yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ 第九十六話 自分らしく生きる -【軽井沢篇】小説家 有島武郎-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った 命の闘いを知る事で、週末のひとときを プレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM OH!…SAT 18:30-19:00
@FM(FM AICHI)…SAT 18:30-19:00 / FM長野…SAT 18:30-19:00
FM FUKUOKA…SAT 20:00-20:30 /FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第九十六話自分らしく生きる

軽井沢タリアセン。
塩沢湖の水鳥たちが、気持ちよさそうに泳いでいます。
湖面で踊る陽の光。
木々が枝葉を揺らし、風の行方を教えてくれます。
軽井沢に、夏がやってきました。
数々の作家や詩人、著名人が、避暑地としてひと夏を過ごした、高原の別荘地。
タリアセンのほど近くにある、軽井沢高原文庫は、この地の文学世界を具現化する文学館です。
敷地内には、旧軽井沢から移築した堀辰雄の山荘があり、そしてもうひとつ、ある文豪が最期を遂げた浄月庵という名の別荘が移築されています。
その作家の名は、有島武郎(ありしま・たけお)。
今から94年前の、1923年の夏。
有島は、婦人公論の記者で人妻だった波多野秋子と、浄月庵で心中をはかったのです。
このニュースは、当時の新聞をにぎわすこととなりました。
移築された浄月庵は、その内部も見学することができます。
有島が父から譲り受けた別荘は、木造二階建ての和洋折衷の家。
外壁は、杉の皮でおおわれ、テラスには屋根がつき、窓ガラスは格子状の枠で四角に区切られ、落ち着いた佇まいを保っています。
有島は、ここで夏の間を過ごし、名作『生まれ出づる悩み』を完成させました。
常に世間と闘い、生きるということに誠実だった作家、有島武郎。
浄月庵で散った彼が、45年の生涯で決して手放さなかった、明日へのyes!とは?

小説家、有島武郎は、1878年3月4日、東京・小石川に生まれた。
父は鹿児島、薩摩藩の出身。直情径行。
大蔵官僚だったが上司とぶつかり、後に実業界で成功をおさめる。
母は、岩手・盛岡の南部藩出身。理知的な性格だった。
有島は、主に母の性格を多く自分に見たが、ときおり父の激しい性質を垣間見て、おそれることもあった。
父は幼い有島に厳しかった。
どんなことがあっても、自分の前で膝を崩すことを許さなかった。
特に芸術を嫌った。
有島が本に夢中になると、
「文学や絵画に興じるのは、断固として許さん!おまえは、有島家の長男だ!長男たるもの、なすべきことをなせ!」
激高する父を、冷静に達観している幼い有島がいた。
「どうしてこんなに威圧的で、暴君的なんだろう、このひとは」
常にもうひとりの自分が語りかける。
そんな彼の思いをすくってくれたのは、近くに住む母方の祖母だった。
「武郎、おまえは、おまえの好きなことをただ一心にやりなさい」。
祖母の優しい眼差しを、終生、忘れることはなかった。

有島が5歳のとき、父の仕事の関係で一家は横浜に居を移した。
父は有島に、英語を学ばせた。
「これからの実業に英語は不可欠だ。しっかり学習しなさい」。
横浜在住の宣教師セオドア・ギューリックの家に通い、横浜英和学校に入学。
しかし家では、武士道や儒教を父から叩きこまれた。
やがて学習院予備科に編入、寄宿舎生活をおくる。
成績は優秀。眉目秀麗。
態度も立派で気品もある。
有島は、皇太子、のちの大正天皇のご学友に選ばれた。
日本国家の模範として、学内でも表彰される。
でも、彼は思っていた。
「違う…ほんとうの自分は、違う。こんな人間じゃない」。
祖母の言葉がよみがえる。
「あなたは、あなたらしく生きなさい」。

