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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

23.03.07

地裁が開示を命じたアベノマスク
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
引き続きコメンテーターは、「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


地裁が開示を命じたアベノマスク

吉田:政府が新型コロナウイルス対策として全国の世帯に配布した「アベノマスク」に関する行政文書で、業者に発注した枚数や単価の情報を開示しないのは不当として、神戸学院大の上脇博之教授が国に開示を求めた訴訟の判決で大阪地裁は先月28日、開示を命じました。神庭さん、改めて今回の裁判の経緯を教えて下さい。


神庭さん:アベノマスクという言葉も今やもう懐かしさすら感じますが、3年前の4月にコロナ禍でマスクが品薄になっていることを受けて、安倍元総理が布製マスクを全世帯に配布すると宣言しました。学校や介護施設などにも配られ、共同通信によれば厚生労働省が約2億8700万枚、文部科学省が約3000万枚を調達したということです。神戸学院大の上脇教授は、国と業者の間で結んだ契約書などの書類を開示するように情報公開請求をかけましたが、出てきた文書は単価などが黒塗りになっていて分からなかったです。これは不当だということで、情報の開示を求めて2020年の9月に国を提訴したわけです。


ユージ:そもそも、何で黒塗りにする必要があったんでしょうか?


神庭さん:朝日新聞によると、国側は「企業の営業ノウハウなどが同業他社に知られる」、「今後マスクを調達する際、交渉で不利になる」と主張しました。また、産経新聞によれば、契約枚数や単価を明らかにすることで「発注先の仕入れ能力が明らかになる」、「今後の価格交渉に支障が出る」といった可能性を指摘したということです。ものすごく機密性の高いものとか、安全保障に関わるようなものならまだ分かりますが、マスクに関してそこまで厳重に情報を伏せる必要があるのかは疑問です。


吉田:今回、裁判所はどのような判断をしたのでしょうか?


神庭さん:産経などによると、この事業の募集をかける時点で国は1枚あたり100円~200円という仕入れ予定価格を公表していました。そういった公開情報から、単価をある程度想定出来るということもあって、大阪地裁は情報の秘匿性は高くないと判断しました。むしろ、単価の情報を公開した方が談合防止にもつながると指摘して、「税金の使い道に関する説明責任の観点から要請が高い」と情報公開を命じました。こんな風に厳重に黒塗りしている割に、書類の一部にマスクの単価が「税込み143円」だと受け取れるような記述が残されていたので、黒塗りの「塗り忘れ」だとしたら、あまりにもお粗末です。


ユージ:どうしてそんなに情報を隠したがるんでしょうか?


神庭さん:事なかれ主義なのか、何なのか。情報を表に出すことで失点や失態が明らかになったらマズイという警戒感があるのかもしれません。仕事柄、情報公開請求をかける機会は多いですが、黒塗りで出てくることは少なくないので、私達は「のり弁」と呼んでいます。でも、のり弁なんて情報公開のうちに入らないですし、「一応公開しましたよ」という役所側のアリバイ作りでしかないです。何年もかけて裁判をしないと、のりを剥がしてくれないとなると国民にとって負担が大き過ぎます。もちろん個人情報とか、外交、防衛、犯罪捜査などに関わる事項で、表に出せないものは理解出来ます。そういうセンシティブなものに関して、時々のりがまぶしてあるのは仕方ないが、原則は「白米」で「のり」はあくまで例外的なものだということは忘れてはいけないです。


吉田:今回に限らず、行政による文書の廃棄なども問題になっていますよね?


神庭さん:今回は裁判所のグッジョブ案件でしたが、実は裁判所も人のことを言えないです。昨年、神戸連続児童殺傷事件、いわゆる酒鬼薔薇聖斗事件に関する記録を神戸家裁が丸ごと廃棄したことが発覚して大問題になりました。供述調書や精神鑑定の記録なども含まれており、聞いた時に私も愕然としました。最高裁の内規では、史料的な価値が高い事件記録を永久保存するように義務付けられていますが、それが守られていなかった。史料が失われてしまうと、再発防止のための検証も出来なくなってしまいますから、つい最近、最高裁が遺族に対して謝罪しましたが、謝っても取り返しがつかないです。公文書に対する意識の低さの表れではないかと思います。


ユージ:こういった公文書の取り扱いについて、神庭さんはどう考えますか?


神庭さん:アメリカには一定期間が経たら機密を解除する仕組みがあります。日本でも外交記録に関しては30年経ったら原則公開することになっていますが、外交以外の分野に関しても、こうした仕組みが必要ではないかと思います。のり弁ならまだ良くて、実際には存在している資料を「存在しません」と隠すケースもあります。アベノマスクをめぐる別の裁判でも、国側は当初「存在しない」と言っていた業者とのメールのやり取りが実際にはあったことを一転して認めています。そういう隠し立ては許されないです。今、国会で話題になっている放送法の解釈をめぐる文書をめぐる議論も、まず「本当にあるのか」、「捏造じゃないのか」というところから始めないといけないのがそもそも変な話です。全ての公文書がきちんと保存され、公開出来る状態になっていれば、少なくともあるのかないのかは即座に分かるはずです。右とか左とか政治信条に関係なく情報というのは民主主義の根幹であり、意思決定の土台になる大切なものです。後世の審判に耐えうるようにしっかりと残し、必要に応じて公開していかないといけないと思います。


ユージ:透明性というのはちょっと大事になってくると思いますよね。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。



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