25.09.17
日本とヨーロッパの『政治の混迷』…その背景は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【日本とヨーロッパの『政治の混迷』…その背景は?】
吉田:ブルームバーグによりますと、日本は今、伝統的な与党が弱体化する一方、ポピュリスト色の強い右派的な野党が台頭しています。ドイツやイギリスと似た状況で、日経新聞によりますと、ヨーロッパの主要国の首脳は、極右勢力に市民の支持を奪われて失脚。日本も、こうしたケースと類似した展開となっているということです。塚越さん、まずはドイツとイギリスの「政治の混迷」について、詳しく教えてください。
塚越さん:日本も欧米のような多党制の政治状況と似てきています。まず、これまで盤石だった自民党政権が様々な政策が有効じゃない、裏金の問題もあります。その一方でポピュリスト勢力が伸びている状況ということです。ドイツやイギリスにも似ています。例えばドイツ、今年2月の総選挙で当時のショルツ首相率いる社会民主党が大敗しました。反移民を掲げる、極右ポピュリズム政党の「ドイツのための選択肢(通称AfD)」が第二党に躍進しました。ただ、ドイツのテレビ局が8月に発表した世論調査では、AfDの支持率は26%でトップとなっています。このAfDという名前は、今後も聞くことが増えると思いますので、ぜひ覚えておいてほしいワードになります。次にイギリスの労働党は去年7月の選挙で圧勝しましたが、最近はこの労働党のスターマー政権の支持率が低下。不支持率が支持率を上回る状況です。加えて5月の地方選では、ここでも反移民などを掲げる右派ポピュリスト政党の「リフォームUK(改革党)」が勝ったということです。ちなみに、フランスでも先日、首相が退陣したニュースが話題になりましたが、フランスも多数派のいない議会で首相が頻繁に変わっている状況です。このように、ヨーロッパの大国は多党制と政治的混乱が強くなっており、その中で極右政党が台頭しているという状況です。
吉田:ドイツやイギリスで極右勢力が支持されているのは、どのような背景があるのでしょうか?
塚越さん:極右勢力の主張は、移民の削減や場合によって明確な排斥。また脱炭素政策の撤回といったものが多く、生活が苦しく不満のある市民に歓迎されています。そんな中で注目されるのが「イタリア」です。イタリアでは2022年の秋に40代の女性であるメローニ首相が誕生したのですが、こちらも極右政権の党首で、反移民政策などを掲げるポピュリスト政権でした。ただ、その後は緩やかに態度を変化させて、EUのエリートなどとも連携をとって、メローニ氏の属する強い保守陣営と中道右派勢力の橋渡しをしています。支持率は下がってきているものの、政治家の信頼度に関する調査では、メローニ氏が政党・党首の中でトップなので、2027年の選挙まではこのまま続投するとみられています。イタリアは最初から極右政権が登場したので、態度は変わってきているとはいえ第三勢力が出づらかったり、40代でイタリア初の女性首相という、日本やドイツ、イギリスと比べても刷新感のある指導者であり、実際にイメージ戦略も上手であるという指摘もあります。現実的には、極右的な振る舞いを強めるとEU全体と衝突するので、政権を安定するためにも協調路線を取ったということで、イタリアは注目です。
ユージ:日本とヨーロッパの「政治の混迷」。塚越さんは、どうご覧になっていますか?
塚越さん:前提として、多党制は強い政権がいないので安定しないという欠点がありますが、他方で政権が強くないので様々な野党の意見が反映されるというメリットがあります。これは日本が少数与党になったことで、政治的停滞もありますが、野党の主張が通るなど、ここ最近実感してきたかなと思います。ただ、こうした議論になると、いわゆる左派と右派といった「左右の対立」がよく議論されますし、今日もそういう話をしてきています。一方で私は「左右」だけでなく、もうひとつの対立軸で「上下」というのも考慮に入れる方が、理解が進むかなと思っています。これは、グローバル化を推進する経済エリートと、そうでない国内の経済的に厳しい立場にある人の対立ということです。グローバリズム 対 反グローバリズムという議論かなと思います。例えば、グローバル化で比較的安い賃金で外国人労働者などを受け入れて仕事をしてもらおうという主張の一方で、そうなると地元経済にはダメージを受けると考える人もいます。だから「反グローバリズム」という主張が出てきて、その流れで外国人労働者への忌避感が出るというところです。ただ実際のところ、日本経済は外国の方が工場など色々なところで働いてもらって成り立っている要素も多く、私自身は外国人が日本人の仕事を奪っている、という主張はあまり頷けないかなと思います。ただ外国人労働者に対する忌避感が強くなっている背景には、こうした感覚があるといえますし、これらの批判がヨーロッパに続いて日本でも、急速に論点になってきたかなと思います。なので、人権やいわゆる左右の対立、政治思想的な対立に加えて、「上下」という経済的な対立があって、その中で外国の方に対する意見も変わってきているというところも明確に頭の中に入れてみると理解が進むと思いますので、余計複雑になる部分もありますが、こうした視点も重要かなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
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