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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

22.09.19

デジタル給与の解禁
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【デジタル給与の解禁】

吉田:スマートフォン決済アプリなどを使い、賃金をデジタルマネーで支払う制度の解禁に向け、厚生労働省は2022年度内の省令改正を目指す方針を明らかにしました。これによって、デジタルマネーによる給与振り込みが来年春にも解禁されるということなんですが、神庭さん、まずはこの解禁の狙いについて教えていただけますか?


神庭さん:政府は利用者の利便性や事業者の生産性アップを目的にキャッシュレス化を進めており、社会全体をキャッシュレス化していく動きの一環として捉えることができると思います。一般社団法人キャッシュレス推進協議会によりますと、日本のキャッシュレス決済の比率は昨年段階で 32.5%。海外のデータをみると、韓国が9割越え、中国8割越え、イギリスは6割越え、アメリカも55.8%ですから、日本はかなり立ち遅れているんですね。こうした事情もあって、デジタル給与制度を導入することで、さらにキャッシュレス化に弾みをつけたい狙いがあるんじゃないかなと思います。


ユージ:キッシュレス化の推進は、ずっと言われていましたよね。今回のデジタル給与の解禁、利用者にはどんなメリットがあるんでしょうか?


神庭さん:労働者がいちいちチャージせずに済むから利便性がある、という話ですが、正直チャージは大した手間ではないですよね。労働者のメリットとしては少し薄いのかなと思いました。どちらかと言えば、企業側のメリットの方がずっと大きくて、PayPayとか楽天Pay、メルペイのようなキャッシュレス事業者が新規参入することで、彼らのビジネスチャンスが広がるということですね。給与を入口に、保険や投資、ネットショッピングなどを勧めたりして、Pay系各社のポイント経済圏に囲い込んでいく。そこでポイント競争が始まって、たとえば「給料のうち〇〇円をうちにチャージしてくれたら1万円分のポイントプレゼント!」みたいなキャンペーンが始まったら、めぐりめぐって利用者にもメリットが出てくるかもしれません。


吉田:もしそうなったら嬉しいですね。


神庭さん:ほかにも給料日は1ヶ月に1度が普通ですが、手数料が下がって日払い、週払いができるようになると、労働者にとっても便利になりますよね。もうひとつ、日本ではこれまで外国人労働者が銀行口座を開設するハードルが高かったんです。デジタル口座が普及することで、銀行口座の代わりに海外送金などの受け皿になっていく可能性もあると思います。アメリカだと「ペイロールカード」というプリペイドカードが普及していて、銀行口座がない人でも、給与を振り込める仕組みがあるんです。買い物したり、現金化したりもできます。同じような仕組みが日本でも広がっていくのではないでしょうか。


ユージ:ただ心配な点として、キャッシュレス事業者が万が一、潰れた場合はどうなるんですか?


神庭さん:破綻した場合も全額を保証する方向で議論が進んでいます。決済会社が事前に保証金を供託しておいて、破綻してしまった場合には保証会社などを通じて、払い戻す仕組みが想定されています。保証額の上限は100万円。それに対して当初はユーザーが口座に貯められる金額に上限がなかったので、100万円を超えた分はどうなるのか?ということで労働者側から懸念の声が出ていました。そこで、口座の残高も100万円を上限とすることで、全額保証を実現することが検討されています。銀行が破綻した場合は1000万円まで保護される預金保険制度がありますが、新たにできるデジタル口座ではそうした仕組みがありません。破綻以外に不正アクセスによる流出などの事態が起きた場合にも、しっかりと労働者を守れるような保証スキームをどうやって整備していくかが大切じゃないかな、と思います。


吉田:ほかにデメリットや課題はありますか?


神庭さん:どんな風に給与を受け取るか、労働者の側に選択肢が担保されていることが前提ですが、そこがちゃんと守られるのかが心配ですね。労働者が自由に選べるというのが制度上の建前ですが、極端な話、「給料は現ナマ直接手渡しか、じゃなければPay払いな」と言われたら、事実上Payの強制になってしまいますよね。その点はこれまでにも課題として指摘されていて、労働政策審議会の審議会資料では、企業側が銀行振込も含めた別の選択肢を提示したうえで、労働者の同意を得なければならない、されています。「30%だけPayでもらう」「半分だけPayにする」など、きめ細かく選べるといいですよね。


ユージ:選べるんだったらいいですよね。このデジタル給与について、神庭さんはどう思いますか?


神庭さん:SNS上では「何のメリットがあるの?」という感じで否定的な意見が多いです。Payでもらったら給料が増えるとか、所得税が減免されるとか、わかりやすいメリットがない限り、わざわざ選ぼうという気は起きないかもしれません。クレジットカードから電子マネーにチャージしてポイントの二重取りをしている人もいると思うんですが、そういう方はかえって損になる可能性もありますよね。現状、現金こそが「最強のPay」で税金や公共料金の支払いでも現金や銀行の振り込みじゃないと対応してくれないものが結構ありますから、デジタル給与というなら、そういった各種払込も全部Payやポイントでできるようにしていただきたいと思います。プライバシーも課題点のひとつです。購買履歴や行動履歴などのビッグデータは企業からしたら宝の山かもしれませんが、消費者側にとってはひとつの決済プラットフォーマーに多くの個人情報を預ける不安もあります。情報の利用目的や範囲などを明確にして、これまで以上に配慮と節度をもった個人情報の取り扱いをしていただきたいと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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