色々な角度から私のラブソングを選んで、その創作エピソードとともに、ラブソング論みたいなことを、語っていきます。今日のコードは「ユーミン、“ラブソング”を語る」です。
■今週のChordは“ユーミン、“ラブソング”を語る”
DESTINY / 松任谷 由実
お送りしているのは、1979年にリリースした8枚目のオリジナルアルバム、『悲しいほどお天気』に収録された1曲、「DESTINY」です。
この曲は、雑誌『BRUTUS』が昨年11月に発売した、「特集 ラブソング」号で、日本のラブソング・ベスト100の1位に選んでいただいた曲。
本当に光栄なことで、その知らせをうけた私のインタビューも掲載されています。
どのフレーズが審査員になった音楽関係者のみなさんに刺さったかというと、「どうしてなの 今日にかぎって 安いサンダルをはいてた」のところ。自分で言うのもなんですけど、有名なフレーズです。
別れたあと、また会う日が生き甲斐の「DESTINY」だと思っていたのに、偶然会えた日、安いサンダルをはいていた自分。
そこで、この人とは結ばれない「DESTINY」だと知る・・・というストーリーです。
この「安いサンダル」という歌詞は、自分で言うのもなんですけど、確かに、日本のラブソング史に残るキラーワードになったのかも。
でも、キラーワードだからといって、違う曲に移植はできないですよね・・・それがキラーワードなのかもしれない。
自分でも何にも考えずに作ったんですけれど、なのに、みんなが「そういうことってある!」とその場面を想像してそれぞれの「画(え)」にしてもらえたことが、ありがたいですね。
それこそが、作り手の喜びだと思います!1位に選んでくださって、本当にありがとう!
そんなわけで、「ユーミン、“ラブソング”を語る」というコードでお届けする『Yuming Chord』。
今日は、色々な角度から私のラブソングを選んで、その創作エピソードとともに、ラブソング論みたいなことを語っていきます。
さきほどのラブソング特集の『BRUTUS』でもお話したんですけれど、ラブソングとは何か?と問われたら・・・「その刹那、その一瞬を切り取ること」に尽きる気がするんですね。
だから、ラブソングで大事なのは、結末じゃなくてその「瞬間」。
いつも人に言うんですけれど、別れ話とかを聞くときに・・・しょっちゅう聞くわけではないですが、え、どういう気持ちだったの?というより、どこで?何を飲んでいたの?とか、どういう服を着ていたの?とか、そういうアイテムの方があとで気持ちが乗ってくるんですよね。なので、作るときは・・・ブランド名とかそういうことじゃないですよ。アイテムをポンとアクセントのように入れることも多いです。
そして、イメージするのは「色」なんですけれど、このあとお送りする「夕闇をひとり」というラブソングは・・・まだそんな言葉がなかったけれど、「ストーカー」っぽいかな、この女性は。
1981年にシングルとして発売された、同日にリリースした12枚目のアルバム『昨晩お会いしましょう』にも収録されています。
夕闇をひとり / 松任谷 由実
「なぐさめのカセットと 淡い口紅ひとつもって」とか「さくらんぼの包みとできるだけ笑顔と 最後の連絡先もって」と出てくるんですけれど、夕闇の色がそういうダークチェリーな感じだと思っています。
この頃の私の歌唱もちょっと怖いというか(笑)。ヒタヒタと自分の想いをとげていくような情念みたいなものがありますね、クールななかに。だから、ラブソングって曲だけ取り出してその組み合わせも取り出して、というより、その時代の空気感もまとったパフォーマンスもおおいに歌を彩っているな、と思いました。
続いては、最新アルバム『Wormhole / Yumi AraI』から、「岩礁のきらめき」。
岩礁のきらめき / 松任谷 由実
最新アルバム『Wormhole / Yumi AraI』は、荒井由実時代から松任谷由実時代にかけての私の声をAIが学習してできあがった、第三の松任谷由実の声と、今の私が共演する・・・という挑戦を試みたアルバムです。
荒井由実の声や、「ラブソングの女王」と言われていた頃の声を聴いたことが、曲づくりにも改めて影響したと思っています。
例えば、この「岩礁のきらめき」は、90年代くらいの感じ。本当に無意識に「リフレインが叫んでる」のテイストが出てたなと思うんですね。
この曲は私の声も、歌詞のなかの主人公も、さまざまな時代がレイヤーになっていて、まさにWormholeを行き来しています。
恋愛至上主義は遠い過去。そんな令和の時代でも、人は、誰かと居たいし会いたい。
その気持ち、切なさが、今のラブソングに受け継がれている気がします。
最後の1曲は、2011年リリースのアルバム『Road Show』から、「コインの裏側」です。
この曲は、ほとんど(番組で)かけたことがないし、ステージでも「Road Showツアー」の時にやった、だけ。でも、なにか自分のなかでトーンがすごく残っていて、今日、これまでかけた曲もそうなんですけれど、失って分かるその恋の実体みたいな・・・それがすごくよく出ている曲だと思います。
コインの表と裏のようにすれ違う2人。まだ愛しているのに離れる理由がわからないまま・・・というラブソングです。
では、松任谷由実で「コインの裏側」。
コインの裏側 / 松任谷 由実
この『Road Show』というアルバムが、LAでレコーディングだったと思うんですけれど、その前くらいまで、すっとミネアポリスだったんですね。この歌はミネアポリスの風景を思い出して作っているような・・・どんよりとした北部の街の冬景色、その重さ。ヨーロッパのグルーミーとは違う感じ、そういう匂いが今、改めて聴いてしてきました。
心情をそういう天気とかトーンに込めるのもラブソングの妙味かなと思っています。
BGM. 少しだけ片想い / 荒井 由実
今日は「ユーミン、“ラブソング”を語る」というコードで、さまざまな角度から選んだ私の曲を、解説つきでお届けしてきました。
今、BGMで流れているのは、前にかけた「コインの裏側」とはうってかわって、荒井由実時代の「少しだけ片想い」。
1975年にリリースした『COBALT HOUR』に収録されている「少しだけ片想い」は、シングルカットしたわけではないんですけれど、恋の本質というか、自分の方が愛しているって、そういう本質の本質をポップに仕上げていると思います。
キャラメル・ママの演奏と山下達郎さん、吉田美奈子さんのコーラスで、スタジオセッションで録りました。
その当時の初期衝動が呼び覚まされた最新アルバム『Wormhole / Yumi AraI』。
今回は「岩礁のきらめき」という曲を選んでお送りしましたが、この中に収録されている「CINNAMON」という曲は、まさに、70年代後期の荒井由実との出会いがきっかけでできた曲です。
・・・こうした化学反応を楽しみつつ、これからも創作活動を続けていきたいと思います!
そして、来週2月9日からスタートする『SURF&SNOW in NAEBA Vol.46』。
ここでもきっと、手ごたえを感じられるはず・・・と、いうことで自分自身、楽しみにしているんです。
チケットはすでに販売を終了していますが、今年も、ネットでコンサート映像を配信します!
生配信だけでなく、フルハイビジョン・ハイレゾでお届けするオンデマンド配信など、ご自宅でお楽しみいただける、Net Resort Y-topia 2026。
チケットの購入方法や、そのほかの最新情報は、松任谷由実公式ホームページ、XやInstagram、TikTokなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。