24.03.05
AIによる著作権侵害について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
「AIによる著作権侵害について」
吉田:文化庁は先月29日、AIによる著作権侵害に関する考え方のとりまとめ案を文化審議会の小委員会に提示しました。神庭さん、AIによる著作権侵害について、どんなことが懸念されているのでしょうか?
神庭さん:文章や画像、音楽、動画などを生成する「生成AI」は、無から有を生み出すわけではなく、出力の前段階で大量のコンテンツを学習する必要があります。利用者の指示を受けると、過去の学習パターンに基づいてコンテンツを生成するわけですが、コンテンツのクリエイターや著作権者の側からすると自分のコンテンツを学習されて、そっくりそのまま無料で再現されたりしたら商売あがったりだという話があります。一方で、AIを提供する事業者からしても、思いもよらず著作権侵害をしてしまうかもしれない…となるとリーガルリスクが怖くて開発・研究が停滞しかねません。置かれた立場で、180度受け止めが変わってくるという事態です。
吉田:いまの著作権の法律では、AIに関してどんな扱いになるのでしょうか?
神庭さん:大前提として、著作権法で保護される「著作物」は、「思想又は感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を指します。単なる事実やデータ、誰が表現しても同じになるようなありふれたもの、表現以前の「アイデア」にとどまるものは著作権法の保護の対象とはなりません。また、著作権法の30条4項では、原則的にAIが著作物を無断で学習することを認めています。ただし、「著作権者の利益を不当に害する場合」や「著作物に表現された思想や感情を自ら享受したり、他人に享受させたりすることを目的」とするようなケースはNGですよ、と書かれています。
ユージ:なるほど。なんだか分かったような、分からないような感じもしますね。ちょっと曖昧ですね。
神庭さん:どこからが著作権で保護されない「アイデア」で、どこからが守られる「表現」なのか?「著作権者の利益を不当に害する場合」って具体的にどんなケースなのか?自分たちは当てはまるのか?とか色々、疑問が湧いてくると思います。基本的にはケースバイケースで司法の場で解決していくしかないのですが、ものすごい目まぐるしいスピードでAIが進化しているなかで、裁判して判例ができるのを待っていては追いつかないことも多いわけです。AIの開発は進めた方がいいけど、著作権者たちの不安・不満を置き去りにすることはできない。であれば、もう少し踏み込んで考え方を示しましょう、というのが今回の文化庁の取りまとめ案です。
吉田:では今回の「とりまとめ案」は、どんな内容なのでしょうか?
神庭さん:AIに特定のクリエイターの作品を集中的に学習させ、そのクリエイターや作品に対する需要が、AI生成物に取って代わられてしまうような場合は、著作権侵害にあたる可能性が出てきます。作風や画風そのものはアイデアなので保護されませんが、特定した作家の少数作品を集中的に追加学習させると、単に作風にとどまらず「創作的表現」のレベルで類似するということが起こり得るわけです。例えば、AIに「鳥山明先生風のタッチで、ドラゴンボールっぽい漫画をつくって」と指示して、本当にそんな作品がポンポン出てきてしまったら大問題なので、妥当な判断かなと思います。
ユージ:確かにそうですね。他にはどんな指摘がされていますか?
神庭さん:事業者が海賊版サイトだと知りながら学習データを収集すると、AI事業者も著作権侵害の責任を負う場合があります。「漫画村」みたいな海賊版サイトからガンガン学習されてしまったら、他でどんなにデータ提供を規制したとしても水の泡になってしまいます。これも当たり前の話かなと思います。それから、新聞社や出版社などが複製防止の措置をとったコンテンツで、将来的にデータベースとして販売される可能性があるものに関して、無断で学習させたら著作権侵害になり得るという考えも示されました。アメリカではニューヨーク・タイムズが数百万本の記事を無断で学習されたとして、オープンAIとマイクロソフトを提訴しています。AI事業者の「タダ乗り」を許さないような実効的な仕組みが必要かなと思います。
吉田:もしかしたら、業者だけではなく、個人でも注意が必要になってくるかもしれませんね。神庭さんは、生成AIと著作権の問題について、どう思いますか?
神庭さん:文化庁の素案に対するパブリックコメントでは2万5,000件もの意見が寄せられました。GoogleやメタなどAI推進側の「AI開発が萎縮する」「イノベーションが阻害される」といった意見に対して、著作権者側からは「適切な対価を還元すべき」「権利侵害のチェック負担が非常に重い」などの声があがりました。両者にはまだまだ大きな隔たりがあり、溝を埋めていくための努力が欠かせないかなと思います。具体的にEUでは、オプトアウトと言って権利者がAIによる学習を拒否することができます。私の作品を学習して欲しくありませんと意思表示ができます。日本でも同様の規定が必要ではないかと僕は思っていて、その際に「AIが学習を拒むなら検索ページに載せずにGoogleから締め出してやるぞ」「検索順位を下げてやるぞ」みたいな脅しができないように、「検索はOK」でも「AI学習はNG」といった細かな要望が出せるようにしていただきたいなと思います。
ユージ:もしかしたら、アーティストの中では真似するのはイヤだけど学習の材料として使っていいですよというのは本人が選べるようにするのが1番理想的ですよね。
神庭さん:そうですね。むしろどんどん学習してくださいという人もいると思うので、その意思表示を確認することが大事かなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET#ユジコメ ①…
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 5, 2024
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