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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.07.03

参院選公示当日、ポピュリズムを考える
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「参院選公示当日、ポピュリズムを考える」

吉田:本日、参議院選挙が公示され、午前8時半から多くの自治体で立候補の受付が始まります。投票日の7月20日(日)まで、各地で選挙戦が繰り広げられるわけですが、そんな参議院選挙の話題の中で“ポピュリズム”という言葉を耳にしたことありますか?そこで、“ポピュリズム”について塚越さんと考えていきたいと思います。


ユージ:塚越さん、まずポピュリズムについて教えてください。


塚越さん:聞いたことあるな、という方も多いと思います。ポピュリズムはよく「大衆迎合主義」と訳されます。ただ、単に「人々の民意を大事にする」というより、政治を「腐敗したエリート」と「(被害者である)私たち庶民」という二項対立で語り、エリートを敵視しながら、「庶民の声」をストレートに政治に反映させようとする運動やスタイルのことを指します。実は左右問わずポピュリズム的手法は見られますし、自分たち庶民は被害者だ、というポジションに立つことによって、対立相手は必ずしもエリートだけじゃないというのも最近の特徴です。


ユージ:“庶民の声”が政治に反映されるのは、良いことではないかと思うのですが、いかがでしょうか?


塚越さん:「民意をくみ取る」こと自体は民主主義にとって非常に重要です。ただ問題は、目の前の短期的な人気取りを優先することで、政策の持続可能性や合理性の議論をおろそかにしがちな点です。二項対立になるとそういうところがおろそかになります。例えば、最近は「財政(減税)ポピュリズム」という言葉が一時期賑わいました。どういう政策を支持してもいいのですが、例えば実現可能性や根拠がどうなのか等、問われるべきポイントは抑える必要があります。政策を見る上で、力強い言葉が独り歩きしがちになってしまう可能性もある、ということもいえます。


吉田:実際に、ポピュリズムが政治に影響した国はどうでしょうか?


塚越さん:色々ありますが、やっぱり象徴的なのはアメリカのトランプ氏ですよね。2017年の第一期政権のときから「アメリカ・ファースト」という分かりやすいスローガンをたてて、移民排斥に関わる政策や、既存のエリート体制に反発することで支持を集めてきました。特にトランプ氏の場合は、強い言葉で人を攻撃するスタンスもあります。もちろん、トランプ氏の前からアメリカ社会には亀裂が入っていましたが、トランプ政権になって以降、その亀裂は一層強くなったのは間違いないかなと思います。ポピュリズムの観点でいえば、分かりやすく昨今の「関税」がありますよね。アメリカに製造業を取り戻す!雇用を取り戻す!というスローガンは、そういった地域等に住んでいるアメリカの人にとっては、とても心に響くものがあるのかなと思います。分かりやすい部分がありますよね。一方で、アメリカの外にある日本やその他の国々からすると、もともと対立している中国からでさえ「相互関税はお互い利益を生まない」と突っ込まれてもいるわけです。そう考えると、ポピュリズムの力は強いけれども、やはり危険性も持ち合わせているかなというところもあります。もちろん、時の政権はポピュリズムの側面だけでなく総合的にみていく必要がありますが、ポピュリズムの視点はひとつの視座をくれるかなと思います。


ユージ:トランプ大統領の行動力は、ある意味、有言実行としてポピュリズムを体現しているのかもしれないですね。


塚越さん:そうですね。「前例のない行動」というのは賛否が分かれるわけですが、ポピュリズム的な行動をする際には、分かりやすい言葉や人気取り政策、あるいは自分たちは搾取されているといった、強い言葉が有効に機能してしまう側面があります。特に強い言葉については、情報社会学の観点でいうと、「共感」を得るためのものに使われます。例えば、ポール・ブルームというアメリカの道徳心理学者は、『反共感論』という本を書いていて、共感を2つに分けようと言っています。1つが「情動的な共感」というもので、他人の痛みを自分ごとのように感じるような、身近な分かりやすい共感です。犯罪被害者に寄り添って、犯罪に対して怒る、といったよくある共感のパターンがあります。ポピュリズムは、基本的に怒りの気持ちを強くするような、情動的な共感を呼ぶこともあり、強い言葉が投げかけられることもあるわけです。全部ダメというわけではないですが、ここにSNSが加わると、暴走気味になります。


ユージ:SNSで、タッチひとつでいいねをもらう「共感」が、まさにコレかなと思いました。


塚越さん:一方でブルームは「認知的共感」というものを「大事なんだ」と言っています。これは、人の言葉や言っている考え方を、共感ではなく理性的に理解しようというものです。例えば、お医者さんや看護師さんが、患者さんの痛みに共感して一緒に泣いてしまうと仕事になりません。友人の看護師が話していましたが、優秀な看護師はあまり泣かないと言っています。そうじゃないと、感情に支配されてしまうから。なので、何を言っているのかというと、理性的に共感する、理性的に理解するということを重視すると、強い言葉を聞いても、なぜその人がそう言っているのか?人気取りの強い言葉の裏側を考えることができるかなと思います。感情も大事ですけど、バランスも大事かなと思います。


ユージ:SNSで情報発信する今の時代にポピュリズムは、浸透しやすいのかもしれないですね。


塚越さん:そうですね。SNSと強い共感、強い言葉は相性がいいですよね。だからこそ、ネット選挙はいろんな意味で注目されているわけです。ずっと言われてきたように、怒りやつよい気持ちを増幅させやすいというので、悪い意味でスマホとSNSはフィットしちゃっているかなと思います。


ユージ:SNSの言葉は、端的でインパクトのある言葉も多いですから、響くものもあれば、ちょっと刺激になりすぎちゃうものもあります。確かに、おっしゃる通りですね。そんなポピュリズムを踏まえた上で、今回の参議院選挙は、政策や公約をどう見ていけば良いと思いますか?


塚越さん:自分の感情は大切にした方がいいと思います。様々な政策や公約が出てくると思いますが、本当に実現可能なのか、強い言葉に共感するのも全くないというものはない、大事にする部分はあります。一歩引いてみて、実際にどれくらい効果があるのか、社会にとってどれくらい有益なのか、ハードルが高いですが政治家の言葉の裏にある、この人は何が言いたいのかな?というのは、理性的に認知的に共感していくのも必要になってくるかなと思います。SNSなど、ネットの力が強くなってきますが、色々バランスよくみていくというのが重要になってくるのでみなさんも注目してみてください。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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