23.03.20
満額回答が相次ぐ春闘、中小企業にも広がるか?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。
【満額回答が相次ぐ春闘、中小企業にも広がるか?】
吉田:先週15日、集中回答日を迎えた春闘は、物価高などを受け、異例の満額回答が相次ぎました。ただ、これから交渉が本格化する中小企業なども、この勢いが続くのか、さらに持続的な賃上げにつながるのか気になるところです。
神庭さん:少し前にも賃上げの話題を取り上げたので、簡単におさらいしておくと、トヨタやホンダといった自動車業界から、みずほや三菱UFJ銀行、三井住友などのメガバンク、小売業界でもイオンやワークマン、ユニクロを運営するファーストリテイリングなどなど、名だたる大企業が大幅な賃上げの方針を打ち出しています。これ自体はとても喜ばしいことだと思います。モノの値段がどんどん上がるインフレ下では給料が据え置きだと実質的な収入ダウンとなってしまいます。厚労省の毎月勤労統計調査によると、今年1月の実質賃金は4.1%減で、8年8ヶ月ぶりの下落幅となりました。減少は10ヶ月連続。こうした状況ではまず、できるところから賃上げしていく姿勢がとても大切だと思います。
ユージ:気になるのは、中小企業。賃上げに踏み切るのが難しい会社もあるのでは…という話をしていましたよね。
神庭さん:前回、中小企業の7割超が「賃上げの予定はない」と回答したという城南信用金庫の1月のアンケート結果を紹介しました。がっかりしてしまうような調査結果でしたが、その時に比べると、少し希望の持てる数字も出てきています。日本商工会議所の最近の調査では、中小企業の58.2%が、「2023年度中に賃上げする」と答えたそうです。これは去年より12.4ポイント高い数字。足元の物価上昇をカバーできる4%以上の引き上げを目指す企業も18.7%に達したということです。
吉田:それは期待が持てるということですかね。
神庭さん:とはいえ、依然として課題や懸念は残っています。日本商工会議所の小林健会頭は15日の記者会見で「価格転嫁をクセにするということじゃないと、これからの日本経済回っていかない」と訴えたんですね。本当にその通りで、大企業が自分のところだけ給料を上げて、取引先や下請けにはコストカットを強いるというようなダブルスタンダードではいけない、という話をこの間もしました。東京商工リサーチのアンケート調査でも、賃上げしない中小企業の58.6%がその理由に「コスト増加分を十分に価格転嫁できていない」ことを挙げています。下請法違反にあたるような不当な買いたたきは、公正取引委員会にバンバン指導してもらいたいです。いまのはBtoB(企業対企業)の話でしたが、価格転嫁に関してはBtoC(対消費者)との関係でも問題になってくるんです。
ユージ:それはどういうことでしょうか。
神庭さん:都心だと、コンビニの深夜アルバイトの時給が1500円くらい。チェーンの牛丼店や回転寿司でも、深夜は1600円を超えるところがあって、街で求人のポスターを見てビックリすることがあるんです。「人手不足、人手不足」と言いつつ、これまでは「安い賃金でたくさん働いてくれる都合のいい人手不足」という側面が強かったわけです。それではいよいよ人が集まらない、ということでアルバイトの時給がどんどん上がっています。とてもいいことですが、巡り巡って今後さらに物価が上昇することも、消費者としては覚悟しておかないといけないです。一方で、利上げによるアメリカ景気の失速や、シリコンバレー銀行の破綻、クレディ・スイス問題などこのところ、様々なリスクが表面化しています。先行き不安のなかで、消費者も企業も支出を抑え財布の紐を締めざるを得ない面があり、先行きは非常に不透明な部分があります。
ユージ:どうやったら賃上げが進むのでしょうか?
神庭さん:コストプッシュ型のインフレで、原材料価格や電気代、燃料代が軒並み上がっているなかで、やせ我慢やその場しのぎのコストカットで一時的な賃上げを実現したとしても、持続可能ではないですよね。より根本的には、雇用の流動性を高め、成長産業に次々と人が集まってくるような環境整備が必要です。アメリカではコロナ禍で退職する人が増え、「大退職時代」と呼ばれています。Business Insiderの記事によれば、昨年の11月に過去最高水準の420万人が自主的に退職。会社員の約61%が年内に仕事を辞めることを考えているということです。退職というと日本だとどうしてもネガティブな響きがありますが、そんなことはないんです。転職によってスキルを磨き、自力で収入を上げるという選択肢もあるわけです。ある会社にいる時には特段注目されなかったスキルでも、別の会社に行ったらもっといい値札がついて重宝されるということもありえます。そうやって巣立って行った社員が戻ってきた時に、もう一度受け入れるための制度を用意する企業も増えてきています。JR東日本は1月、「ウェルカムバック採用」と題して、出戻り社員の積極採用を始めました。アルムナイ採用ともいいますが、こうやって退職者をうまく活用する仕組みが広がると、人材の移動が活性化します。「実家」があることで、旅に出るハードルが下がるわけです。企業からしても、勝手知ったる元社員が外部で吸収したノウハウを持ち帰ってくるメリットが期待できるわけです。そうやって回転ドアのようにグルグル出入りする人が増えると、日本全体でも賃金水準の上昇につながるのではないかと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 20, 2023
今朝のテーマは
「満額回答が相次ぐ春闘、中小企業にも広がるか?」
大事なポイントは、今後の持続的な賃上げにつながるのかという点です。
物価高騰が続いているなかでは、一時的な賃上げをされても
生活はあまり変わらないという方もいるでしょう。#ワンモ
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 20, 2023
そのためには賃上げを持続可能にするだけでなく、
今の物価高騰を超えるほどの、
雇用の流動性を高めるような政策がなければ
生活が楽になることはないと思います。
例えば、JR東日本は「ウェルカムバック採用」と題して、
出戻り社員の積極採用(アルムナイ採用)を始めました。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 20, 2023
退職者を改めて受け入れる仕組みが広がれば、
一度会社の外に出た人が、より良い経験を積んで戻ってきてくれるかもしれない。
そうして回転ドアのように出入りする人が増えると、
日本全体でも賃金水準の上昇につながるのではないか、
という神庭さんの意見に、僕も賛成です。#ワンモ