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25.09.02

政府が新しく作った「人工知能政策推進室」とは
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【政府が新しく作った「人工知能政策推進室」とは】

吉田:政府が、生成AIの技術革新とリスク管理を両立させるため、各省庁のAI政策の総合調整を行う「人工知能政策推進室」を内閣府に新設しました。塚越さん、まず「人工知能政策推進室」は、どんな部署なのか詳しく教えて下さい。


塚越さん:この「人工知能政策推進室」、すごい名前ですが、8月1日に新設された組織です。簡単に言えば、生成AIを最大限活用しつつ、同時にリスクを軽減するための「司令塔」のような存在として期待されています。まずは、およそ20人体制でスタートするとのことです。政府は9月1日に「AI戦略本部」というものも発足させたのですが、ここの事務局の機能も人工知能政策推進室が担うということです。


吉田:こうした組織が生まれた背景は何でしょうか?


塚越さん:これは、今年5月にいわゆる「AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)」が成立したことが関係しています。この法律が、AIの利活用に関する国や地方公共団体の決まり事に関するもので、この法律に従って今回の組織が生まれました。例えば、何かしらの権利侵害が起きたときに、推進室はAI法に基づいて色々な調査を行うということです。ただ、この組織自体は、直接の罰則規定は法律にないので、あくまで色々調査して事業者に指導助言等を行う組織になっています。


ユージ:「推進室」は、まず何から手を付けようとしているのでしょうか?


塚越さん:報道によると、この推進室は、まずディープフェイク問題に着手しているということです。アメリカのセキュリティ企業の調査によると、2023年にはウェブ上でおよそ9万5,000件のディープフェイク画像が確認されて、その98%が性的なものでした。ディープフェイクというのは、主に人の顔の部分だけ他人と組み替えるものですが、顔の動きなどもとてもリアルにつくってしまうので、人権に大きな被害を与えてしまうものです。こうした被害のうち、日本は著名人の国籍別被害者のうち全体で10%で3番目に多いです。一番は韓国で、全体の53%を占めています。K-POPスターの被害が多いです。二番目がアメリカということです。国内でも被害は深刻化していて、警察庁の調査では去年1年間で100件を超える事案が把握されていて、中でも生成AIが使われた事例は少なくとも17件はあるということです。


ユージ:日本は3番目に多いんですか!?ちょっと困りましたね。


塚越さん:そうですよね。これが厄介なのは、著名人だけじゃなくてちょっとした画像があれば簡単につくれてしまうので、学校の同級生などが軽率につくって拡散してしまうことがあります。昨今はSNSに誰でも写真をアップできるので、特に若い人は注意しなければいけません。特に性的なディープフェイクは本当に大きな人権侵害かなと思います。


吉田:推進室のような組織を作ることで、対策は充分なのでしょうか?


塚越さん:そうですね。なかなか難しいというところはありますが、世界中で規制が始まっています。被害が深刻な韓国では、卒業アルバムなどを悪用してディープフェイク画像をつくった事件などもあり、ディープフェイクの所持や視聴も罪になるなど、性的なものに関して厳罰化されています。イギリスでも厳罰化の方向を打ち出していますし、色々厳しくしています。現状、日本はディープフェイクを直接規制する法律は存在していなくて、「名誉毀損」「わいせつ物頒布罪」「著作権法」など、個別の法律で対応しています。その他、鳥取県が独自にディープフェイクを条例で規制する例もありますが、包括的な規制が求められているので、そういう意味では遅れています。今回のような組織をつくることで、特にAIの「リスク」に関する部分を取り締まる方向をつくっていく感じです。


ユージ:一方で、プラットフォーマーの責任も大きいですよね?


塚越さん:そうですね。SNSにアップされるので、こういったものなのですが。やっぱり、国際的にもプラットフォーマーへの規制を強化する国もあります。特にEUは2024年に「デジタルサービス法」というものが施行されていて、投稿の削除に対する厳格な規定などがあり、EU内で4,500万人以上のユーザーがいるSNS事業などが対象となっていて、違法な物は削除することになっています。違反した場合が、最大で全世界売上の6%の制裁金が課され非常に厳しいです。アメリカでも、今年の5月に「テイク・イット・ダウン法案」と呼ばれる連邦法が成立しています。これは、SNSでディープフェイクの被害を受けた場合、プラットフォーマーは48時間以内に削除しなければならないということになっています。色々、つくられているのですが、そういう意味では日本はちょっと遅れている印象がどうしてもあります。


吉田:日本の生成AIに対する対応について、塚越さんはどう見ていますか?


塚越さん:海外が、色々進んでいる中で、まだ日本は遅いのかなと思います。これからこういう推進室をはじめとして、包括的な法がつくられるんじゃないのかなと思います。技術発展はすごいですが、法制度が追い付かないので、ここが難しいかなと思います。同時にリスクも多いですが、AIや半導体はビジネス的にも注目されているので、まずはその意味で、制度を整えてリスクを最小化する。リスクが最小化されることであれば、ビジネスをどんどん使いますね。ということで民間ももっともっと技術を使っていく方向になるので、そういう意味では新しく制度を作っていくなど、そのための推進室が今回作られたと思っていただければいいのかなと思いますので我々も被害にあわないように色々注目しないといけないですね。


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