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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

22.10.18

富裕層への課税強化の是非
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

BuzzFeed Japan 編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!


『富裕層への課税強化の是非』


吉田:公明党の西田税制調査会長は13日、共同通信の取材に、2023年度 税制改正で高所得者の所得課税強化を検討する考えを示し、年間所得が10億円を超えるような『超富裕層』にマトを絞った増税実施に意欲を見せました。
神庭さん、あくまで『超富裕層』ということのようですが、与党である公明党が、このような考えに至った背景には何があるのでしょうか?


神庭さん:『所得税』というのは、収入が多ければ多いほど増える『累進課税』になっていて、『住民税』を含めると最高税率55%まで達するんですね。一方で株の売却益にかかる税率は20%と低く抑えられています。そして、富裕層ほど株とか不動産の売却益など、税率が低い所得をたくさん持っていると。所得1億円を境にしてガクッと税負担が減ることから『1億円の壁』というふうに呼ばれ、「金持ち優遇なんじゃないの?」という批判が出ていたんですね。共同通信によると、公明党の西田税制調査会長は、こうした税制について「明らかにバランスを欠いている」というふうに指摘して、総理の諮問機関である『政府税制調査会』でもですね、『1億円の壁』について、複数の委員から「異常な姿だ」と見直しを求める声が出ていたんですね。


ユージ:税とかお金については『壁』というのがいろいろあるんですよね…。もちろん、そうした「1億の壁はなくすべき」という考えに反対の意見というのもありますよね?


神庭さん:「富裕層は海外脱出しちゃうんじゃないの?」とかですね、「貯蓄から投資へと言っているのに、金融所得の課税を強化するのは矛盾しているんじゃないか?」、「マーケットに悪影響が出るんじゃないの?」といった批判はあるんですね。ですが、年間所得10億円となると、かなりの富裕層に限られるので、実際の影響は限定的なんじゃないかなというふうに思います。むしろ、「10億円超だと対象が狭すぎるから、もっと広げるべきだよ」という声もあるんですね。岸田総理は『新しい資本主義』というのを掲げて、金融所得課税をバーンと打ち出したらですね、株価がダダ下がりしてしまって、『岸田ショック』と叩かれた苦い経験があります。その意味では、“10億円超”という線引きは、批判を浴びづらい絶妙なライン設定といえるかもしれないですよね。


吉田:そうした中で、「一部の富裕層が利益を独占している」という指摘は、以前からあるそうですね?


神庭さん:昨年末に日経新聞が報じた『世界不平等研究所』のデータによると、世界の上位1%の超富裕層の資産は、世界全体の個人資産の37.8%を占めたと…。一方、下位50%の資産は、全体の2%にしかならなかったんですね。昔、『世界がもし100人の村だったら』という本がベストセラーになりましたけれども、その例えでいくと、たった1人が4割近い富を独占するような歪な状況になっていると。日本でも最上位1%の資産が24.5%を占めて、上位10%まで広げるとですね、それが57.8%にもなるということなんですね。コロナ禍で経済活動を制限される労働者が増えた一方で、金融緩和のじゃぶじゃぶマネーが市場に流れ込んで、株価が高騰しましたから、これが富裕層にとっては追い風になったというふうにみられています。


ユージ:投資などは元々がリモートで普通にできちゃいますからね。コロナの影響って、やっぱり、結構、大きかったんですか?


神庭さん:そこは大きかったと思いますね。格差が拡大するとですね、人々の間で無力感というか、厭世観が広がって、戦乱とか暴動が起きたり、社会の秩序が乱れて治安が悪化したりするんですね。これは歴史が教えている教訓だと思いますが、そんな事態を招かないためにも、『富の再分配』というのは、国が果たすべき重要な機能になります。『所得の再分配』というのは、本来、余裕のある人から税金や社会保険料を徴収して、困っている人を助けるためのものなんですが、日本では、この再分配がうまく機能していなくて、共働き世帯やひとり親世帯の場合、かえって、再分配の後に貧困が悪化しているという研究もあるんですね。格差を縮めるはずが、逆に広がってしまうということが起きているとしたら大きな問題ですよね。


ユージ:そういう問題がある一方で、投資などで稼いでいる人は、「リスクがありながら、頑張った見返りだから」という意見もあるはずなんですよね。それを含めて、『富裕層課税の是非』、神庭さんはどう思いますか?


神庭さん:ユージさんには申し訳ないんですけど、今回の公明党案、僕は大賛成なんですよね。何かというと、お金やクーポンを配りたがるので公明党のことをこれまで、『政界の前澤さん』、『永田町のお金配りおじさん』」と呼んできましたけれども、ただ今回は、年間所得が10億円を超えるような『超富裕層』にしっかりと責任を果たしていただこうという政策で、“グッジョブ!”じゃないかなと思います。来年4月の統一地方選に向けての人気取りという側面も確かにあると思いますが、こういう人気取りはどんどんやればいいんじゃないでしょうかね。


ユージ:『超富裕層』と呼ばれる年収10億円超えの人たちが1人いなくなるだけでも相当大きいダメージだと思うんですよね。年収1000万円の人たちが100人いなくなるのと一緒ですから。その1人が海外へ行かないための政策というのも本当は大事なのかなとも思うんですけど…。稼いだ分を日本で消費してくれれば、お金もまわるのかなと思ったりしますけどね。


神庭さん:ヨーロッパには『ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)』といって、立場のある人間は、それ相応の責務を果たすべきだという考え方があるんですね。なので、僕個人的には、日本の富裕層にも、ぜひ、我関せずではなくて、“『ノブレス・オブリージュ』の精神”を発揮してほしいなと思いますし、格差が広がって社会が荒廃すると、犯罪も増えますよね。そうなると、富裕層もめぐりめぐってマイナスの影響を受けるわけですから、多めに払う税金もある意味、事前に払う保険料みたいなものだと思っていただけたらいいのかなと思います。



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