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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

22.11.08

来年の春闘
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【来年の春闘】

吉田:経団連が2023年の春闘で、物価高を念頭に基本給を底上げするベアに関して、会員企業に積極的な賃上げを要請する方針を固めたことが分かりました。神庭さん、基本的なことから伺いたいのですが、「春闘」というのはなんでしょうか?


神庭さん:「春季闘争」の略です。企業の労働組合が、経営側に対して、賃上げやワーク・ライフ・バランスの改善などを求めて交渉します。毎年2月ごろに組合が要求を出し始めて、3月に会社側の回答が出ます。春の闘争なので春闘という風に言うんですね。


吉田:そして、春闘と関連して「ベア」という言葉も必ず出てきます。


神庭さん:基本給を上げる「ベースアップ」の略です。勤続年数を重ねると、徐々に給料が上がっていく「定期昇給」がありますが、それとは別で、社員全体の平均賃金を引き上げる。右肩上がりの賃金カーブのグラフがあるとしたら、そのグラフ全体を上に動かすイメージです。労働組合の中央組織である連合のサイトによると、高度経済成長期やバブル期には2~5%のベアが実施されていましたが、景気低迷やデフレの影響で2000年代以降、多くの企業がベアを拒むようになっています。右肩上がりの時代と比べると、春闘の景色もずいぶん変わってきているんです。


ユージ:経済に関してあまり良いニュースを聞きませんが、来年の春闘はどうなるのでしょうか?


神庭さん:連合は3%のベースアップを要求しています。定期昇給分とあわせて5%程度を求める方向で、過去7年は「4%程度」を要求してきたので、水準を1%引き上げた形です。物価が急上昇していることもあって、経営側も今回は賃上げに前向きだと言われています。日経新聞によると、経団連は春闘の方針案に「ベアの目的・役割を再確認しながら前向きに検討することが望まれる」という内容を盛り込んでいるそうです。


ユージ:これは意外ですね。結構期待していいんでしょうか?


神庭さん:物価が上がる中で給与が据え置きなら、実質的には賃金ダウンで生活が圧迫されてしまいます。労使ともにその点の認識は共有されているので、来年の春闘は多少は期待できるかもしれません。今年の春闘での大手企業の賃上げ率が2.27%なので、3%を超えるか、5%にどこまで近づけられるかが一つの注目ポイントになるかなと思います。


吉田:何度かワンモでも触れていますが、日本は賃金が上がらないと言われていますね。


神庭さん:日本の平均年収は440万円で、30年前からたったの4%しか上がっていません。この間にアメリカは48%、OECD平均でも33%増えているので、日本の失われた30年は異様だなと思います。なぜこんなことになったのかと考えると、第1にアメリカのGAFAのような成長産業を生み出すことができなかったということです。docomoのiモードとか日本企業にも「惜しい」サービスはたくさんあったんです。でも結果、ソニーは音楽配信でAppleに敗れ、mixiはFacebookになることはできませんでした。独自規格にこだわったり、言語の壁を越えられなかったりといった問題があり、世界に突き抜けられなかったんです。
もう1つの問題は、企業がコストカットを優先して非正規社員を増やしたということです。平成の30年間で非正規の割合は19.1%から38.3%に倍増しているんです。結果として賃金も抑制されてしまいました。非正規の増加とあいまって労働組合の組織率も低下していて、60年代、70年代にかけて推定30%を超えていた組織率が、直近では16.9%にまで下がっているんです。組織率が下がれば当然、会社側との交渉力も落ちてしまうので、待遇もなかなか改善されないということです。


ユージ:理由は複合的なんですね。どうしたら賃金が上がっていくのでしょうか?


神庭さん:個人レベルで言うと、会社の外で通じる能力がある人はどんどん転職して年収を上げていくというのも一つの選択肢かなと思います。終身雇用、年功序列が基本の企業では、「釣った魚に餌はやらない」でなかなか給料が上がらないことも多いんです。「だったら辞めてやりますよ!」というのがもっと当たり前になっていくと、経営者の側にも緊張感が生まれますし、「辞めないでくれ!」と待遇を引き上げてくれるかもしれません。雇用の流動性が高まることで、社会全体としても待遇アップにつながりやすくなるのかなと思います。


吉田:国全体として考えないといけないことは何でしょうか?


神庭さん:精神論みたいに聞こえてしまったら申し訳ないんですが、デフレマインドを脱却することが一番重要なんですね。物価は下がるのが当たり前のデフレワールドでは、なかなか賃金が上がらない、先の見通しが立たない、将来が不安だから家計も企業もお金を溜め込みますよね。家計の現預金は過去最高の1102兆円。企業の内部留保も516兆円に達しています。考えようによっては、今の物価高は長年続いたデフレマインドを捨て去るチャンスでもあるのかなと思っていて、人々の間で「将来、物価が上がりそうだ」というインフレ予想が強まると、当然賃金も上がるだろう、上がるべきだという発想になっていきます。「少しでも安いものを」というマインドから「多少の値上げは仕方ない。それが経済だよね。そのうち給料も上がるでしょう」というマインドに転換していかないといけません。そのためには、将来安心してもらうために、社会保障などしっかりプランを提示することが大事なんですが、そこができていないことが少し心配なところです。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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