26.08.27
警察官が足りない…ロボコップの時代はやってくるのか

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら
「警察官が足りない…ロボコップの時代はやってくるのか」
ユージ:今朝は、「警察官が足りていない」というお話です。塚越さん、警察官が足りていないんですか?
塚越さん:そうなんですよね。まず、高卒、大卒対象の採用試験の受験者ですね。受験した方は、2021年度に全国で計6万2,900人でしたが、2024年度にはおよそ4万3,000人と、3割も減少しています。その上で、毎日新聞によりますと、東京の警察官は、4月1日時点で4万559人です。これは都の条例で定められた定員に対して7%、3,000人ほど足りていない状態なんですね。警視庁によると、このうち半分の1,500人程度は育休明けの職場復帰から1年未満の人で、条例によって欠員扱いになってはいるものの、実際は勤務しているということです。ただ、それでも1,500人ほどは足りていません。統計で見ると、警察官の定員に対する充足率は、東京が93%と最下位で、全国平均97.1%と比較しても低いですね。全国平均でも97.1%で、3%ほど足りていないということなので、全国でも警察官不足が起きています。ちなみに、東京都の警察本部は「警視庁」と呼ばれ、他の道府県は「警察本部」といわれています。国の機関として全国的な制度とか広域犯罪対策を行っているのは「警察庁」です。「警視庁」と言われたら東京の警察組織だと思ってください。
吉田:なぜ、警察官が足りていないのでしょうか?
塚越さん:理由はたくさんあるのですが、まず事件や事故は常に起きるので、警察官はその対応も忙しく、いわゆる「ワークライフバランス」の確保が難しい点にあります。東京の警視庁の場合は、他県の被災地や大規模警備などで多くの人員を派遣することもあって、特にフルタイム勤務の警察官が足りていない状況です。また、そもそも少子化という課題に加えて、採用も不調です。東京は大企業が集まっていることもあり、民間に人材が流れがちです。さらに、今の労働市場は基本的に売り手市場、つまり求職者に有利になっているので、ステップアップを目指した若手や中堅の警察官の離職も相次いでいるということです。別の側面では、警察官のイメージの問題もあります。警察官はどうしても力が必要になるので、学生時代に体育会系だったみたいな方以外は、「自分は体力的に無理」と思って敬遠する傾向があるということです。もっといえば、そもそも昨今は「体力勝負」の職場を忌避する学生も少なくないという背景もあって、尊い仕事ではありますが、職業として選ばれにくくなっているということです。
ユージ:最近は、凶悪な犯罪とかも耳にしますし、そんな中、警察官が足りないと不安ですよね。
塚越さん:パトロールや事件対応で、警察官が一時的に不在になっている交番を見かけることはありますが、人手不足が続くと、こうした不在の時間が増えることも懸念されます。また警視庁地域部によると、110番通報を受けてから警察が現場に到着するまでの時間が、徐々に延びつつあるということです。通報件数自体が増えていて、人命に関わるような事案は優先され、凶悪事件の対応は維持できているということですが、逆にいえば人命に関わらないものは遅れていることがあるそうです。もちろん、現場の捜査でも人員が足りなければ対応が難しくなって、結果的に治安維持への影響が懸念されます。さらに、昨今は特殊詐欺やサイバー犯罪など、「新しいタイプの事件」に対応するための専門人材も必要になっており、現場は苦労しているということです。
吉田:採用を増やすためにしていることはあるのでしょうか?
塚越さん:採用を増やすとなると、まずもって大事なのは給料ですが、警視庁は大卒の初任給を30万2,100円だった去年から、今年32万1,900円と、大体2万円増やしました。実務2年目のモデル年収は、およそ615万円から657万円とアップして、別途扶養手当、住宅手当、通勤手当も出るということで、かなりアップしたんですよね。あとは、学生時代の奨学金の返済支援制度も全国で初めて導入したり、採用試験のハードルについても、民間の就職でおなじみの「SPI」を使った試験方式を去年度から導入しています。SPIは全国の警察組織でも導入が進んでいて、民間狙いの人も警察を受けやすくしています。他にもサイバー犯罪の知識も必要なので、資格を持つ人の評価を加点するところもあり、様々なところで多角化を進めているという感じですね。
ユージ:人手不足にフィジカルAIの時代も近づいていますが、ロボコップが現実になる時代もやってくるのでしょうか?
塚越さん:なかなかね、今すぐには難しいかなというところでして。警視庁でも、例えばストーカーやDVの相談音声の文字起こしをAIにさせて、要約を作るなど、AIでできることは進めているんですよね。「DJポリス」が人手不足で「AIポリス」になるとかあるかもしれないですけど、まずは人を確保して、AIで楽して、現場の人間に回すということで、警察官の方に頑張っていただきたいですね。