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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

22.09.06

10年連続で過去最高を更新した『内部留保』について
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

BuzzFeed Japan 編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!


『10年連続で過去最高を更新した内部留保について』


吉田:財務省が今月1日発表した『法人企業統計』によりますと、2021年度の企業の内部留保が、金融・保険業をのぞく業種で初めて500兆円を超えました。内部留保は10年連続で過去最高を更新しています。
神庭さん、改めて、『内部留保』というものについて教えてください。


神庭さん:『内部留保』というのはですね、企業の生み出した利益から、税金や株主への配当金、役員報酬などを差し引いたものです。『内部留保』は、正式な会計用語ではなくて、企業の貸借対照表では『利益剰余金』などの項目に計上されています。よく誤解されがちなんですけれども、内部留保は現金や預金だけを意味するわけではなくて、全額を企業が自由に使えるわけではありません。


吉田:10年連続で過去最高を更新、そして、“500兆円以上”ということですが、なんでこんなに膨らんだんでしょうか?


神庭さん:経済が右肩上がりで投資と成長のサイクルがうまく回っていれば、「次はここだ!」というところの成長分野に投資したりですね、従業員への賃上げをしたりできるわけなんですけれども、「この先どうなるかわからないな…」という不透明な状況が続いていると、企業としてもそうしたリスクを負いづらいですよね。なので、手元資金をなるべく厚めに持っておこうという選択につながりやすいということなんですよね。『リーマンショック』でですね、倒産が相次いで以降、そうした安全志向がさらに加速しまして、結果、10年前から8割増、10年連続過去最大という巨額の内部留保が積み上がってしまったんですね。


ユージ:『内部留保』というふうに言うと、ちょっとピンとこない方もいるかもしれませんが、個人でいうところの貯金に近いイメージだと思います。


神庭さん:イメージとしては近いと思いますね。


ユージ:じゃあ、普通だったら、貯金はあっていいと思うんですけど、“膨らみ過ぎる”のは、あんまりよろしくないんですね?


神庭さん:そうですね。政治の世界でも、「内部留保が増えすぎないように税金をかけなさい!」、「課税せよ!」という主張は以前からありまして、例えば、『共産党』や、今はなき『希望の党』も『内部留保課税』を訴えていたんですね。『自民党』も3年前に、甘利さんが税制調査会長だった時代には、「企業の内部留保をイノベーションにつながる投資へ回すべきだ」と訴えて、『税制優遇措置』の検討を表明したことがありました。内部留保とは微妙に違うんですけれども、高市さんも自民党の政調会長だった昨年ですね、企業の現預金に課税する私案を明かしています。なので、方法論とか温度感の違いはありますけれども、「企業にお金がたまり過ぎて経済に還流してこないというのは良くないんじゃないか?」という問題意識は、党派を超えて右から左まで共有されていると思います。


ユージ:実際、できるだけ、内部留保はため込まない方がいいんでしょうか?


神庭さん:一概にそう言い切れない部分もありまして、というのも、内部留保は非常時に備えてためておくとか、あるいは、将来のM&Aの買収資金としてとっておくといった側面もありまして、決して、“まったくの無駄金”というわけではないんですよ。日本企業は内部留保が多いと言われるんですが、実際、コロナ禍の危機対応で万が一の備えが役立った面もあるんですね。分厚い内部留保がなければ、コロナ禍での倒産はもっともっと増えていた可能性もあると…。だから、『内部留保=悪』みたいな考えは、それはそれでちょっと極端なんですよね。


吉田:政治家が議論している「内部留保に課税」というのは効果あるんでしょうか?


神庭さん:先ほども言いましたけれども、企業の生み出した利益から、税金などを引いて残ったものが内部留保ですから、「そこにさらに税金をかけるというのは、『二重課税』じゃないのか!」という批判もあるんですね。仮に課税されるとしたら、企業は「税金で持っていかれてしまうくらいなら…」ということで、もちろん、別の使い道を探ると思うんですが、ただ、その分のお金を何に使うかと言ったら、従業員のお給料を増やすよりも、おそらく、株主への配当を増やそうと考えるはずなんですね。


ユージ:そんな気がするなぁ…。


神庭さん:そうすると株をたくさん保有している人、“富める者がさらに富める”みたいなサイクルになってきますから、岸田さんが言っている『新しい資本主義』とか『令和版所得倍増』みたいな話とはちょっと遠くなってきちゃうかもしれないですよね。


吉田:神庭さんはどうすべきだと思いますか?


神庭さん:日本でも実は、資本金が1億円を超える『特定同族会社』に関しては、内部留保に対する課税をしているんですね。あと、アメリカでも、内部留保課税の制度自体はあります。なので、絶対不可能とは思わないんですけれども、企業の財務体質が悪化して“突発のリスクに弱くなってしまう”とか、必ずしもストレートに“従業員の賃金上昇につながるとは限らないですよ”というようなデメリットもあるんだよということを、きちんと認識したうえで、そこに対する手当ても考えていかないといけないんじゃないかなというふうに思います。少なくとも、「暴利を貪って、儲けを独占する悪徳大企業をぶっ飛ばせ!」みたいな単純な話ではないことは確かです。高市さんも去年「法人税に手を突っ込む予定だ。現預金に課税するかわりに、賃金を上げたらその分を免除する方法もある」とおっしゃっていましたが、『賃上げ税制』とかですね、『雇用システム』も含めた総合的な対策が求められているんじゃないかなと思います。世界的にも、『株主資本主義』から『ステークホルダー資本主義』への転換が進もうとしているんですね。『ステークホルダー』というのは『利害関係者』のことなんですけれども、「会社は株主だけでなくて、顧客や従業員、地域社会にも貢献していかないといけないよね」という考え方のことなんです。一番のステークホルダーというと従業員ですから、そこに還元しやすくするような仕組みとか税制とか、総合的な対策が必要なんじゃないかなというふうに思います。


ユージ:そうですね。『内部留保』と聞くと、ちょっと難しい言葉に聞こえることもあります。本来は、その『内部留保』がたっぷりあることにって、会社が、いざ!というとき、ここだ!というときに挑戦できるお金でもあるんですけれども、挑戦したい場所がないというのもちょっと悲しい現実だなと…。うまく回るといいなと思います。



そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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