有島武郎は、学習院中等科のとき、体を壊した。
しばしば、学校を休む。
そんなときは、本を読んだ。絵を画いた。
幸せだった。ひとに望まれた自分を演じることに、疲れていた。
通常であれば、学習院高等科に進むべきところだったが、札幌農学校への進学を決めた。
これには周囲が驚く。
でも、有島の決意は固かった。
札幌農学校の教授には、母と同じ南部藩出身で懇意にしている、新渡戸稲造がいた。
新渡戸の家に寄宿することで父も同意した。
初めて新渡戸に会った時、こう訊かれた。
「有島君、君が好きな学科は何かね?」
有島は答えた。
「はい。文學と歴史であります」。
これには、新渡戸も笑った。
「おいおい、君、それでは我が校は見当違いだよ」。
それでも、有島の心には、北海道の大地に寄せる、自由への渇望があった。
「僕は、僕でありたい。そのために、この場所にいることが重要なんだ」。
キリスト教に入信。農業にも意欲を持ったが、新渡戸が講じる英文学への憧れが勝った。
やがて、有島はアメリカへの留学を望んだ。
渡米している期間、彼はさらなる呪縛にとらわれてしまう自分を感じた。
いつもいつも、ありたい自分ではなく、あるべき自分を優先してしまう。
周りが求めるものは、虚像にしかすぎない。
そんなとき彼は図書館でイプセンやドストエフスキーを読んで、自分という迷路を彷徨った。
自己を開放する扉を求めて。

小説家、有島武郎は、アメリカから帰国すると、自らの生きる道を悩んだ。
農業に生きるか、教育者になるか、それとも文学者としての覚悟を決めるか。
東北帝国大学農科大学の英語講師の職を得つつ、武者小路実篤、志賀直哉とともに『白樺派』に参加。
小説を書き始める。
結局、父が亡くなるまで、作家生活一本で生きることはできなかった。
「僕はね、とっても臆病な人間なんです。結局、親から褒められたい、まわりのひとから尊敬されたいという虚栄心が勝ってしまうんです」。
38歳で妻を亡くし、父がいなくなって初めて、本格的な作家になった。
『カインの末裔』『生まれ出づる悩み』『迷路』、そして日本最初の本格小説と称賛された『或る女』を執筆。
夏は軽井沢の別荘、浄月庵にこもった。
軽井沢は、有島に青春時代を過ごした北海道を連想させた。
彼は『信濃日記』にこう記している。
「8月12日 小休みもなく、雨は降り続いている。こう雨が続くとここの気温はひどく低下する。それは札幌を私に思い出させる。気温ばかりではない。軽井沢は多くの点において、札幌と類似のものを持っているようだ」。
かつて自分に初めて自由を教えてくれた大地と似ている場所。
そこで彼は自らを開放して、自分らしくありたいと願った。
その結末が悲劇的であったにしても、彼は、誰かが望む自分ではなく、自分が生きたい自分に行きついた。
彼は言うかもしれない。
「たった一度の人生。死ぬときに、ああ、自分らしい人生だったと思って、逝きたいじゃないか」。

【ON AIR LIST】
黄昏のビギン / ちあきなおみ
People Help The People / Birdy
Ben / Michael Jackson
深呼吸 / ハナレグミ

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとかぼちゃのそぼろ煮

学習院高等科には行かず、札幌農学校への進学を決めたという、小説家 有島武郎のエピソードにちなみ、北海道札幌市で多く生産されている、かぼちゃを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとかぼちゃのそぼろ煮
カロリー
152kcal (2人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • かぼちゃ
  • 120g
  • しょうが
  • 3g
  • 鶏ひき肉
  • 80g
  • 【A】しょうゆ
  • 大さじ1・1/2
  • 【A】みりん
  • 大さじ1
  • 【A】酒
  • 大さじ2
  • 【A】水
  • 2/3カップ
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。
  • 2.
  • しょうがはみじんに切る。かぼちゃは食べやすく切る。
  • 3.
  • 鍋に鶏ひき肉としょうがを入れ、【A】で溶きのばす。
  • 4.
  • (3)を火にかけ、煮立ってきたら霜降りひらたけとかぼちゃを入れ、火が通るまで煮る。(水溶き片栗粉でとろみをつけてもよい。)
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

OA 100回 記念特別企画 『ジョンとヨーコ、それぞれのyes!』
西田尚美さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。YESとNOの狭間で。 今週、あなたは、自分に言いましたか?YES!ささやかに、小文字で、yes。
明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語をお贈りしている「yes!~明日への便り~」。
7月22日と7月29日の2週にわたり、番組100話記念スペシャルとして、軽井沢にゆかりのある、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの物語をお届けします。
二人のインタビューや数多くの著作物をもとにフィクションでお送りするドラマ『ジョンとヨーコ、それぞれのyes!』。

オノ・ヨーコ役は女優の西田尚美さん朗読は、長塚圭史さんでお送りします。

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