24.05.08
映画の新たな流通の形『DVT』その可能性は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「映画の新たな流通の形『DVT』 その可能性は?」
吉田:映画の新たな流通の形として「DVT(デジタルビデオトレーディング)」が登場しました。購入者は、サイト上で再販売やレンタルで貸すことができて、その収益の一部が制作者に分配されるのが特徴だということです。塚越さん、この「DVT」とは何なのか、教えてください。
塚越さん:DVTはデジタルビデオトレーディングの略称で、クリエイターとフォロワーを合法的につなぐための新しい映像流通の枠組みです。一言でいえば、動画配信コンテンツが大量にある世の中で、作品を大事にするファンが適切に映像クリエイターを支援するための仕組みといえます。劇場、DVD、動画配信に続く第4の「映画流通の形」になります。どういう仕組みかというと、まずユーザーは4月に誕生した「Roadstead」というプラットフォームから、映像作品をDVT形式でデジタル購入します。通常の動画配信との違いは、ユーザーは購入すると「所有者」となって自分で視聴する以外に「リセール」「レンタル」「スタニング(日本語でいう「推し活」)」の3つの権利を持つことができます。1つ目の「リセール」。デジタル上で購入した作品は、Roadstead上で他人に再販売ができて価格も自由に決められます。売買が成立すると、価格の2割が手数料として監督などの制作陣に収益が配分されます。2つ目は「レンタル」。これも所有者が価格と期間を決めることができて、レンタル中に所有者は視聴できません。レンタル料の1割が所有者に入り、その他は手数料と制作陣の収益となります。重要なのは、ユーザーは「購入して終わり」じゃなくて、リセールやレンタルを通して制作陣を経済的に支えて、関わりをずっと持てるということです。3つ目のスタニングは英語でいう「推し活」で、友人を自宅に招いて上映会などができる、という権利です。例えば、買ったDVDを友達に見せることは厳密には法的にダメですが、最初からOKとして「うるさく言わないよ」という意味があります。
吉田:このDVTの形式で、すでに映画が販売されているのですか?
塚越さん:Roadsteadでは、4月にオリジナル作品として黒沢清監督の短編映画『チャイム』を販売しています。黒沢監督は『スパイの妻』などで知られる世界的に有名な監督で、この『チャイム』という作品は2月にベルリン国際映画祭で上映されたのですが、一般公開はされていません。面白いところは、この作品を買えるのは999人までに限定されていて、価格は1万4,850円。購入制限があるので、人気が出ればリセール価格が高騰して、それが制作陣にも収益として還元される可能性があります。これまで、DVD等は販売された後は転売されても制作陣は何も受け取れなかったわけですが、プラットフォームで管理することで収益化できるということです。
ユージ:面白いですね。
吉田:映画館が個人になったみたいですね。
ユージ:レア感もあっていいですよね。この「DVT」の登場には、どういった背景があるのでしょうか?
塚越さん:背景として日経MJは、映画業界の3つの環境変化を指摘しています。1つ目は「売れる作品」が偏るということ。日本映画製作者連盟によれば、映画館のスクリーン数に占める「シネコン」の割合は、2000年の4割から2023年は9割まで高くなっています。シネコンは一般的に大資本でつくられた作品を上映しますが、一方で小規模な「ミニシアター」が衰退していて、個性的な作品は出づらい状況なので、今回のDVTはその受け皿という意味があります。2つ目は動画配信サービスの不公平感。調査会社のGEM Partnersによれば、去年の動画配信の国内市場規模は5,740億円で、4年間で倍増しています。ただ、動画配信では現状、再生数に応じた報酬などが貰えないので制作陣は不満があります。去年アメリカの脚本家や俳優がストライキをして交渉して、ある程度権利を確保しました。日本政府もこの流れをみて4月17日に取り引き慣行の実態を調査し、新しいビジネスモデルを構築するとしていて、今回の取り組みは先行事例になる可能性があるかなと思います。3つ目は「海賊版の被害」です。コンテンツ海外流通促進機構によれば、日本の海賊版被害は2022年でおよそ9,000億〜1兆4,000億円程度で2019年から6倍に増えています。被害も大きいということで、Roadsteadはブロックチェーン技術を利用していて所有者が明確になっていたり、スクリーンショットや画面共有もできない仕組みにしており、海賊版対策という意味もあります。
ユージ:「DVT」について、塚越さんは、どんな印象を持たれましたか?
塚越さん:基本的には業界の持続可能性を考えるファンの方にとっては非常に良い取り組みだと思います。クラウドファンディングがありましたが、また少し異なるツールで新しく支えるやり方なのかなと思います。さらに言うと、この『チャイム』は999個が完売しても1,500万円程度だということで、制作費の大半はカバーできますし、リセール等でさらに収益は増えます。売る量や価格の調整がこれから必要になってくるかなと思います。それが上手くいけば、非常に面白い取り組みになるかなと思います。いろんな作品に出る可能性もありますので、ちょっとチェックしてみるのもいいかなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET#ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) May 8, 2024
「映画の新たな流通の形「DVT」 その可能性は?」について…
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) May 8, 2024
僕が良いなと思った点は、製作者がお客さんに商品を届けたら、そこでお金を受け取って終わりですが、DVTの場合は、2次流通させても製作者にお金が必ず入ってくるところです。その金額から手数料として、作品の監督や製作陣に収益が配分されるため、業界の活性化に繋がると思いました。…
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) May 8, 2024
新しい流通の形であると同時に、その分野が好きな人達が、自分たちで業界を盛り上げていくためのツールとして捉えると分かりやすいです。結果的に業界の活性化に繋がったり、これまであまり注目されなかった作品が…