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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

23.11.14

育児休業の給付率引き上げ案について
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「育児休業の給付率引き上げ案について」

吉田:神庭さん、まずは政府が進める少子化対策の一環として厚生労働省が検討している内容について教えて下さい。


神庭さん:複数の報道によると、両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合に最大28日まで給付金の支給と社会保険料の免除を合わせて手取り額の100%になるようにします。これまでは、カバー率が手取りの8割くらいだったので、2割のアップですね。2025年度からのスタートを目指しているということです。


吉田:この案の狙いとしては、育休をもっと取ってもらおうということでしょうか?


神庭さん:そうですね。昨年度の男性育休の取得率は17%ほどで、2025年までに50%にするという政府目標には遠く及ばない状況です。およそ80%という女性の取得率に比べてもかなり落差があります。厚労省が委託した調査でも、育休を取得しなかった男性正社員に理由を尋ねたところ「収入を減らしたくなかったから」という理由が4割弱で1番大きな割合を占めました。カツカツの稼ぎでどうにかこうにかやりくりしている世帯からすると、手取りが2割落ちるのは痛いので、そこがハードルになっている部分がありました。


ユージ:今回の案は、金銭的な理由で育休を取れなかった人には、ありがたい変更かもしれませんね。


神庭さん:政府としては短期間ではなく、できるだけ長く取って欲しいという考え方もあります。以前「取るだけ育休」について解説した際にもお伝えした通り、女性の9割以上が育休を6ヶ月以上取得しているのに対して、男性の約半数は2週間未満に留まっています。腹の立つ話ですが、月末に1日だけ育休を取得して、社会保険料の免除を受ける抜け穴的なテクニックが「裏技」として横行しています。育休の趣旨に反する使い方なので、厚労省はルールを厳格化することで塞いできたのですが、いまだ完全に抜け穴を塞ぐには至っていません。今回「14日以上」としているのは、そうしたある種の「育休ハック」を抑制する狙いもあるのではないかと思います。


ユージ:子育て世帯にとっては有利な見直しのように感じられますが、どうでしょうか?


神庭さん:両手を挙げて賛成したいところですが、手放しで喜べない事情もあります。ネット上では「制度には賛成ですが」とか「趣旨は分かるが」といった、奥歯にものの挟まったような意見が少なくありません。国語のテストだと、だいたい「だが」「しかし」といった逆接の後に著者の本音や重要なポイントが隠されています。なので、今日は「育休手取り10割」の死角、隠された課題についても掘り下げていきたいと思います。1つ目の死角は「職場が回らない!」です。


吉田:それは、そうなりそうですよね。


神庭さん:人手不足で補充がないなかで、ギリギリの人数で仕事をなんとか回している職場は多いです。育休を取得する子育て世帯と同じくらいとは言いませんので、せめて5分の1、10分の1でも「残された側」にも目を向けられないかと思います。本来なら補充人員をあてるべきですし、それができないにしても育休のフォローに回って負担が増えた人や、穴埋めの仕事を1.5人分とか2人分こなした人は、しっかり評価してボーナスなどで報いるべきだと思います。そういうことをやっていかないと、子育て世帯とそれ以外とで無用な分断が生まれてしまうのではないかと思います。


吉田:2つ目の死角は何でしょうか?


神庭さん:「中小企業がキツすぎる!」ということです。日本商工会議所の最近の調査だと、男性育休の対象者がいる企業のうち取得者ゼロの企業が実に63.2%を占めます。1年前の別の調査でも、男性育休の課題として「社員の育休時に対応できる代替要員が社内にいない」(52.4%)「採用難や資金難で代替要員を外部から確保できない」(35.7%)といった声が上がっています。日本企業の99.7%が中小企業です。大企業だけでなく、人手不足の中小企業を応援していくのか真剣に考えていかないといけないかなと思います。


ユージ:3つ目の死角は何でしょうか?


神庭さん:「財源どうするの?」ですね。先日、異次元の少子化対策の財源として、政府が子育て世帯以外の医療保険料を引き上げることを検討していると報じられました。育休の給付金は雇用保険から賄われていて、労使折半の保険料や税金があてられています。朝日新聞によると、給付総額はこの昨年までの10年ほどで3倍近くに膨らんでおり、2025年度には資金残高が575億円不足する見通しになっています。すでにサラリーマンは給与の3割を社会保険料で天引きされており、現役世代の家計はパンク寸前ですから。高齢者世代も含めて、世代間の公平な負担の仕組みを考える必要があるかなと思います。


吉田:神庭さんは今回の案について、どう思いましたか?


神庭さん:Yahoo!ニュースのコメント欄で、「飛行機すら乗れないのに、機内サービスばかり充実させても少子化問題は解決しません」とコメントしている人がいて、本当にその通りだなと思いました。子育て世帯を助けるために、独身世帯や若者世帯にしわ寄せがいくようだと本末転倒です。結婚して子どもを授かるどころではなくなってしまいます。三井住友海上はこの春、誰かが育休を取ったらその同僚に最大10万円の「育休職場応援手当」を出すと発表しました。素晴らしい取り組みですし、手取り8割を10割にする前に、国はこっちを支援すべきかもしれません。手取り10割で育休を取って、「育休明けすぐに退職」みたいなモラルハザードが起きないように、そういう場合は返還を求めるなどの対応も必要かなと思います。


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