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23.07.11

東京電力・福島第1原発、処理水の海洋放出計画について
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「東京電力・福島第1原発、処理水の海洋放出計画について」

吉田:東京電力・福島第1原発に溜まる処理水の海洋放出計画が「国際的な安全基準に合致する」との包括報告書を公表したIAEA(国際原子力機関)のグロッシー事務局長が7日、日本での主な日程を終えて東京都内で記者会見し、処理水に含まれる放射性物質トリチウムについて「国境を越えた影響は全く心配がない」と語りました。神庭さん、まずは「処理水」について教えて下さい。


神庭さん:よく混同されるのですが、原発事故などで出た「汚染水」とは別物です。経産省によると、処理水とは汚染水を浄化処理して、トリチウム以外の放射性物質を規制値以下になるように除去したものです。トリチウムは水素と性質が似ていて、除去が難しいため、放出前に海水で基準値以下に薄める方針です。福島第一原発の敷地内には1000以上の巨大なタンクが置かれ、処理水を貯蔵していますが、来年にも満杯になるとみられており、政府は今年「夏ごろ」の放出を目指しています。


吉田:この処理水の海への放出について、世論も割れています。国内のメディアはどのように報じているのでしょうか?


神庭さん:新聞各社の社説を読み比べてみましょう。朝日新聞は、処理水の放出。不安軽視せず対話をIAEAの報告書について「計画通りに運用される限り、処理水放出は科学的に安全とされる基準を満たす」としつつ、政府と東京電力に対して「内外に残る不安を軽んじることなく、説明と対話を尽くす必要がある」と求めています。毎日新聞は、IAEA処理水報告書。説明尽くす責任は政府に中国や韓国で反対論がくすぶっていることに触れ、「政府が今後、放出を決定するのであれば、高い透明性の確保が不可欠だ。その上で漁業関係者や近隣諸国に対し、丁寧な説明を尽くす責任がある」と結論づけています。東京新聞は、原発処理水 放出「強行」は禍根残す「廃炉を円滑に進めるためには“処理水の処理”が不可欠だとしても、漁業者、消費者、そして国際社会の理解は足りていない。IAEAの見解を盾に、拙速に進めるべきではない。不信と不安も「除去」してからだ」このように、リベラル・左派系の新聞社は政府の説明責任を強調し、IAEAのお墨付きに安住するな、というスタンスです。なかでも東京新聞は反対寄りの慎重姿勢をとっています。


ユージ:保守系とされているメディアはいかがでしょうか?


神庭さん:読売新聞は、「原発の処理水 偽情報には科学的に反論せよ」と書いていて「科学的根拠のない主張や偽の情報で、日本を貶めようとすることは容認できない。政府は毅然と反論すべきだ」と主張しています。中国政府やメディアが反対キャンペーンを張り、韓国の革新系メディアが誤情報を流している点を指摘し、政府として偽情報を監視し、対処するよう訴えています。産経新聞は、「迫る処理水放出『風評』を一掃するときだ」と書いていて、放出するトリチウムについて「トリチウムの放射能は極めて弱い上、生物の体内からも速やかに排出される。そういう性質なので海洋放出が世界的に認められている」と解説しています。中国・韓国の原発のトリチウム放出量に比べ、日本の処理水の方が量が少ないと指摘しています。


ユージ:海外の原発からもトリチウムは出ているのですか?


神庭さん:中国・韓国に限らず、海外の原発でも各国の法令にしたがって、海や川、大気中にトリチウムを放出しています。福島第一原発のように事故があったわけではない、正常運転している原発や再処理施設からもトリチウムは出ます。環境省のサイトによると、1年間にフランスの再処理施設から1京1400兆ベクレル。イギリスの再処理施設から423兆ベクレル。カナダの原発から220兆ベクレル。韓国の原発から91兆ベクレル。中国の原発から87兆ベクレル。それが液体として年間に排出されています。これに対して、日本が排出を予定している処理水は年間22兆ベクレル未満に抑える方針ですので、計画通りにいくなら海外よりも低い水準になります。


吉田:処理水をめぐる対応について、神庭さんはどう考えていますか?


神庭さん:感情ではなく、科学的なデータとファクトに基づいた冷静な議論が必要かな、と思います。僕は福島に勤務していたこともありますし、福島第一原発の事故には大きな衝撃を受けました。故郷に帰れなくなるような人が出る原発事故はもう二度と起こしてはいけないし、長期的にできるだけ原発に依存しないような電源構成を目指していくべきだと考えています。ただ、原発推進か脱原発か?という大きな枠組みの議論と、今回の処理水の問題は切り分けて考える必要があります。海外で日本以上にトリチウムを排出しているのに、必要以上に日本の処理水だけが危険だと煽るのは、科学的な合理性を欠くな、と思っています。韓国はIAEAの報告書を尊重する姿勢を見せていますが、中国はIAEAの報告書に「専門家の意見を十分に反映していない」とケチをつけ、「日本は太平洋を下水道扱いしている」と強い言葉で非難しています。さらに今後、日本の食品の輸入規制を強化することまで示唆しています。自国のトリチウム放出を差し置いて、科学の問題を政治問題にすり替えようとしていて、これは難癖以外の何ものでもないわけですので。こういった圧力に対して、エビデンスに基づいてしっかりと反論していくことが大切だと思います。


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