23.08.01
日本国際博覧会協会が残業時間規制の対象外を要望した問題

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
「日本国際博覧会協会が残業時間規制の対象外を要望した問題」
吉田:2025年大阪・関西万博の海外パビリオンで建設手続きが停滞している問題で、日本国際博覧会協会が、工事に従事する労働者を来年から適用される残業時間規制の対象外とするよう政府に要望していることが分かりました。神庭さん、この要望は物議をかもしていますが、まず万博はどういったものかを改めて教えてください。
神庭さん:万国博覧会ですよね。各国がパビリオンを出して、最先端の科学技術を一堂に集めて展示する展覧会です。かつては、開催国が「ウチの国はこんなにスゴイんやで!」と世界にアピールする国威発揚の場としても機能していました。大阪では1970年にアジア初の万博が開かれています。「人類の進歩と調和」を掲げた大阪万博は、岡本太郎の太陽の塔やアメリカ館の月の石が話題になり、6400万人を集める大成功を収めました。浦沢直樹さんの漫画『20世紀少年』を読むと、当時の子どもや大人たちがどれだけ熱狂していたかよく分かります。2年後に予定されている半世紀ぶりの大阪万博は、高度成長期の「夢よもう一度」を令和にやろうとしている点で、東京オリンピックともよく似ています。
吉田:今度の万博では建設が遅れているということですが、なぜなんでしょうか?
神庭さん:前提として、万博のパビリオンには3つのタイプがあります。タイプA『参加国が自前で費用を負担して建物をつくるパターン』タイプB『主催する万博協会が建てた建物を参加国が使うパターン』タイプC『参加国が建物の一部区画を借りて使うパターン』このうち、今回問題になっているのはタイプAです。朝日新聞によれば、パビリオン建設には1年半ほどかかります。開幕に間に合わせるには、逆算して今年の秋には着工しないとまずいそうです。タイプAにはドイツやオランダ、中国など56カ国の参加が見込まれていて、事前に必要となる建築申請を終えている国が、つい最近までゼロでした。先週7月28日、韓国が海外勢で初めて申請をしたことで、ようやく申請国がゼロから1になりました。飲み会だとしたら「行けたら行くわ」と言う人はたくさんいるのに、実際に出席を確約してくれてる人は1人しかいないような寂しい状況です。これで開幕に間に合うのかと懸念する声が広がっています。
ユージ:どうして他の国は早く申請しないのでしょうか?
神庭さん:建築資材の高騰やデザインの複雑さがネックになっています。産経新聞によると、関西経済連合会の松本正義会長は「撤退する国もあるのではないか」「設計計画もなく、何の返答もない国もあると聞いている」と話しています。素人の考えだと、プレハブなり展示場でまとめてやれば安いし楽だしええやんと思ってしまうのですが、タイプAの独創的なデザインのパビリオンは万博の「華」のような存在で集客力もあるそうです。日本建設業連合会の宮本洋一会長は朝日新聞のインタビューで、「タイプAをしっかりできないような万博は、海外からのお客さんも来なくなってしまうし、意味がない」と話しています。一方、タイプAの参加国が奇抜なデザイン、複雑な工法でパビリオンをつくるとなると、受注できる業者は限られてきますし、費用も膨らみやすくなります。そこに加えて、塚越さんが解説していただきました建設現場の2024年問題も影響しています。
ユージ:2024年問題、ありました。簡単におさらいをお願いします。
神庭さん:物流業界などと同じく、建設現場でも来年度から時間外労働の上限規制が厳格化されます。ただでさえ人手不足の業界なのに、今後さらに人手不足に拍車がかかる恐れがあります。焦った万博協会が、万博の工事だけ残業規制の例外にしてくれないかと政府に頼み込んだ、というのが冒頭のニュースです。
吉田:今回の要望に対し、政府は何と言っているのでしょうか?
神庭さん:共同通信によれば、加藤厚生労働大臣は「単なる業務の繁忙では認められない」と見解を示しました。特例で規制を外せるのは災害対応などに限られます。これは当たり前の話で、残業を減らし、職場をホワイト化していくための法規制なのに、政府が率先してブラックな働き方を奨励するなんてあり得ないことです。仮にタイプAのパビリオン建設が間に合いそうにないのであれば、普通に考えて取りうる選択肢はタイプAを諦めるか数を減らすかして、質素なBやCに転換します。万博の開催自体を延期するどちらかだと思います。タイプAはなんとか間に合わせたいけど、延期もしたくないから、青天井で残業させてください!なんていう都合のいい話はありません。
ユージ:神庭さんはこの問題について、どう思いますか?
神庭さん:そもそも論のところで、誰のための何のための万博なのかという原点に立ち返った方がいいのではないかなと思います。読売新聞の最近の世論調査で、万博に「関心がない」と答えた人は65%で、「関心がある」の35%を大きく上回っています。参加国も全然許可申請を出してこないし、やる気が感じられません。万博会場の建設費は当初見込みの1.5倍の1850億円に増えており、そこからさらに増えそうだと朝日新聞が報じています。事業費が膨らんで、さらに多くの税金を注ぎ込むことになりそうなのであれば、大阪府や大阪市、国も「それでもやる価値があるんです」ということをしっかり国民に説明して欲しいです。始まる前からトラブルが噴出している状況は、東京五輪の時のデジャブ感を覚えます。「夢よもう一度」で突っ走る前に、多くの人が感じているであろう「嫌な予感」を払拭していただきたいと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 1, 2023
『日本国際博覧会協会が残業時間規制の対象外を要望した問題』…
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 1, 2023
そもそも万博というイベント自体が時代に合っていないのではないかと思いました。例えば、現在はPRしたい最新技術などはSNSなどで簡単に発信できるので、お金をかけて建築物を作って実際に足を運んでもらうことに、果たして各国がどこまで力を入れるのか非常に疑問に思いました。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 1, 2023
ですので、万博のあり方を今一度見直す必要があるのではないでしょうか。僕は万博のようなイベントがとても好きなので盛り上がってほしいと思うと同時に、問題とされているポイントをしっかり見直してほしいと思いました。#ワンモ