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23.11.07

介護保険料の見直しについて
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【介護保険料の見直しについて】

吉田:厚生労働省は、65歳以上が支払っている介護保険料に関し、年間所得が410万円以上の人の保険料を増額する案の検討に入りました。神庭さん、まず介護保険について、どんな仕組みなのか、教えて下さい。


神庭さん:高齢化に伴って介護を必要とする人が増え、介護期間も長期化しています。高齢者の介護を社会全体で支えるため、1997年に介護保険法が成立し、2000年に施行されました。年間の予算は13.8兆円。財源としては、国や都道府県・市町村などの公費が半分。残りの半分が、加入者の納める保険料になります。保険料にも2種類あって、65歳以上の高齢者が払う「第1号保険料」は全体の23%、40~64歳が払う「第2号保険料」が27%を占めます。


吉田:加入者は月にだいたいどれぐらい保険料を払っているのでしょうか?


神庭さん:住んでいる自治体によって違うのですが、65歳以上の人は全国平均で月6,014円を年金から天引きされます。40~64歳の会社員の場合だと、健康保険料と一緒に給与から天引きされます。給与によっても変わってきますが、今年度の見込み額は6,216円。負担は年々増え続けていて、2000年度に介護保険がスタートしてから、高齢者は2倍以上、現役世代は3倍近くまで保険料負担が膨らんでいます。これらの保険料とは別に、訪問介護、通所介護、定期巡回、老人福祉施設などの介護サービスを受ける際には、利用料の一部を負担する必要があります。負担割合は40~64歳で利用料の1割です。65歳以上は所得によって1~3割の負担になります。


ユージ:そんな中、今回の検討案では、それがどんな風に変わりそうですか?


神庭さん:65歳以上が払う保険料について、現役世代並みの所得がある人には、より多く負担してもらうことが検討されています。読売新聞などの報道によれば、従来は所得によって9段階に分けて保険料を設定していたのですが、これを13段階に増やします。現状だと所得410万円以上の人の保険料は、基準額の1.7倍まででしたが、これを所得に応じて1.8~2.6倍まで引き上げます。そうやって保険料収入が増えた分は、全体の3割以上を占める低所得層の保険料引き下げに回すということです。


ユージ:変更する目的は、やはりもっとお金が必要だから、ということですか?


神庭さん:とにかくお金がいくらあっても足りないから、取れるところから取ろうということですね。厚労省の資料によれば、2000年から2022年の間に65歳以上の加入者は3,589万人まで1.7倍に増えました。要介護(要支援)の認定者は218万人から690万人へ、介護サービス利用者も149万人から516万人に増えています。給付費・事業費も増え続け、20年余で3.2兆円から10.8兆円まで膨らんでいます。今回の見直し案を考えるうえでのキーワードは「応益負担から応能負担へ」だと思っています。


ユージ:難しい言葉が出てきましたが、どういった意味でしょうか?


神庭さん:「応益負担」というのは、所得や貧富の差に関係なく、自分の受けるサービスに対してお金を払いましょう、という考え方です。介護保険は、もともと誰でも1割負担の応益負担的な考え方から出発しました。ただ、それだとどうにも回らなくなってきたので、払う能力がある人により多く負担してもらう「応能負担」的な色彩を強めてきたという経緯があります。今回の見直し案もその一環と言えます。


吉田:検討されている見直し案について、神庭さんはどう考えますか?


神庭さん:評価できる部分と、できない部分があります。まず、評価できる部分は「祖父母世代に比べて孫世代が1億円損をする」とも言われる世代間格差が問題化するなかで、現役世代にツケ回しをする前に、まず稼いでいる高齢者に負担を求めることで、高齢者の世代「内」格差を縮小しようという姿勢はいいのかなと思います。評価できない部分はたくさんありますが、応能負担を強めて取れるところから取るという方向性を突き詰めていくと、どこかのタイミングで「高齢者の負担はもう限界。現役世代の皆さんもっと払ってください」となりそうな予感がひしひしとしますね。つまり、今回の一部高齢者の負担増は、布石というか露払いで、ゆくゆくは現役世代の負担増を求めてくるのではないか?という懸念を抱いています。


ユージ:そういう気もしなくもないですね。他に課題はあるのでしょうか?


神庭さん:「取れるところから取る」という時に、月々の給与だったり年金だったりの「フロー」ばかりに注目しています。本来は、貯蓄や資産「ストック」も合わせて見ていくべきだと思います。日本の家計の金融資産の世代別の保有内訳を見ると、60代以上が63%を占めます。今回の保険料増額の話はあくまでもフローの収入だけを見て判断していますが、実際には「年金収入は大したことないけど、資産はたくさん持っているよ」という世帯もあるはずです。現役世代は、年金、健康保険、介護保険で収入の3割を引かれる「天引き地獄」に苦しんでいて、現実問題もうこれ以上負担を増やすのは難しくなってきています。住民税非課税世帯に関する議論にも通じますが、マイナンバーなども活用しながら、「本当に困っている人」と「実は結構余裕がある人」をきちんと選り分けして、給付と負担のバランスが取れた社会保障をやっていただきたいなと思います。介護保険や健康保険にも、年金でいうところのマクロ経済スライドのように、現役世代の負担が青天井で増えないようにキャップをはめる仕組みが必要ではないかと思います。





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