25.08.05
日銀が金利据え置き、インフレでも利上げしない理由

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「日銀が金利据え置き、インフレでも利上げしない理由」
吉田:日銀は7月31日の金融政策決定会合で、政策金利を「0.5%程度」のまま据え置くことを決めました。神庭さん、改めて現在のインフレの状況を教えて下さい。
神庭さん:6月の消費者物価指数は、変動が大きい生鮮食品を除いて前年同月比3.3%アップしました。46カ月連続の上昇です。食料品の値上がりが激しく、なかでもコメ類は2倍以上に上がっています。他にもチョコレートが39.2%。コーヒー豆40.2%アップしていまして、最近の私のおやつタイムも直撃しているので、ほうじ茶と杏仁豆腐に切り替えました。物価高の影響はかなり深刻です。日銀が先月発表した生活意識アンケートでも、61%の人が暮らしに「ゆとりがなくなってきた」と答えています。
ユージ:まさに家計直撃ですよね。インフレの話になると必ず出てくる「利上げ」。改めて、利上げについて教えて下さい。
神庭さん:「利上げ」っていうのは中央銀行が政策金利を上げることになります。金利が上がるとお金が借りにくくなる。水道の蛇口を閉めるようなもので、世の中に出回るお金を減らす効果があります。景気が過熱したり、インフレで物の値段が上がり過ぎてしまった時に、金利を上げることでそれを抑えることができます。逆に金利を下げることは「利下げ」といい、水道の蛇口をドバッと開けてお金を放出するイメージです。デフレで景気が悪い時は、利下げをしてお金を借りやすくして消費や設備投資を喚起する。金利は景気や物価の調整レバーです。利上げ、利下げを司る日銀は「物価の番人」とも呼ばれています。
吉田:その「物価の番人」である日銀が、利上げを見送った理由は何でしょうか?
神庭さん:景気への影響を懸念しているのだろうと思います。アベノミクス、黒田体制のもとで、日銀は超低金利、異次元緩和でじゃぶじゃぶマネーを供給してきました。2年前に、日銀総裁に就任した植田和男さんは、アベノミクスからの出口戦略を模索していて、2024年3月にはマイナス金利を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切りました。植田さんとしても、別に利上げをしたくないわけではないです。ただ、一気に進めるとせっかく上向き始めた景気が腰折れしてしまいます。だからこそ、慎重を期しているわけです。NHKによれば、植田さんはこんな言い方をしています。「現在の物価高のかなりの部分が供給サイドの要因だ。この時に利上げで対応しようとすると、景気を冷やして所得が減るから例えば食料品に対する支出が減って食料品価格も下がることになってしまう。本当に望ましいかどうかは“うーん”と考え込んでしまう」ということですね。
ユージ:さらに言うと、日米関税交渉も影響したということはあるでしょうか?
神庭さん:それはものすごく影響したはずです。トランプ関税がなければ、7月に利上げがあってもおかしくはなかったです。相互関税は15%で一応合意しましたが、完全決着したわけではなく、影響が読みきれない部分も多いです。例えばですけど、自動車など輸出企業の収益が低下する。アメリカ経済の失速で日本も景気が低迷する。関連企業で働く人のボーナスや賃金が下がる、といった経済へのダメージが懸念されます。15%という数字が固まったことで、不確実性は減りましたが、植田さんは「一気に霧が晴れることはない」と慎重な見方を崩していません。
吉田:利上げを見送った今回の日銀の判断、妥当なのでしょうか?
神庭さん:現段階では妥当だと思います。実際、トランプ関税の影響は読みきれない部分も多く、慎重に判断する必要があります。付け加えて言うと、利上げのリスクや副作用も考えないといけないです。利上げをすれば、ドル円は円高に動きます。輸入物価が下がるのはありがたいですが、逆に輸出産業には打撃になります。自動車業界などは関税と円高のダブルパンチで苦しむ可能性があります。利上げをどんどん進めていくと、国債の利払い費が膨らんで政府の財政も逼迫します。財務省の試算によると、国債の返済や利払いにあてる国債費は、3年後の2028年度にこのままいくと7.1兆円も増えるという状況です。
ユージ:利上げはいいことばかりでもないんですね。そうなると、次の利上げのタイミングはいつになりそうなのでしょうか?
神庭さん:これは神のみぞ知るというか、エコノミストの判断も割れています。ブルームバーグの緊急調査によれば、45人のエコノミストのうち、次の利上げを「今年10月」と見る人が42%。「来年1月」が33%。「今年12月」が11%という順番でした。関税合意の前に比べて、年内利上げを予想する人の割合が増えています。仮に石破さんの後の総理にアベノミクス路線を継承するような金融緩和寄りの人が選ばれた場合、その影響も受けそうです。足もとの実質賃金は5カ月連続のマイナスで、コストプッシュ型の「悪いインフレ」から持続的な賃上げを伴う「良いインフレ」への転換はまだ見通せない状況です。2000年代の前半、マックのハンバーガーは59円でした。吉野家の牛丼は280円でしたよね。でも、「デフレ時代は良かった」「あの頃が懐かしい」と言っていると、一生給料が上がらないまま、失われた40年になってしまいます。デフレ・ノスタルジーを断ち切るためにも、実質賃金を上げて「良いインフレ」に転換していく必要があります。こういった状況を踏まえると、今の日銀の植田さんの恐る恐る、だましだまし利上げしていく路線もやむを得ない部分があるのかなと思いますね。
ユージ:そうですね。そんな時代もありましたね。本当に今、物価が上がっていくのはしょうがないとして、それに賃金が追い付く形になっていくのが一番の理想ですよね。
神庭さん:本当にそうなっていかないと困りますよね。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 5, 2025
『日銀が金利据え置き、インフレでも利上げしない理由』について。…
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 5, 2025
現在、賃金の上昇幅が物価上昇になかなか追いついていない中で、どうにか賃金を上げていこうとしているのですが、そこで利上げをされてしまうと企業側も苦しくなりますし、間接的に我々にも影響が大きく出てきてしまう可能性があります。#ワンモ
#ユジコメ③…
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 5, 2025