけど、一方で19歳の少年は“匿名”報道なんですよね?これはなんでなんですか?
神庭さん:少年法はですね、加害少年の実名など、本人を推定できるような『推知報道』というのを禁じているんですよね。家庭裁判所の審判に付された少年、又は、少年の時に犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等、事件の本人であることを推知することができるような記事とか、写真を載せてはいけませんよということが条文に書かれていて、罰則はないんですけれども、そういうふうに定められていて、少年には『可塑性』というのがあって、大人に比べて柔軟で更生の余地も大きいので、「社会全体として守っていきましょうね」という考えに基づいて、こういうふうに規定されているんですよね。
吉田:先月、少年法が改正されましたよね?これによって、18歳と19歳の少年の実名報道が今後、可能になると?
神庭さん:はい。改正少年法は来年4月に施行されるんですけれども、18歳と19歳は『特定少年』とされて、起訴されれば実名報道の対象になるんですね。刑事裁判にかけられる犯罪の範囲も広がることになります。背景としては、元々、18歳選挙権がすでに導入されていますし、来年4月からは民法上の成人年齢も20歳から18歳に引き下げられるんですね。選挙権があって、親の同意がなくても契約できるんであれば、大人と変わらないと言えないまでも、ある程度、大人に近い扱いをしましょうというロジックでそういうふうに進められているんです。
吉田:その改正についてはどのような印象を持たれていますか?
神庭さん:選挙権とか契約の面で大人扱いするのであれば、僕は、犯罪面においても同じように成人扱いしないと整合性がとれないと思うので、18~19歳に関しては少年法の対象外で良いのではと思っているんですけれども、一方でですね、「少年犯罪が増えている」と、「凶悪化しているから厳罰化するんだ」という主張は前提が間違っていて、実は、少年犯罪は長期的に減り続けていて、1980年代のピークに比べると90%くらい減少しているんですね。殺人とかの凶悪犯罪も激減してまして、むしろ、“若者の犯罪離れ”とすら呼ばれているくらいの状況なので、“厳罰化すべき・すべきではない”のどちらの意見でも良いんですけど、前提をきちんと把握したうえでですね、冷静に議論してほしいなと思いますね。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET#ワンモ #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) June 9, 2021
『立川の男女殺傷事件、被害者は“実名”、被疑者は”匿名”に批判の声』
改正少年法が来年4月から施行されますが、18~19歳は特定少年として、起訴されれば実名報道の対象になり、刑事裁判にかけられる対象犯罪の範囲も広がるとのこと。
#リポビタンD TREND NET#ワンモ #ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) June 9, 2021
2016年からは18歳選挙権も与えられているし、来年4月からは18歳で成人と認められるようになります。
18歳はもう大人だとみなされるのに、18~19歳でも起訴されれば実名報道というのはギャップがあるように感じます。
#リポビタンD TREND NET#ワンモ #ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) June 9, 2021
選挙権を与えて大人とみなすのであれば、18歳の人は成人であって、18歳から実名報道をされてもいいのではないかと思いました。