23.03.21
TikTokをめぐってアメリカで起きている規制の動きについて

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
【TikTokをめぐってアメリカで起きている規制の動きについて】
吉田:アメリカの雑誌フォーブスなどは17日までに、中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の親会社、バイトダンスの従業員らがアメリカ人記者を監視しようとした問題で、アメリカ司法省がバイトダンスを捜査していると報じました。神庭さん、まずこの問題の背景から教えて下さい。
神庭さん:BuzzFeed Newsのエミリ・ベーカー・ホワイト記者が去年の6月、TikTok社内からの流出音声をもとに、中国のバイトダンスの従業員がアメリカのTikTokユーザーに関する非公開データに繰り返しアクセスしていたとスクープしました。ベイカー・ホワイト記者はその後、Forbesに移籍しますが、そこでも精力的にTikTokを追及する調査報道を続けました。昨年12月には《TikTokはフォーブス記者の位置情報を監視していた、内部資料で発覚》という記事を出しています。この記事によれば、バイトダンス社員がベーカー・ホワイト記者ら3人の位置情報を追跡。バイトダンスと中国とのつながりを批判的に報じる記事が相次いだことから、社内のリーク元を明らかにするために、監視活動をしていたということです。要は社内の「裏切り者」をあぶり出すために不正な手段でジャーナリストの居場所を監視していたということなんですね。報道の自由や取材源の秘匿を真っ向から否定するような、とんでもない話です。
ユージ:ドラマみたいと言うか、露骨と言うか…すごい話ですね。
神庭さん:監視チームを率いていた人物はすでに解雇されていて、その上司も辞職しています。Forbesによれば、TikTokの広報担当者も「当社が解雇した、または辞職した個人による不正行為は、ユーザーデータへのアクセスを得るために権限を悪用したあるまじきものだった」と認めているそうです。この記者監視問題を受けて、FBIと司法省がバイトダンスの捜査に乗り出した、というのが冒頭のニュースになります。
吉田:この問題でどんな危険性が指摘されているのでしょうか?
神庭さん:TikTok側は否定していますが、「バックドア」といって裏口から情報が抜けるようになっているんじゃないか?と懸念を示す報道も出ています。ニューヨークタイムズは昨年8月、「TikTokアプリ内で使用されているウェブブラウザは、ユーザーのすべてのキーストロークを追跡できる」と報じました。キーストロークというのはキーボードを押す動きのこと。TikTokは記事のもとになったレポートについて「誤解を招くものです」と反論しています。
吉田:アメリカの対応はどうなのでしょうか?
神庭さん:もとをたどると、2020年にトランプ前大統領がTikTokを禁止しようとしたのが最初の動きです。ただ、この時は裁判所に差し止められています。翌2021年、大統領に就任したバイデンさんはトランプさんの大統領令を撤回しました。ところがどっこい記者監視問題などもあって、再度TikTokの危険性が浮上。昨年12月には、連邦政府の職員が仕事に使うスマホでTikTokを使うことを禁止する法案が可決されました。そして今月6日、下院の外交委員会で、政府職員だけでなく一般のアメリカ国民全体の利用を禁じる法案が可決されたんですね。上院でも、超党派の議員が一般利用を制限する法案を提出。もし成立した場合、1億人以上のユーザーに影響が出ることになります。禁止法案を支持するバイデン政権は、バイトダンスに対してTikTok株を売却するよう要求していて、応じない場合は国民に禁止もあり得ると警告しているんです。
ユージ:アメリカ以外の対応はどうなんでしょうか。
神庭さん:イギリスやEU、ベルギー、カナダといった国々が政府関係者や職員のTikTok利用を禁止しています。
ユージ:日本でもユーザーはたくさんいます。どうなのでしょうか?
神庭さん:特に何の制限もない、ガバガバ状態なんですね。それどころかお役所が率先してTikTokを活用していて、デジタル庁は昨年9月、マイナンバーを啓発するためのショート動画をTikTokで公開しています。前経済安保担当大臣の小林議員はTwitterで「政府内で十分に検討した結果の取組なのか?」「特定のアプリを事実上オーソライズ(認証)するには十分な検討が必要ではないか」と疑問を呈しています。河野太郎デジタル大臣は会見で、機密が漏れるリスクを否定しつつ「もし規制のラインを動かす必要があると判断した場合には、しっかりとしたラインの引き直しをやる」と釈明しました。
吉田:神庭さんはこの一連の問題、どうみていますか?
神庭さん:少し引いた目で見ると、サイバー空間での世論形成をめぐる米中の熾烈な争いという背景があるんですね。アメリカのSNSやプラットフォームがどれだけ正しくて、個人情報の不正な利用は一切せず、清廉潔白にやっているのかと聞かれたらそこは正直、不確かな部分もあります。とはいえ、「じゃあどっちもどっちですね」では済まされない事情もあります。中国には国家情報法という法律があり、「いかなる組織や国民も国家の諜報活動に協力しなければならない」と定めているんです。一企業であるTikTok、バイトダンスがどんなに「自分たちは不正利用はしません」と主張しても、そういう法律がある以上、どうしたって性悪説で向き合わざるを得ない部分があります。経済安全保障の観点からすると、いまの日本の対応はあまりに楽観的なので、せめて、政府や自治体の職員に関しては使用を禁止する、制限するなどの法整備が必要ではないかなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 21, 2023
「#TikTok をめぐってアメリカで起きている規制の動き」について
元をたどると2020年にトランプ前大統領がTikTokの使用を禁止しようとしたのが最初の動きと言われていますが、実際禁止にはならず、現在再度規制の動きが浮上しています。#ワンモ
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 21, 2023
一般の方から抜かれる個人情報といえば、暗証番号や家の住所などが挙げられると思いますが、もし政府がTikTokを利用してしまうと、抜かれた情報が国防や軍事に関わる機密情報だった場合、国民の安全が脅かされる可能性があります。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 21, 2023
TikTokに限らず、ほとんどのSNSも実は個人情報の監視が行なわれているのではないかと疑ってしまいますし、SNSは他人との繋がりが生まれるという利点がある一方で、ネットで個人情報を登録している以上は常に警戒する必要があると思いました。#ワンモ