25.07.08
日本産水産物の輸入を再開した中国の思惑

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
「日本産水産物の輸入を再開した中国の思惑」
吉田:中国の税関当局は6月29日、2年近く全面禁止していた日本産水産物の輸入を一部再開すると発表しました。ただ、福島県など10都県は、再開対象から除外されて輸入禁止のままです。神庭さん、改めて日本産水産物の輸入禁止と再開に至った経緯を教えてください。
神庭さん:2011年の東日本大震災による福島第一原発事故を受けて、中国は福島、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、長野、新潟の10都県の食品を輸入停止にしました。2023年8月、日本が原発の処理水を放出したことに反発して、中国は輸入停止の対象を10都県以外の日本全国に広げて、日本産水産物を全面禁輸しました。2024年9月に、段階的に輸入を再開することで日中が合意し、その後も協議を重ねてきました。そして今回、ようやく10都県以外の37道府県に関しては、輸入を解禁することになりました。
ユージ:中国が日本全体の水産物を禁輸するきっかけとなった、2023年の処理水の放出ですが、そもそもの「処理水」について教えて下さい。
神庭さん:よく混同されますが、原発事故などで出た「汚染水」とはまったく別物です。経産省によれば、「処理水」とは「汚染水」を浄化処理して、トリチウム以外の放射性物質を規制値以下になるように除去したものです。トリチウムは水素と性質が似ていて除去が難しいため、放出前に海水で基準値以下に薄めています。IAEAも、日本の処理水放出について「国際的な安全基準に合致する」「環境への影響は無視できる程度」と発信しています。にもかかわらず、中国は全面禁輸を強行したわけです。中国の原発では、100兆ベクレルを超えるトリチウムが排出されているのですが、福島第一原発は、約22兆ベクレル未満。中国の方が4~5倍も多いです。完全にダブルスタンダードだなと思います。
吉田:今回は10都県以外の37道府県の輸入再開ですが、具体的にどんな内容でしょうか?
神庭さん:JETRO(日本貿易振興機構)によれば、輸出を停止していた水産物メーカーは、中国で再登録する必要があり、輸出の際は日本の公的機関が発行した衛生証明書、放射性物質検査合格証明書、原産地証明書の提出が義務付けられるということです。解禁と言っても色々、細かく条件がつけられています。何か問題が見つかれば、中国側はまた輸入制限をかけることも辞さない構えです。しかも中国はいまだに「核汚染水」という言葉を使っており、根本の姿勢は変わっていないことがうかがえます。
ユージ:何だかものすごく政治的なものを感じるのですが、今回の中国側の思惑には何があるのでしょうか?
神庭さん:1つには、アメリカとの関係があります。米中が関税、貿易戦争で揉めているさなかに、お隣の日本とも事を構えるのは得策ではありません。ここは擦り寄っておこうという判断ではないでしょうか?加えて、日本もジャイアンのようなトランプ氏に「関税を大幅に引き上げるぞ」と言われて弱りきっています。日本に融和的な姿勢を示すことで、日米関係に楔を打ち込む意味合いもあるでしょう。「アメリカがモラハラ気味で困っているんだよね…」と弱っている日本に対して、「どしたん、話聞こか?」と中国が近寄ってきている、みたいな感じです。10都県の禁輸を継続したのは、今後の交渉カードとして温存する狙いがあるのかなと思います。
吉田:他にはどんな計算がありそうでしょうか?
神庭さん:もう1つ、日本の中国依存度の急速な低下に対する焦りもあるのではないでしょうか?中国への輸出激減で当初は大ダメージを受けた日本ですが、例えばホタテなどはアメリカやベトナムに販路を拡大して、むしろ好調です。昨年の日本全体の農林水産物輸出額は、1兆5,073億円と12年連続で過去最高を更新しています。中国からすると「あれ、意外と効いてないぞ」と当てが外れた格好です。このまま日本が脱中国を進めるよりは、なるべく中国依存度を高めておいて、一定の影響力を維持したいという判断かもしれません。
ユージ:なるほどね。あと、今回のタイミングには何か意味があるのでしょうか?
神庭さん:今年は終戦80年の節目です。中国からすると「抗日戦争」の勝利を祝うメモリアルイヤーというふうに言えます。日経新聞は《抗日戦争勝利80年記念式典を9月3日に控え、国民の反日感情が高まる前に決めるべきだとの判断》と分析しています。9月に向けて国民の反日感情が高まっていくさなかに、日本に融和的な対応をとると国内世論が「弱腰だ!」と吹き上がる可能性がある。そうなる前のタイミングで動いた、ということかなと思います。
吉田:中国の輸入再開、神庭さんはどう受け止めましたか?
神庭さん:めでたし、めでたしでは済みません。残りの10都県についても粘り強く輸入再開を求めるべきだと思います。やはり、中国の意図の裏の裏まで読む必要があると思います。中国は一方的に現状変更をした後、あたかも以前からそれが当然だったかのように「異常の日常化」を図ってボーダーラインを引き直します。そして、都合のいいタイミングで「しょうがない、じゃあ以前の状態に戻してあげるよ」と外交カードとして切ってくる。典型的な恩着せ外交だなと思います。融和的な姿勢の一方で、3日には中国公船が尖閣沖の領海に侵入しました。5月には中国ヘリの領空侵犯もありました。トランプ政権の暴走で少し中国の影が薄くなり、「戦狼外交」が鳴りを潜めているようにも見えますが、そこは警戒を怠ってはいけないと思います。「パンダをちょうだいよ」みたいなことを日本は言っていますが、パンダが一皮むいたら中身は狼みたいなことがあり得ますから、そこは気を付けていただきたいなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) July 8, 2025
『日本産水産物の輸入を再開した中国の思惑』について。
そもそも禁止していた理由の一つが、原発事故などで出た処理水を汚染水だと言って禁止していたのですが、このタイミングで再開をしたとのことなんですね。#ワンモ
#ユジコメ ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) July 8, 2025
再開した理由としては、アメリカとの関係がうまくいっていないこともあり、日本に頼ろうということなのかな?と思うのですが、日本側からすると中国との取引が停止している間に、違う販路を見つけていて成功している例もあります。#ワンモ
#ユジコメ ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) July 8, 2025
そのため、再開したからと言って中国だけに頼るような形ではなく、日本ブランドの特産品をどんどん海外に広げていく形で、新しい販路を拡大していければ良いのではないかと思いました。#ワンモ