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24.04.09

岡口基一判事の弾劾裁判
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「岡口基一判事の弾劾裁判」

吉田:SNSへの投稿で、殺人事件の遺族を中傷したなどとして訴追された仙台高裁の岡口基一判事の弾劾裁判で裁判官弾劾裁判所は3日、岡口氏を罷免する判決を言い渡しました。神庭さん、まずは「弾劾裁判」について、改めて教えて下さい。


神庭さん:弾劾というのは罪や不正について調べて、責任を厳しく追及することです。裁判官弾劾裁判所は、憲法の規定に基づいて設置されているもので、裁判官を辞めさせるべきかどうかを判断するための裁判所です。判断基準は2つあります。1つ目は、職務上の義務に著しく違反するか職務を甚だしく怠った。2つ目は、職務の内外を問わず裁判官としての威信を著しく失う非行があった。この2点に合致するかどうか、裁判官役の国会議員が審議します。裁判官役の「裁判員」は衆議院7人、参議院7人の合計14人の議員が務め、審理に関与した裁判員の3分の2以上が賛成すれば罷免=クビを言い渡すことができるようになります。


ユージ:一般的な裁判とは違うんですね。どうして弾劾裁判という特別な制度があるんですか?


神庭さん:裁判官は独立した存在として、公正な裁判をしないといけないということです。時には国や行政の決定にストップをかけたり、違憲判決を突きつけたりすることもあります。なので、国会や内閣からの不当な影響や忖度が生まれないようにする必要があります。そのため、裁判官の身分は憲法で手厚く保障されており、行政機関が裁判官を懲戒処分にすることはできません。その代わりに弾劾裁判という特別な制度が設けられています。


吉田:今回、岡口判事が問題視された行為を具体的に教えて下さい。


神庭さん:時事通信や産経新聞などの報道によると、岡口判事は2017年東京都内で起きた女子高生の殺人事件をめぐって、旧Twitterに「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」「そんな男に、無残にも殺されてしまった17歳の女性」などと投稿。2019年には「遺族は俺を非難するよう東京高裁に洗脳された」とFacebookに書き込みました。弾劾裁判所の裁判長は「遺族の尊厳を侵害し、表現の自由として裁判官に許容される限度を逸脱した」と指摘。SNS投稿が「著しい非行」にあたるとして、罷免を言い渡しました。


ユージ:冷静に考えたら岡口判事がなぜこんなことをSNSに投稿するのか、ちょっと理解に苦しむところもあります。


神庭さん:朝日新聞の傍聴記事によると、女子高生殺人事件について岡口判事としては死刑相当だと感じたのですが、実際は無期懲役だった。岡口判事は弾劾裁判の本人尋問で次のように語ったそうです。「量刑がおかしいと感じ、紹介しなくてはいけないと思った」「この文言を読んだ人が(被告は)死刑だろうと思って判決のリンクを開くと、結果は無期懲役。そんなギャップを感じてもらおうと思いました」「こんな判決だと浮かばれないという思いでツイートしたが、真意が伝わらなかった」と言っています。文言自体は「判決の要旨からそのまま抜き出した」もので、付け加えたのは「無惨にも」という言葉だけだったそうです。そうだったとしても、なかなか伝わりませんよね。


ユージ:はっきり言ってもっと厳しい処分をするべきだと言う心理は伝わります。ただ、言ってる内容がSNSに書くことではない立場である人ですから。少し気になるところです。攻撃的で配慮が足りないかなと感じますよね。


神庭さん:仮に岡口判事が本当にそう感じていたとしても、「苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」みたいなネットニュースの釣り見出しのような言葉選びでは、到底その思いは伝わらないし、遺族に限らず不快感を与えてしまうと思います。朝日新聞のその記事には、《ネット巧者だった「白ブリーフ裁判官」》という見出しがついていたのですが、僕の印象では岡口判事はあんまりSNSの使い方が上手ではないかなと。むしろ危うい印象を抱いていました。補足すると「白ブリーフ裁判官」というあだ名は、過去にSNSで白ブリーフ一丁の写真を投稿していたからです。それ自体は趣味の世界なので自由にしたらいいと思います。僕もそういう写真を見てなんだか面白い裁判官だなと思っていたのですが、その後に飛び出した遺族感情を刺激するような発言は明らかに行き過ぎだし、不適切だったと思います。弁護側は岡口判事に「他者の感情を十分に理解できない障害がある」と訴えていて、判決でもその点には一定の理解が示されました。


吉田:弾劾裁判では「罷免」という結果でしたが、どう思いましたか?


神庭さん:SNSの投稿内容には問題がありますし厳しい処分が必要だと思う反面、罷免・クビが適切かというと、少し重すぎる感じもします。というのも、過去に罷免になった裁判官を振り返ると捜査情報を漏洩した、裁判関係者から接待を受けた、検事総長の名をかたって総理大臣に電話してその録音を記者に聞かせた、少女3人に児童買春・ストーカー・盗撮などメチャクチャで言語道断なものばかりです。そりゃクビでしょ、という内容です。こうした過去の判例に比べると、今回は「罪と罰」の重みが釣り合っていないです。弾劾裁判で罷免されると裁判官として失職するだけでなく、法曹資格を失って最低5年は弁護士としても働けなくなる。これは相当重いです。現状だと、罷免か罷免しないかの2択しかありません。僕としては、死刑と無期懲役の間に「終身刑」があればと思うのと一緒で、中間の選択肢があると今回妥当だったんじゃないかなと思います。


ユージ:本当ですね。この2択しかないって知りませんでした。確かに、間の処置があってもいいのかもしれません。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。




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