先週リリースされた私史上、最高傑作と自負しているアルバムを改めて聴きながら、わたくし自ら、制作中のエピソードや、今の想いを語ります。今日のコードは「『Wormhole / Yumi AraI』セルフライナートーク」です。
■今週のChordは“『Wormhole / Yumi AraI』セルフライナートーク”
DARK MOON / 松任谷 由実
先週発売された私の40枚目のオリジナルアルバム、『Wormhole / Yumi AraI』。
オープニングを飾るこの曲は、「DARK MOON」です。
この曲は、もうオープニングチューンとして想定されていた感じです。で、詞をつくるときに、プロデューサーから「フランスの官能小説みたいなものにしてよ」と言われて、月食の状態・・・太陽と地球の間にちょうど月が入って真っ暗になるということを擬人化したような詞にいたしました。
長~い宇宙の航行・・・旅の間にほんのひとときだけ出会う、そういう切なさを感じていただけたらと思います。
という感じでお送りしていく今日のコードは、「『Wormhole / Yumi AraI』セルフライナートーク」!
先週リリースされた私史上、最高傑作と自負しているアルバムを改めて聴きながら、わたくし自ら、制作中のエピソードや、今の想いを語ります。
アルバム収録曲は全12曲!・・・と、いうことで、駆け足でいきますね。
オープニングチューンの「DARK MOON」に続く2曲目はこちら。
CINNAMON / 松任谷 由実
アルバムの2曲目は「CINNAMON」。
今回のアルバムはね、初めて聴くのに懐かしい。新しいけれど、ノスタルジーがある、ということをあらわそうとして、曲の段階でケルティックとかアイリッシュなものにしたんです。そして過去の自分と出会う。それを、フラットマンドリンの音が、懐かしさを出していると思います。
よく「昔の自分に会ったら言ってあげたい」とかフレーズがあるじゃないですか。今の自分は過去の自分のことを知っているけれど、その過去の自分は未来を知らないんですよね。だから私は、過去の自分に会ったら・・・荒井由実に会ったとしたら、「今の私、あなたからどう見える?」ということを聞きたい。そういう想いを込めてつくりました。
最新アルバム『Wormhole / Yumi AraI』セルフライナートーク、「CINNAMON」に続いて、アルバムの3曲目は、こちら。
星の物語 / 松任谷 由実
アルバムの3曲目は「星の物語」。秋冬恒例、ハウス・北海道シチューのCMソングで、もう、すでに耳にされている方も多いと思いますが、この番組で初めてオンエアいたしました。
天体望遠鏡をのぞくような・・・それも、古い天体望遠鏡。傷だらけの。「今輝いている星はもう消滅しているかもしれない」って、恋人たちが話したりする。でも、光は届いている・・・みたいに思い出す、恋のお話です。
ポップなラブソングにのせることで、より遠い、輝いている世界がそこにある、と切なくなってもらえるんじゃないかなと思います。
岩礁のきらめき / 松任谷 由実
続いてはアルバムの4曲目、「岩礁のきらめき」。
岩礁がきらめいているのは、本当に綺麗なんですよ。いつのきらめきだったかわからないけれど、突然頭のなかによみがえってくるような・・・そして、どう繋がるのかわからないけれど、いろいろな心が断片のようによみがえってくる。そんな歌にしたかったんです。
・・・と、いろいろ解説していますが、すでにみなさんに届いている段階で、そこには聴く人それぞれの解釈があって、それは無限です。
この曲を聴いて、誰と過ごした海を思い出すのかは、あなた次第です!
天までとどけ / 松任谷 由実
アルバムの5曲目は「天までとどけ」です。
できたときは「ANNIVASARY」を超えた「神曲」!そう自分で思ったくらいですが・・・70年代にあったようなスタンダードナンバーをつくりたかったんですね。
“バカラックがカーペンターズに書いた曲”、みたいなものを目指してつくったので、私がとても影響を受けているものがエキスとしてほとばしったのかもしれません。
これは、フジテレビ系のドラマ「小さい頃は、神様がいて」の主題歌としてつくったんですけれど、「もう離婚する」という宣言を奥さんがしていて、それをすっかり旦那さんの方は忘れている。そしてあるとき、「あの約束は生きているのよ」と。娘が二十歳になったら離婚する、それを励みに頑張ってきた・・・わかるような気がするな。だって、日常って本当にうんざりするほど退屈ですものね。そのなかでみんな何か小さな喜びを見つけながら粛々と歩んできている、それを振り返ったときの歌にしたかったんです。
『Wormhole / Yumi AraI』セルフライナートーク。
「天までとどけ」に続いては、全12曲のアルバムの折り返し・・・アナログレコードで言えばA面最後になるのがこの曲です。
烏揚羽 / 松任谷 由実
お送りしているのは、日本が世界に誇るホラー漫画家・伊藤潤二さんのテレビアニメ、『クリムゾン』のオープニング主題歌として書き下ろした「烏揚羽」です。
これは曲をつくっているときにもうゾーンに入っていて、うわぁ、何だか久しぶりに魔法のような転調ができたぞと、悦に入っていたんですけれど、プロデューサーから「サビがないぞ」と言われて。あ、本当だ、どこかで出口を見つけなきゃって、そうしたら結果、和の世界みたいに。
それは伊藤潤二さんのホラー漫画にもいえるんですけれど、独特の美しさ、哀しみがある日本のホラー・・・そのトーンが出たんじゃないかと思います。
今日は、先週リリースされたばかりのアルバム『Wormhole / Yumi AraI』セルフライナートークの前編・・・ということで、全12曲のうち、前半の6曲を聴きながら、制作中のエピソードや、曲にこめた想いなどをお話してきました。
アルバムが完成してからは、プロモーション活動とツアーのリハーサルを並行しながら、アクティブな日々を送ってきたわけですけれど、いざ、リリースされて、こうして改めて、収録曲を聴いてみて感じたのは・・・あぁ、頑張ったなって。思い立って良かった、と思います。
とはいえ、もう、アルバムはリリースされたらどう聴くか、というのはみなさんの自由。
ひとつだけお伝えしたいのは、アルバム1枚を通して聴いてもらえたらな・・・ということです。
ぜひ、まるっと受け止めて、「Wormhole」を行きつ戻りつしながら、楽しんでいただけたらうれしいです。
さらに、このアルバムを3D、いや、4D、5Dにする意気込みでスタートしたコンサートツアー、『FORUM8 presents 松任谷由実 THE WORMHOLE TOUR 2025-26』。
無事、東京 府中の森芸術劇場 どりーむホールでの初日と2日目の公演を終えて、22日の土曜日は茨城 水戸市民会館 グロービスホール、そして来週は大阪へと向かいます!
今後の公演日程や、チケットの一般発売に関する情報は、松任谷由実公式ホームページでご確認ください。
XやInstagramなどでも、随時、最新情報をアップしていきます。
TikTokもスタートしましたので、そちらもあわせて、チェックしてみてくださいね。