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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

23.08.08

ビッグモーター問題、なぜ不正をとめられなかったのか
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは引き続き、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「ビッグモーター問題、なぜ不正をとめられなかったのか」

吉田:損害保険各社でつくる「損害保険料率算出機構」は5日までに、ビッグモーターによる保険金不正請求が自動車保険全体に与えた影響を精査する方針を明らかにしました。塚越さん、ビッグモーター問題は大きな広がりを見せています。ここまでの流れをまとめていただけますか?


塚越さん:まず先月25日、兼重宏行社長と息子である副社長が辞任を発表しました。会見は現場への責任を問うものが多く、元社長の対応のまずさが指摘されてます。また、街路樹に除草剤を撒いたのではないか、という疑惑も10年以上前にあったが、現在はしてないと会見で語りましたが、後に複数の店舗でこの数年も除草剤を使った可能性が高いと認めることになりました。特に、石川県かほく市にある商業施設「イオン」の敷地内にテナントとして出店しているビッグモーターでは、店舗前にあった植え込みがコンクリートで舗装されていたことが分かりました。舗装されたところは共有部分で、ビッグモーターに貸している土地ではありません。イオンはビッグモーターに事実確認を求め、場合によっては法的処置も含めて対応するとしています。他にも行政からも様々に調査されており、ビッグモーターには国交省の事情聴取が行われ、抜き打ちの立ち入り検査なども行われています。


ユージ:なぜここまで不正と思われることが続いてしまったのでしょうか?


塚越さん:やはり企業の体質の問題が大きいと思います。例えば、消費者庁は8月4日ビッグモーターが内部通報体制を整えていなかったとして、「公益通報者保護法」に基づく報告を求めています。2022年に改正された、「公益通報者保護法」では、従業員が301人以上の企業に対して、内部通報ができる体制整備を義務付けているのですが、こうした体制ができていなかったため、消費者庁が報告を求めたということです。要するに、ガバナンス(企業統治)が機能せず、コンプライアンス意識が欠如していることが分かるものとなっています。会見でもあったような、社員からの通報を「上司との個人的な確執」として取り合わなかったり、またもみ消していた可能性も考えられます。こうしたことから企業の体質がみえます。


ユージ:この問題で指摘されるのが、悪しきトップダウンの影響ではないか、ということです。いかがでしょうか?


塚越さん:いろいろと報道されているように、ビッグモーターの経営はトップダウン型、つまり上司の言うことは何でも聞く、という体制です。利益追求型のため、上司が檄を飛ばし圧力をかけるのは当たり前で、上司からの査定やパワハラが横行していたのが分かります。そうした中で、部下が不正に手を染めることになりました。短期的な売上を求めるのも問題です。


吉田:この問題では、損保ジャパン側にも問題があったのでは、と指摘する報道が出ています。


塚越さん:金融庁は損保ジャパンをはじめとした損保会社7社に対して、保険業法に基づく報告徴求命令を出しています。要するにこの件に関して細かく報告せよ、というものです。金融庁は中でも損保ジャパンに関しては、特に細かく調査する方針を出しています。というのも、損保ジャパンはビッグモーターへの出向者が37人おり、他の大手損保企業が3人だったのと比べても多すぎる点や、2019年には簡易査定を簡略化したことなどが問題視され、金融庁はこうした対応がビッグモーターの不正請求につながったのではないかを確認する方針です。さらに報道されているように、ビッグモーターに事故車を紹介する代わりに、ビッグモーターから自賠責保健を損保側に割り当てる「持ちつ持たれつ」の関係も指摘されており、こうした点からもコンプライアンスが働かなかったと考えられます。


ユージ:塚越さんは、一連のこの問題を見ていて、どう感じましたか?


塚越さん:多くの方が気になっている話題で、トップダウン体制の問題だと思います。パワハラ体質が常態化してしまったこと、そして内部告発が機能しない、風通しの悪い企業体質が問題になると思います。一方で、多くの社員は普通の人で除草剤を撒くような行為は普通できません。パワハラを前提として、「空気を読む」ことや「忖度」が働くと普通の社員が道徳的一線を超えさせてしまうという状況は、決してビッグモーター問題だけではないと思います。忖度が蔓延すると人間の思考は制限され、道徳を踏み越えたり、「善悪」が分からなくなってしまいます。狭く息苦しい空気が蔓延すると、「外」が見えなくなります。「空気には水を差すことが大事」と言われたりすることがあるのですが、"水を差す"のはある種の内部通報だとすると、それができない体制になってしまったということです。やや俯瞰して言いますと、例えば第二次大戦の軍のエリートは、アメリカに負けると分かっていても「空気」を読んで何も言えませんでした。そう考えると、ビックモーターの問題でもあるのですが、日本社会全体で何か空気だったり外の風が入らなくなると我々忖度してしまって道徳的な一線を踏み越えてしまいます。有名な哲学者が「凡庸な悪だ」と言いましたけど、そういうことが我々に起こるということを考えながら、この問題を見ていくのが大事だと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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