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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

22.08.08

中国のミサイル、初めて日本のEEZに落下
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【中国のミサイル、初めて日本のEEZに落下】

吉田:先週の4日、中国が台湾周辺海域に発射した弾道ミサイルのうち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した問題。今回のミサイルに落下に至った背景、さらに、日本がとるべき対応について神庭さんにわかりやすく解説してもらいます。まずは、ここまでの経緯について教えてください。


神庭さん:ことの始まりはアメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問したことでした。下院議長はバイデン大統領、ハリス副大統領に次ぐ、アメリカのナンバー3にあたるポストです。下院議長が台湾を訪れるのは、1997年のギングリッチ氏以来25年ぶりのことでした。反発した中国は台湾周辺で大規模な軍事演習を開始して、中国軍の戦闘機が事実上の停戦ラインと言われる「中間線」を越えて飛行したり、台湾上空を通過する形でミサイルをぶっ放したりとやりたい放題になっています。ミサイルのうち1発は、与那国島の北北西80キロ地点に落下して与那国町の漁協が漁の自粛を呼びかける事態になっています。北朝鮮のミサイルが「かまちょ砲」だとしたら、中国のミサイルは習近平国家主席の「メンツ砲」。大国としての余裕も品格も感じられない、非常に残念な対応だなと思います。


ユージ:そもそも、ペロシさんってどういう方なんですか?


神庭さん:2007年、アメリカ初の女性議長に就任して、いったん共和党に議長ポストを渡しましたが、2019年に再び返り咲いています。ペロシさんは民主党の重鎮で、リベラル派・人権派の闘士でもあります。天安門事件に抗議したり、ウイグル問題を受けて北京五輪の外交ボイコットを訴えるなど、中国に対して一貫して厳しい姿勢で臨んでいるんですね。実はバイデンさんはペロシさんの台湾訪問について、「米軍は現段階では良いことだと考えていない」と牽制するような発言をしていました。とはいえ、アメリカは三権分立の国なので、行政トップの大統領であっても、議会のトップであるペロシ議長を羽交い締めにして引き留めるわけにもいきません。最終的には、バイデン政権の消極意見を振り切るような形でペロシさんが訪台に踏み切りました。さっき習近平氏のメンツ砲だと話しましたが、ある意味バイデンさんもメンツ丸潰れだったわけです。アメリカは11月に中間選挙がありますが、民主党は敗色濃厚で、ペロシさんも下院議長を退く可能性が囁かれています。「最後の花道」として、個人的なレガシーづくりのために台湾へ行ったのではないか、という見方も出ています。


吉田:改めて、中国・アメリカ・日本の台湾に対するスタンスはどういう状況なのでしょうか?


神庭さん:中国は台湾を「核心的利益」と位置付けていて、戦後、各国と国交を正常化するにあたって、相手国に対して、台湾を中国の一部だとする「一つの中国」原則を守るように求めました。日本はこうした中国の立場を「理解し、尊重する」、アメリカも「認知する」と表明してきたんです。特にアメリカは歴史的に「曖昧戦略」を取ってきていて、もし中国が台湾に侵攻して武力統一しようとした場合に、どうするか?台湾を守って中国に反撃するのか?あえて、そこを明らかにしないことで、中国を牽制しつつ、同時に台湾が独立を図って大きな火種になることを避ける戦略を取ってきました。ところが最近、変化の兆しが見えてきて、今年5月の日米首脳会談後の共同記者会見でも、バイデン大統領は記者から「台湾有事が起きた場合にアメリカが軍事的に関与するのか?」と問われて、「イエス。それが我々の約束だ」と答えています。「曖昧」から「明確」へ、じわじわとシフトしつつあるようにも見えるんですよね。


ユージ:一方、今回、中国はなぜこんなに怒っているんでしょうか?


神庭さん:いま言ったような変化の兆しへの苛立ちもあるでしょうし、今回に関していえば、習近平国家主席にとっては最悪のタイミングだったんです。習氏はこの秋の党大会で異例の3期目入りを決め、権力基盤を盤石にしようと躍起になっています。ただでさえゼロコロナ政策で経済が失速して反発がくすぶっているなかで、ペロシさんの訪台に対して弱腰の姿勢を見せたりすれば、国内世論に影響しかねませんので、今回の訪台に対してファイティングポーズを取らざるをえない、引くに引けない事情があったということです。


ユージ:日本は台湾危機とどう向き合うべきですか?


神庭さん:米インド太平洋軍のデービッドソン前司令官は昨年、「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と議会の公聴会で証言しました。台湾有事=日本有事だという自覚を持って、最悪の事態をシミュレーションしておく必要があると思います。『自衛隊最高幹部が語る台湾有事』という本で、自衛隊の元陸上幕僚長や元海上幕僚長らが集まって台湾有事の机上演習をしていますが、そこでは日本の離島に中国軍の上陸を許してしまう、という最悪シナリオも想定されています。こういうシミュレーションを元職の人たちだけでなく、現職の総理や防衛大臣が平時からやっておくことが大事だと思います。アフガニスタンでは、在留邦人の退避の遅れが問題になりました。台湾や中国の在留邦人は多いですから、戦火が起きる前のグレーゾーンの段階で、安全かつスムーズに退避する手筈を整えておくことも大事だと思います。
あともう一つ、台湾には最近、どこからかサイバー攻撃が殺到していて、各地のコンビニの掲示板に「ペロシは出ていけ」と表示されるなどの被害が出ています。日本のサイバー防衛能力はまったく不十分ですから、サイバー攻撃を受けて通信や電力などの基幹インフラがマヒしたら大変なことになります。この機会にサイバー防衛の強化にも努めるべきではないかなと思います。



そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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