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23.06.26

薄れる終身雇用制度のメリットと中高年の転職の実情
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「薄れる終身雇用制度のメリットと中高年の転職の実情」

吉田:近年、中高年の転職等希望者の数が増えてきているということですが、神庭さん、改めてこのニュースの背景を教えてください。


神庭さん:日経新聞の記事《45~64歳の転職希望、5年で3割増 終身雇用優位薄れる》に第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストの分析を紹介しています。星野さんのレポートは会社を辞めずに長く勤めている方と転職者の賃金格差に着目したもので、それによると、例えば45~49歳の方の場合、長期勤続者の賃金を1とした時に、2015年代半ばの時点では男性も女性も転職者の賃金は0.6を割っていたのですが、2020年代には、その比率が0.7を超えました。つまり、1つの会社に留まって長く働いている方と転職をして次の会社に移る方との賃金の格差は近年になって縮小しています。こういったデータをもって、日経新聞は終身雇用のメリット、優位性が薄れていると指摘しているわけです。


ユージ:実際に終身雇用の魅力は薄れているのですか?


神庭さん:今でも働けるならずっと働きたいと思っている方は沢山いますので、別に魅力が薄まっているとは思いません。ただ、DXやAIの導入が進んでものすごいスピードで時代が動いているなかで、「今までのような終身雇用を維持するのは、難しいのでは?」と考える方は間違いなく増えています。一方で、注意が必要なのは増えているのはあくまでも転職「希望者」であって、中高年の転職の割合は増えていないということです。日経の同じ記事に、45~54歳と55~64歳の年齢別の転職比率は、2019~2023年にかけてむしろ減っているわけです。「辞めたいなあ、辞めようかなあ」と考える中高年は増えているものの、実際に転職まで漕ぎ着ける人は減っています。中高年の転職の「理想と現実」のギャップと捉えることもできますし、転職希望者と企業の採用担当者の意識のギャップとも捉えることもできます。


吉田:なぜ、そうしたギャップが生じるのでしょうか?


神庭さん:人生100年時代とか、リスキリングでもうひと花咲かせよう!みたいな掛け声とは裏腹に、一定以上の年齢の方を採用することに抵抗感を持っている企業は多いです。「35歳転職限界説」が言われていましたが、一昔前に比べてると40代前半くらいでもかなり仕事を選びやすくなったのは確かです。一方で、転職サイトなどでも、50歳を超えるとパタっとオファーが来なくなる現実があります。スキルのミスマッチももちろんあると思いますが、45歳なのか50歳なのか年齢で輪切りにする発想から抜けきれない企業も少なくないと思われます。


ユージ:政府は、何か対策をとっているのですか?


神庭さん:リスキリング、学び直しのための講座を受けて、転職に成功した場合、1人あたり最大で56万円を補助する仕組みを発表しました。リスキリングに関して、これまでは企業を通じた補助が中心だったのですが、今後は個人への直接給付を増やしていきます。あとは、16日に閣議決定された「骨太の方針」では退職金に関する課税方法を見直すことが盛り込まれました。今の制度は終身雇用を前提にしていて、長く勤めるほど退職金を受け取る際の税負担が軽くなるという仕組みだったのですが、逆に言えば早くに辞める人には不利な制度なので、これを見直して転職(労働移動)を活性化させよう、ということです。


ユージ:国はなぜ、転職を後押しするのですか?


神庭さん:政府はなんでそんなに必死に会社を辞めさせようとするのか?と疑問に思う方もいると思うのですが、衰退産業や低成長の産業から、ITなどの成長産業にどんどん人が移ることで、成長企業はより成長し、労働者の賃金も上がります。生産性が向上し、国としても豊かになるというのが政府の考え方です。国全体をマクロで見たら確かにその通りなのですが、ミクロで見た時に誰しもが会社を辞めて幸せになれるかと言えば、そうとも限りません。


ユージ:どういうことですか?


神庭さん:「リスキリングだ」「中高年活躍だ」と聞こえのいいことを言っても、政財界の本音としては、「日本は解雇規制が厳しすぎる。さっさと終身雇用をやめて、好き放題クビを切れるようにしてほしい」ということです。腕に自信がある方、スキルを持った方にとって転職は給料を上げる大きなチャンスになりますが、みんながみんなそうじゃないということは忘れてはいけないかな、と思います。「人を見て法を説け」と言いますが、誰でも辞めなさいというのは無責任で、例えば30~40代くらいの人から転職相談を受けたら、僕も「いいじゃん、頑張ってみなよ」と背中を押すような言葉を言うと思います。しかし、50代の方に言われたら「いや、石にかじりついでも残った方がいい。今辞めたらもったいないし大変だよ」と言うケースもあるかもしれません。マクロの潮流としては、これから終身雇用は縮小していきますけど、ミクロで我が身に当てはめてどうなのか?というのは、よく考えて判断して欲しいです。会社への不満だとか勢い、焦りで転職を決めてもうまくいかなくて失敗することもありますから、キャリアのオーナーは自分自身だという自覚をもって、戦略的に「次の一手」を考えていただきたいですし、本当に辞める方は誰にも相談せずに辞めて成功する方もいますし、そういう意味も含めて決めてください。


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