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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

23.05.04

こどもファスト・トラック
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

情報社会学がご専門の城西大学 助教、塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


『こどもファスト・トラック』


吉田:全国のテーマパーク・アミューズメントパークでは、『ファストパス』、『エクスプレスパス』などと呼ばれる、行列に並ばずに施設内に入ることができるサービスを導入しているところがあります。『こどもファスト・トラック』も同じようなサービスで、別の言い方をしますと、『子ども連れ専用レーン』のことです。今年のゴールデンウィークに合わせて『国立科学博物館』をはじめ、全国各地にある公立の施設で設置が進んでいるようなんです。なぜいま、そのような取り組みが行われているのでしょうか?塚越さんに解説していただきます。


ユージ:『国立科学博物館』の他にどういった施設で『こどもファスト・トラック』が設置されているんでしょうか?


塚越さん:4月に少子化対策の一環で開かれた会議の中で、『迎賓館赤坂離宮』や『国立科学博物館』など、全国18の施設と5つのイベントで導入を検討していると報告されています。その中の1つの東京の『国立科学博物館』は、通常の入り口に『こどもファスト・トラック』を設置しています。ベビーカーを押す家族や中高生以下の生徒や児童も対象になっています。一方で、もっと対象者を増やしてほしいという要望もあるということなので、例えば、北海道の『国立アイヌ民族博物館』や大阪の『国立民族学博物館』では、妊婦も対象にするかを検討しているということですね。まずは、国公立の施設やイベントでの設置が検討されているんですけれども、政府は民間のレジャー施設や銀行等、関連団体との調整を進めたいと考えています。


吉田:『こどもファスト・トラック』を設置する狙いはなんでしょうか?


塚越さん:今年3月の記者会見で岸田総理は、『こどもファスト・トラック』導入の意義について述べています。それによりますと、まず、子育て中の人から「日本は子育てに冷たい」という指摘を受けていること、欧米では、「子育て世帯専用のレーンが公共の場に設置されている」こと、また、「周囲の人が手助けしてくれることが多い」と聞いているとおっしゃったんですよね。その上で、日本は、「子連れだと混雑しますし、肩身が狭い」といった意見や、「公園で遊んでいても近所迷惑じゃないかと心配」といった意見があるので、政府として『子どもファーストな社会』の実現を目標として、今回、『こどもファスト・トラック』を導入したというふうに述べているんですね。確かに政府はずっと少子化対策に力を入れていますし、数年前、朝の通勤時間にベビーカーで電車に乗ろうとした人が乗客から「邪魔だ!」と言われたことが話題になったと思うんですけれども、こうしたこともあって、政府としては社会の意識改革、子どもに優しい社会を目指して『少子化対策』に繋げたいという目的もあるのではないかと考えられますね。


ユージ:僕のうちは子どもが4人いるので、もちろんその気持ちはわかるんですけれども、一方で、いない人からすると、「邪魔だ!」という人たちがいるということも、正直、分からなくはないんですよ…。ただ、「子連れだけ不公平だ!」という意見もあるようですね。


塚越さん:SNSでは、「これで子どもが増えるのか?」とか「政府の話題作りなんじゃないか?」といった声もありまして、中には「独身者への嫌がらせだ!」という声もあるということで、それはちょっと言い過ぎじゃないかなと思うんですけれども、あとはですね、「ベビーカーの優先レーンはいいけど、中高校生は社会のルールを学ぶためにも一般の列で並ばせるべき」といった意見もあります。『こどもファスト・トラック』の中には、中高生も優先対象になっているものもあるんですよね。


ユージ:年齢制限の設定はちょっとシビアにした方がいいかもしれないですよね。


塚越さん:難しいところですよね。例えば、「中高生はダメだけど、小学生は優先レーンでいいんじゃないか?」とか、細かくなってくると「誰なら優先されていいのか?」といった点で判断が割れますし、また、「優先するなら子どもだけでなく障がいのある人や高齢者などはどう考えればいいの?」とかですね、あるいは、「障がいの中には、見えない障がいもあるので、どうすればいいの?」という課題もありますし、非常に難しい問題ですよね。優先される人とそうでない人がいると、“ずるい”と思う人が必ず出てきてしまって、昨今の社会対立のキーワードって“ずるい”という言葉なんじゃないかなと思うんですよね。


吉田:普及に向けたカギは何だと思われますか?


塚越さん:基本的には、“政治の力”だと思っているんですけれども、ファスト・トラックというのを作るとですね、今までは見えなかった、あるいは、見ようとしなかった『社会課題』が可視化されますので、ファスト・トラックが実装されていくと、社会にはいろんな人がいるんだということを人々が実感して、最終的には、ファスト・トラックがなくても人同士が助けあえるようになるのが理想なんですけれども、先ほども言ったように、“ずるい”と思ってしまう人が出てくるということが非常に問題なんですよね。そうすると、『共生』、“共に生きる”という思想を、逆に、『強制』、“強いられる制度”の方に捉えてしまい、『共生』が『強制』に思えてしまう人も出てきて、それがいわゆる、社会的な分断を進めることになってしまっているんですね。このファスト・トラックにも批判が結構多いんですよね。だとするならば、普及させるなら、政治の力しかないんですよね。政治的リソースを使って、反感を喰らってもですね、一気にやるしかない。逆にそれができないんだったら、社会が分断されてしまうので、やらない方がいいですよね。だから、やるんだったらそれくらい本気でやって欲しいし、政府のやる気が問われる案件かなと思います。



そして、今日の #ユジコメ はこちら。







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