24.02.27
日本版DBSについて

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
「日本版DBSについて」
吉田:政府は、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」を巡り、新たに就労を希望する人だけでなく、既に働いている人も対象とする方針を固めました。神庭さん、「DBS」という制度について、改めて教えて下さい。
神庭さん:大もとはイギリスの制度です。イギリスでは、性犯罪歴などがある人が子どもや高齢者、障害者ら介助を必要とする大人と接するような仕事に就くことを制限しています。犯罪歴のチェックを担う政府系機関が「前歴開示・前歴者就業制限機構」と言いまして、英語で「Disclosure and Barring Service」頭文字をとってDBSです。朝日新聞によると、イギリスのDBSは就労制限の対象となる8万人分のリストを管理し、雇用主に伝えているそうです。
ユージ:「日本版のDBS」はどんな感じになりそうですか?
神庭さん:各社が報じた法案の骨子によると、まず対象となる職業ですが、イギリスのように高齢者や障害を持つ大人は含まれず、「子ども」に接する可能性がある仕事に限られます。このうち学校や保育所、幼稚園では、性犯罪歴の確認が義務付けられますが、民間事業者の場合、参加は任意です。塾や学童、スポーツクラブ、水泳教室、芸能事務所、ベビーシッターのマッチングサイトといった民間業者向けには、任意の認定制度を設けて、認定を受けた事業者は、性犯罪歴の照会が必須になるということです。
吉田:確認が義務付けられる犯罪はどういったものでしょうか?
神庭さん:刑法犯だけではなく、痴漢や盗撮、自治体の迷惑防止条例なども対象となる見通しです。犯罪歴を照会できる期間は禁錮刑以上の場合は刑を終えてから20年、罰金刑以下なら10年とする方向で調整が進んでいます。刑法では「刑の消滅」といって、禁錮以上の場合は刑を終えて10年、罰金以外の場合は5年経つと刑の言い渡しが効力を失います。公務員や医師の就業制限もここで一旦、チャラになります。これはDBSの前科照会の期間の方が刑の消滅より長いので、整合性が焦点になりそうだと言われています。しかし、それ以上に議論を呼びそうなのが、新規の採用者ではなくて、すでに雇ってしまった人の対応です。
ユージ:そうです!それが気になります!すでに雇っている人に性犯罪歴があることが分かったらどうなるのでしょうか?
神庭さん:共同通信などの報道によると、まずは子どもと関わらない部署への配置転換を促します。ただ、それが難しい場合、政府は「解雇も許容されうる」という考えを示す方向で検討しているそうです。あわせて解雇権の乱用に繋がらないように、ガイドラインを整備するということです。これから採用する人はともかく、すでに雇用している人を解雇するというのは重い判断になります。実際問題、「性犯罪の前科のある人がいることがわかりました」「すぐに配置転換してください」という話になったら、「分かりました、異動します」とはならず、その時点で自主的に退職する人が大半ではないかと思います。
吉田:様々な議論を呼びそうな、この「日本版DBS」について神庭さんはどう見ていますか?
神庭さん:総論では賛成です。昨年、学習塾「四谷大塚」の講師が生徒の女児を盗撮した容疑で逮捕された事件で大きな衝撃が広がりました。職場で起きた事件ではありませんが、最近も北海道で、女児に睡眠導入剤を飲ませ集団でわいせつな行為をした疑いで5人の男が逮捕されるという胸が悪くなるようなニュースもありましたよね。「魂の殺人」とも言われる性犯罪から子どもを守るためにも、日本版DBSは導入すべきですし、塾や学童など民間が認定制にとどまるのは不十分だと僕は思います。
ユージ:そうですよね。ただ、一方で細かいところでは課題も多いのではないでしょうか?
神庭さん:その通りで、各論の部分で課題も多いです。法律の世界には、「事後法の禁止」「法律不遡及の原則」といって、新しく作った法律が後から遡って過去に適用されることで、関係者が不利益を被ることがあってはいけない、という考え方があります。今回のケースでは、結果的に後からできたルールによって、仕事を失う人が出てくる可能性があるかもしれません。そういう人たちが「この法律は憲法違反だ!」「職業選択の自由に反する」と主張して訴訟を起こしてきたとしても、「いやいや、そうじゃないんです」と言えるだけの理論武装をしっかりして、条文に穴があれば塞いでおく必要があると思います。
吉田:ほかに気になっているところは何でしょうか?
神庭さん:名簿の管理も相当、厳重にやらないといけません。例えば、マイナンバーをめぐっては同姓同名の別人にカードを交付するミスも起きました。DBSが理由で解雇や不採用になり、「よく調べたら同姓同名のミスでした。てへぺろ」では済まされません。人ひとりの人生がかかってくる話なので、適正な運用がなされているか、第三者が監視するような仕組みも必要かなと思います。あくまでも性犯罪の前科がある人間を「子どもに近づけない」ということが狙いです。社会のあらゆるところから排除しよう、という話ではありません。追い込まれた人が自暴自棄になって暴走することがないように、しっかり更生させて、治療やカウンセリングを受けさせることも、再犯防止の観点からは必要じゃないかなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 27, 2024
DBS(Disclosure and Barring Service)は「前歴開示・前歴者就業制限機構」を意味する言葉です。性犯罪歴がある人が子供と接する仕事に就くことなどを制限する制度を持つイギリスを参考にして、日本国内でも類似の法制度が整備されようとしています。
#ユジコメ ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 27, 2024
残念ながら日本でも子供に対する性犯罪が発生している現状を鑑みると、「日本版DBS」の導入に概ね賛成です。罪を犯した人の更生や社会復帰はサポートすべきですが、その環境を整備する意味でも就業できる仕事の幅に制限を設けてもよいのではないでしょうか。
#ユジコメ ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 27, 2024
一方で懸念は情報管理にあります。犯歴に関わる情報は取り扱いに細心の注意が必要で、当事者の社会復帰を妨げない仕組みが大切です。性犯罪歴がある人の就職時など、企業側が情報を照会した際に適切な範囲に適切な情報だけが伝わる法制度の整備が重要だと思います。