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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

23.09.19

リビアで発生した大洪水
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「リビアで発生した大洪水」

吉田:神庭さん、被害がかなり広がっているようですね。


神庭さん:そうですね。死者が1万1000人、行方不明者も約1万人で、最終的な犠牲者は2万人を超えるのではないかとみられています。4万人が家を追われて避難を余儀なくされており、ユニセフは30万人の子どもが洪水の影響を受けると指摘しています。もっとも被害が大きかったのが、地中海に面したデルナという都市です。現地の航空大臣が「街の25%が消えた」と証言しています。


吉田:25%ということは、街の4分の1が消えてしまったということですね。


神庭さん:デルナの航空写真を見ると、実際に街の多くの部分に泥水や土砂が流れ込んでおり、25%という言葉が決して大げさでないことが分かります。橋や道路が土砂で埋まり、海岸線の形まで変わっています。BBCは「車や家全体が流されていた。死体が、私たちの家の中にも流れ込んできた」「5階や6階にいても、誰も生き残れなかったのではないか」といった被災者の方の生々しい証言を伝えています。


ユージ:被害の状況からすると、洪水は相当なものだった、ということでしょうか。


神庭さん:リビアは普段、雨が少なくて乾燥した気候なのですが、たった1日で1年分の降水量を超える暴風雨に見舞われました。「メディケーン」という台風のような低気圧が原因だと言われています。メディケーンというのは地中海のハリケーンを意味する言葉で、メディケーン自体は年に数回発生しているのですが、リビアに直撃するのは珍しいです。三重大学の立花義裕教授は朝日新聞の記事で「通常はメディケーンがリビアまで南下することはない。偏西風の激しい蛇行がリビアでの大雨を引き起こした」と分析しています。


ユージ:乾燥した土地に突然の大雨、それで被害が広がってしまったのですね。


神庭さん:デルナには「ワジ」と呼ばれる枯れ川が通っています。ワジは普段枯れて干上がっているのですが、雨が降ると川になります。その上流に2基のダムがあったのですが、メディケーンに耐えきれず決壊してしまってワジに大量の水が流れ込みました。ワジは岩が多く、水をそんなにたくさん吸収することができません。京都大学の角哲也教授は、NHKなどの取材に対して干上がった川に短時間に大量の水が注ぎ込まれることで「フラッシュフラッド」と呼ばれる鉄砲水のような現象が起きたのではないかと指摘しています。ただ、今回の災害の甚大な被害は単なる天災ではなく人災的な側面もあると僕は感じています。


吉田:ダムがちゃんと管理されていなかったということでしょうか?


神庭さん:リビアでは2011年「アラブの春」で、42年続いたカダフィ大佐の独裁政権が崩壊しました。東西で政治勢力が分裂する内戦状態に陥ったのですが、政府が2つあり首相も2人いる混迷した状態です。今回の洪水で大きな被害が出たデルナは、東側の勢力の統治下にあります。決壊した2つのダムは1970年代につくられたもので、共同通信が引用した現地報道によると、統一政府がないことで維持管理がきちんとできていなかった。リビアには16基のダムがあるのですが、その多くが政情不安で長期間使われないなど、インフラ整備が不十分になっている懸念があるそうです。


吉田:「アラブの春」からずいぶん経っていますが、その後うまくいっていない国も多いのでしょうか?


神庭:そうですね。ひょっとすると、「アラブの春で民主化が進んで良かった。めでたしめでたし」で認識が止まっている人もいるかもしれないですが、リビアのように独裁政権・強権統治が倒れた後、うまくいっていない国も多いです。自由さと命の重さという2つの尺度で世界の国々を4つのカテゴリーに分けたときに、先進国のように【自由で、かつ人が死なない国】というのが1番良くて、独裁的な弾圧国家のように【不自由で、人がたくさん死ぬ国】が最悪だ、というのは当たり前の話です。だが、その間にある【自由だけど人が死ぬ国】と【不自由だけど人が死なない国】のどっちがよりマシなのかというのは議論の余地があります。アラブの春がもたらした影の部分についても、考えていかないといけないのかなと思います。


ユージ:リビアの被災地で今後懸念されることは何かありますか?


神庭さん:遺体の処理もおぼつかない状況で、安全な飲み水が確保できるのか。コレラなどの感染症が広がらないか心配です。この機に乗じて内戦を激化させたり、対立勢力が海外からの支援を妨害したりするようなことが起きないように、国際社会全体で見守っていく必要があるかなと思います。過去には、ロシアの民間軍事会社ワグネルがリビアの内戦に介入したこともありました。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ロシアはリビアの港に軍艦を長期間停泊できるようにするため、リビア東部を支配する軍事組織と協議しているというニュースが最近出てきています。災害支援と同時に、こういうきな臭い動きや地政学的なリスクも警戒しないといけないと思います。


吉田:そして、東日本大震災の時は日本も海外から助けられましたよね。リビアに対して日本ができることは何でしょうか?


神庭さん:日本は水害大国で知見もたくさんあります。寄付などももちろん重要ですが、お金を渡して一時的に復興できたとしても、また同じような水害が起こったら元の木阿弥になってしまいます。ダムなどのインフラ整備のあり方や、災害時にいち早く避難させる仕組みづくりといったノウハウをどんどん提供して、再び洪水が起きてしまった時に、少しでも被害を減らすための知恵をリビアの方々に伝えていけるといいのではないかなと思います。


ユージ:本当ですね。お金を渡すことは、1つの方法としてありますが、知識を支援する・寄付するということはすごく重要なことですね。


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