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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

23.07.31

そごう・西武労組がスト権確立
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「そごう・西武労組がスト権確立」

吉田:アメリカの投資ファンドへの売却計画を巡り、従業員の雇用維持を求めてストライキを検討している「そごう・西武労働組合」は先週、全組合員による投票の結果、ストライキ権を確立したと発表しました。神庭さん、改めてストライキとは、どういったものなのか、説明してください。


神庭さん:労働者が労働条件の維持・改善や賃金の引き上げなどの要求を掲げて、一時的に労働の提供を拒否することです。略して「スト」とも言います。「仕事サボっていいの?」と思った人がいるかもしれませんが、これは憲法で保障された権利のひとつです。労働者には労働三権といって、団結権、団体交渉権、団体行動権が認められていて、この3つ目の団体行動権の中にストライキをするスト権も含まれています。会社側に対して、雇われている労働者の方が圧倒的に力が弱いので、こういった権利を認めることで法的に保護しているわけです。


ユージ:最近、ハリウッドでもストが行われていて、俳優のトム・クルーズが来日できなかったことがありましたね。日本では、あまり耳にしませんよね。


神庭さん:ANNによると、実際に百貨店でストが行われた場合、1962年以来、約60年ぶりのことになります。1960~70年代にかけては組合や労働運動が強く、ストライキが頻発しました。国鉄のストで電車が止まることもありました。当時は多い年でストが5000件あったのですが、2021年には32件まで減っているということです。


ユージ:どうして、そんなに減ったのですか?


神庭さん:これは、組合のパワーが落ちたことも影響しています。60〜70年代には労組の推定組織率が30%を超えていたのですが、非正規雇用が増えたこともあり、去年は16.5%まで低下しています。そうなれば必然的に会社側との交渉力もダウンし、ストを打てるような体力もなくなってきているのが実情かなと思います。だからこそ、久々のストに関するニュースが注目を集めています。


吉田:ニュースでは、スト権を確立とありましたが、すぐにストライキは行われますか?


神庭さん:今すぐにストを打つことが確定しているわけではありません。共同通信によれば、労組側は親会社セブン&アイ・ホールディングスを含めた経営側から「雇用を守る」という明確な説明がなければ、スト実施もあり得ると言っています。「要求が通らないならストもあり得ますよ」と伝家の宝刀を手にした状態で、実際に刀を抜いてストをやるかどうかは、セブン&アイの出方次第かなと思います。ただ、従業員3833人が投票して、そのうち約94%がスト権確立に賛成したという事実は非常に重いので、セブン&アイも無視することはできないのではないかな、と思います。


ユージ:そうですよね。あくまでストの権利を確率しただけで、まだ実施されていないとのことです。実施した場合、私たちの生活に何か影響はあるのでしょうか?


神庭さん:そもそも行うか分からないので、仮の話になりますが、組合員の人たちが「この日のこの時間は働きません!」とストをすれば、非組合員や管理職らでカバーする、あるいは臨時で人を雇うしかありません。非組合員だけで業務を回すのが難しい事態に陥れば、最悪の場合、お店を開けられないとか、営業時間を短くせざるを得なくなるかもしれません。そうなると買い物客に直接影響が出てきます。なかには「スト頑張ってね、応援してるよ」と組合を応援する常連さんもいるかもしれないですが、事情を知らない人が遠くから買い物に来た人が、開いているはずのお店が閉まっていた場合、イメージダウンにつながる恐れもあります。仮に非組合員や補充人員だけでなんとか営業できたとしても、労組からすると「ストを潰された」という形になるので、労組と会社の対立が先鋭化し、ますます溝が深まる可能性があります。


吉田:そもそも、どうしてこんなにこじれてしまったのでしょうか?


神庭さん:セブン&アイ自体は決算も好調で、コンビニ事業は伸びています。一方、そごう・西武は赤字で足を引っ張ってしまっています。セブン&アイの株主からは稼ぎ頭のコンビニ事業に注力するように求める声が強く、セブン&アイはアメリカの投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループに売却する方針です。このフォートレスがヨドバシホールディングスと連携していて、西武池袋本店にヨドバシが出店する、それも1階に入るのではないかと報じられていました。デパートの低層階といえば、ハイブランドが出店するのが一般的なので、ヨドバシが入ってきたときにこれまでとはかなり違った店構えになる可能性があります。従業員の間にはヨドバシ出店に対する不安が広がっていて、組合が雇用の維持を求めてスト権を確立した、というのがこれまでの経緯です。ちなみに20日の読売新聞の報道では、《ヨドバシは1階と地下1階への出店を一部にとどめ、中層階以上への進出をメインとする方針に転換する》とあり、状況は混沌としています。


ユージ:今回の件を受けて、今後ストライキは増えていく可能性がありますか?


神庭さん:選択肢のひとつとして増えていくと思います。今は人手不足の売り手市場です。「嫌なら辞めろ。代わりはいくらでもいるんだ!」という時代ではありません。労働者と経営者の力関係にも変化の兆しが見えてきています。日経新聞の記事《セブン、「物言う労組」と対峙 西武スト権は世界の波》によれば、Google、Amazon、Appleで相次いで労組が結成され欧州でも大手航空会社や鉄道などで大規模ストが相次いでいます。この波はおいおい日本にも来るはずです。世界的に「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義」への転換が進もうとしています。ステークホルダーは利害関係者のことで、会社は株主だけでなく、従業員にも目配せしていかないと、ストライキでしっぺ返しということにもなりかねないのではないかと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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